【社説】社会保障改革 専門家に代弁させた政府

2013.08.05

【社説】社会保障改革 専門家に代弁させた政府
2013.08.03西日本新聞 



 医療・介護、年金、雇用、子育てなどの専門家を集めた政府の社会保障制度改革国民会議が最終報告書案を示した。

 覚えておられるだろうか、1年前のことを。消費税増税を含めた社会保障と税の一体改革関連8法が国会で成立した。

 関連8法の一つが民主と自民、公明3党の議員立法で提出した社会保障制度改革推進法だった。
この法律で政府に対し、国民会議を設置することを求めた。

 会議では公的年金など社会保障制度をどう改革していくかを集中的に討議し、早急に結論を得ることになっていた。

 なぜ、改革が必要か。一体改革で消費税率を5%から2014年4月に8%に、15年10月から10%に引き上げることになった。
国民に負担を強いる。
その代わりに社会保障制度をより良いものにすると、当時の野田佳彦政権は約束した。

 制度を高齢者中心から若者や子育て世代を含めた「全世代対応型」に転換、特に低所得者対策に重点を置くとした。

 そして、14年春の消費税率引き上げに合わせて必要な改革を行うとした。
このため、改革推進法は施行日(12年8月22日)から1年以内に、国民会議の結論を得た上で政府には必要な法制上の措置を講じるように求めた。
期限は今月21日だから、時間がないのではと心配になる。

 ただ、改革推進法を読むと、国民会議で結論を得ると書いてあるのは、公的年金制度と高齢者医療制度についてだ。

 最終報告書案には民主党が掲げた新年金制度創設や後期高齢者医療制度の廃止は盛り込まれなかった。
現行制度が基本的に維持されるわけだから、政府がすぐに新たな措置を取る必要はなさそうだ。

 これは民主党が自公両党に政権の座を明け渡した段階で分かっていたことだ。

 では政権交代後の国民会議の役割は、報告書の意義は何だろう。政府や与党の代弁者の役割を担った。
政府や与党であれば国民に対して言いにくいこと、厳しい現実を専門家が代わって指摘した。

 その結論は何か。社会保障費は増え続ける。国民の負担の増大は不可避だ。
打ち出の小づちも魔法のつえもない-。

 では、どう負担を分かち合うか。持てる人、豊かな人により多くを求める。

 例えば、高所得者の年金支給額を制限したり、課税したりできないか。
介護保険の利用者負担の割合を高所得者の場合は引き上げてはどうか-などと考える。

 現役世代が負担し、高齢者が給付を受ける世代間の分担から、年齢ではなく所得・資産など「負担能力別」で整理し直す。
だから、収入が高い大企業などの健康保険組合がもっと負担を、ともなる。

 市町村が運営する国民健康保険を都道府県単位に集約する。地域医療圏や病院再編も積極的に進める-。
社会保障制度の安定化や効率化を図る提案もある。

 全体としてみれば良いことでも、自分の身に降りかかってくるとなれば別だ。
報告書は抵抗の度合いを測るための政府の観測気球とみるのは考え過ぎか。



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民主、社会保障改革の3党協議離脱へ 自公と主張平行線
朝日新聞 8・5
 

民主党は社会保障改革に関する自民、公明、民主3党による実務者協議から離脱する方針を固めた。
民主党は最低保障年金創設や後期高齢者医療制度廃止などを求めてきたが、社会保障の改革案に反映される見通しが立たないと判断。

5日にも離脱を伝える。改革を進めていく段階では政権の主導が強まることになる。
 
自公民3党は昨年6月に消費増税法案で修正合意した際、主要分野の社会保障改革を先送りした。

3党の実務者協議はその議論の場として設置。
民間の有識者による政府の社会保障国民会議と並行して協議し、意見を国民会議の報告書に反映させる想定だった。
 
3党実務者協議は昨年11月から協議を開始。
民主党が年金制度の抜本改革や後期高齢者医療制度廃止などマニフェストの実現を主張したのに対し、自公両党は「現行制度が基本」として平行線が続いた。

参院選を前に今年6月に中断。
自民党側は今月7日の再開を呼びかけているが、民主党は応じない構えだ。
民主党幹部は「自民党は聞く耳を持たず、事実上、決裂していた」と話した。
 
社会保障国民会議は5日に医療や介護分野などの改革の具体案を報告書にまとめる予定で、政権はそれに基づいて改革を進める方針。
民主党側にとっては、政権が打ち出す改革案に「是々非々」の姿勢で臨むためにも、報告書がまとまる前に離脱をした方が得策という思いもある。
 
一方、民主党は税に関する3党の実務者協議には引き続き参加する意向。
消費税率を引き上げる3党合意は維持される。
与党側は負担増を伴う社会保障改革にも民主党を巻き込みたい考えで、自民党幹部は「消費税率を10%に引き上げるまで3党で作ってきた。
そこまでは連帯責任がある」と批判している。