中国で病院経営を拡大する台湾企業

2013.07.22

中国で病院経営を拡大する台湾企業
2013.07.19 台湾・中国 中国北アジア課
日本貿易振興
 


 台湾行政院が2006年に発表した「2015年経済発展ビジョン第1段階3ヵ年計画」の具体策として、2007年に「医療サービス国際化旗艦計画」が打ち出され、医療サービスの国際化が本格的にスタートした。

2010年に中国・台湾間の自由貿易協定(FTA)に相当する「海峡両岸経済協力枠組み協定」(ECFA)が締結され、中国は台湾に対し、医療を含むサービス産業11項目への参入規制を緩和した。

医療サービスの国際化を推進する台湾企業にとって、言葉の障壁が小さい中国は最も魅力的な市場の1つで、台湾企業による中国での医療サービス展開はますます拡大する可能性が高い。

<主治医責任制、事前予約制などを実施>
 台湾企業が海外で医療サービス業を展開する事例としては、健康診断などを行う美兆集団がマレーシアで拠点を設立したケースなどもあるが、進出先として圧倒的に多いのが中国だ。

中国では、台湾企業による医療機関設立は2002年に始まる。

初の外資系合弁病院として、台湾大手食品メーカーの旺旺グループが湖南省長沙市に湖南旺旺病院を開業したのを皮切りに、台湾プラスチックグループが福建省アモイ市にアモイ長庚病院、電気製品メーカーのBenQを傘下に持つ明基友達グループが南京市に南京明基病院、蘇州市に蘇州明基病院を設立するなど、2000年代は合弁形態による私立病院の開業が相次いだ。
 

そもそも台湾メーカーが中国で病院経営を始めたのは、現地に進出した台湾企業の台湾人従業員およびその家族が安心して医療サービスを受けられるような環境をつくることが目的だった。

患者の全治療過程を主治医が責任をもって診察する「主治医責任制」、診察時間や医師をネットで予約できる「事前予約システム」、電子カルテの導入による待ち時間の短縮など、これまで中国の公立病院にはなかったサービスを提供している。

これらの私立病院の中には中国の健康保険の適用を申請し、中国人も対象としているところがある。
現在では台湾人のほか、地元の富裕層や中国に住む外国人などの利用も増えている。


<台湾単独資本病院が複合的医療サービスを提供>
 ECFAの締結により台湾の医療サービス業の参入規制が緩和され、台湾企業が中国で単独資本の病院を設立することが認められた。

台湾で多数の医療施設を運営する聯新国際医療集団(以下、聯新集団)は2012年6月に、単独資本として初めて上海に「上海禾新医院(以下、禾新)」を開業した。

聯新集団によると、禾新には台湾をはじめ、韓国、米国などの医師が在籍しており、数ヵ国語で診察することが可能となっている。

健康保険の適用申請は、地場病院との差別化を図るためあえてしていないという。
診察料は高額だが、高度な医療サービスを提供しているため、上海近郊に勤務する外資系企業の駐在員やその家族、現地の富裕層などに大きな需要がある。
 

中国における聯新集団の医療サービスは、通常の医療業務にとどまらない。

台湾で複数の医療施設を経営し、独自の病院管理システムを構築していることを生かし、中国の地場病院向けに同システムの導入をはじめとするコンサルティング業務を積極的に行っている。

また、中国人の医師や看護師を台湾で研修させる人材育成プログラムも実施しており、中国の公立病院からの研修実績も多い。複合的な医療サービスを展開することで、聯新集団の中国事業は順調に拡大している。
 

聯新集団の関係者は「将来的には中国で老人ホーム、在宅ケアなどのサービス展開も検討しており、独資病院になったことで提供できるサービスの幅が広がり、ビジネスの自由度が増した」と述べている。





<台湾企業は言葉の面で他国企業よりも有利>
 
中国で暮らす台湾人駐在員とその家族は200万人余りといわれている。ECFAの締結によって開かれた中国の医療市場で、言葉の障壁に悩まされずに事業展開できる台湾企業は、他国のライバル企業よりも有利な条件がそろっているといえる。

中国衛生部が発表した「2012年中国衛生統計提要」によると、2011年の中国の総病院数は2万1,979施設(前年比5.1%増)で、うち公立病院が1万3,539施設(0.2%減)、私立病院が8,440施設(19.4%増)だった。
私立病院は大きく増加しており、今後病院間の競争が激しくなることが予想される。台湾当局の関係者は

「公私立病院ともにより効率的で高水準な医療サービスを取り入れ、差別化を図ることが求められる中、台湾の医療サービスに対する地場病院の関心は高い。
台湾企業にとって中国市場は大きなビジネスチャンスを有している」と強調する。