〈連載 検査相談室の挑戦 vol.3:碧南市民病院〉公立病院改革を機に「検査相談」開始

2013.08.17

〈連載 検査相談室の挑戦 vol.3:碧南市民病院〉公立病院改革を機に「検査相談」開始
2013.08.11 Medical & Test Journal 


 公立病院改革の波が碧南市民病院(愛知県碧南市)に迫っていた。「患者に選ばれる病院」を目指して、中央検査室にも改革が求められ、アクションプランとして提案したのが「検査相談室」の設置だった。

2010年5月に採血室内に相談室を設置し、患者の要望に応じて検体検査の項目説明に取り組んでいる。耳鼻科との連携で「睡眠時無呼吸症候群」検査結果説明のサポートも行っている。

 「検査相談室」を立ち上げる以前から、採血の際に患者からちょっとした検査説明を求められるようなことはあった。
「医師に検査について聞いたが、答えてもらえなかった」「説明してもらえなかった」という患者に、検査技師が略語で書かれた検査項目の内容やどういった検査なのかということを説明してきた。

 特に生理検査は患者に接する時間が長く、説明を求められる場面も多かったという。
医師は1日に40~50人の患者を診ており、丁寧な説明を心がけてもできない場合もある。
どこの医療機関でも同様の事例はあるはずと指摘する同院中央検査室長の大坪盛夫氏は「患者さんが検査に来た時に、検査面でフォローをしている」と話す。

 大坪氏自身、着任時から検査相談室の必要性を認識していた。
患者に説明できる技師教育の一環として、特に生理検査担当には日本糖尿病療養指導士(CDEJ)などの取得を勧めてきた。
CDEJは医師の指示の下で糖尿病患者の生活指導を行うもので、認定取得は生活指導のエキスパートの証しと言える。「生理検査担当は全員が取得したので、“検査相談”にも入りやすかった」と振り返る。

 全国の自治体病院の経営状況悪化を受けて、総務省は自治体病院へ病院改革プランを策定することを義務付けた。碧南市民病院も08年10月に改革プランを策定した。10年度の改定時には中央検査室もアクションプランを提案することが求められた。

 「これを機に」と大坪氏は検査相談室の設置を提案した。提案書の提出や根回しに腐心しながらも、「検査相談室」は院内での協議を経て10年5月、設置にこぎ着いた。

 検体検査に関する相談は採血室内のスペースを使う。担当は特に決めずに、その時に患者に接していた技師が対応する。検査項目を簡単に説明した印刷物を使用したり、パソコンのモニター上で過去の検査データを見ながら説明を行っている。

 初年度(10年度)に行った89件の相談のうち、17件が検体検査などの検査項目に関するものだった。
11年度、12年度と件数は減少したが、大坪氏は「今は下火だが、ニーズはあると感じている」と話した。

●耳鼻科とSAS検査の結果説明も

 検査相談は検体検査に関するものだけではない。中央検査室では、耳鼻科の検査についても説明を行っている。
同院の耳鼻科は「睡眠時無呼吸症候群(Sleep Apnea Syndrome:SAS)」診療に積極的に取り組んでいる。SAS診療で行われる簡易型SAS検査の結果や終夜脳波の検査結果の説明に加え、CPAP療法やCPAPの使用法などの説明を生理検査担当の技師が行っている。

 担当の山田裕香主任は「SASであるかないかという診断結果は医師が患者に伝え、検査結果の説明についてはこちら(中央検査室の担当者)で対応する」と話した。実際に検査結果の分析を行う検査技師が担当することで、より詳細に説明できる点がメリットだ。

 現在、中央検査室が行っている検査相談の多くが耳鼻科の検査に関するものだ。12年度は簡易型SAS検査結果説明を30件、終夜脳波結果説明を17件、CPAPの使用法説明を22件、それぞれ実施した。

 たくさんの検査相談をこなす中で「間違った応答はできない」と実感した山田氏は、「知識は大切だが、分からないことは分からないと伝えることが重要」と話す。

 相談時に即答できなくても、調べた上で次の検査時に質問への答えを伝えられるよう努めている。こうすることで患者側は「覚えていてくれたんだ」と感じ、信頼関係の構築にもつながるようだ。

●新たなステップ 「患者相談窓口」への統合

 同院では患者サービスのワンストップ化を目指す動きがある。「患者相談窓口」に、栄養や薬剤などの各種相談を一元化する方向にあり「検査相談」も集約される流れだ。

 「患者相談窓口」では、定年退職したベテラン放射線技師の再雇用を行っており、大坪氏は「経験や技術を持った人材の受け皿となる」と前向きだ。
検査相談には幅広い知識と患者の話を引き出すコミュニケーション能力が必要となる。定年を迎える臨床検査技師の多くにはこれらの必要な知識やスキルが備わっているとして、「検査相談」がリタイアした検査技師の人材活用の受け皿となる可能性を指摘した。