広角レンズ 水戸赤十字の予約休止で 県央県北、お産難民懸念 リスク患者どう対応

2013.07.17

広角レンズ 水戸赤十字の予約休止で 県央県北、お産難民懸念 リスク患者どう対応
2013.07.16茨城新聞  


「お産難民」が県央・県北地区で発生する恐れが出てきた。切迫早産などリスクを伴う出産も受け入れられる水戸赤十字病院(水戸市)が8日、医師確保の見通しが立たないとして、来年3月以降の出産予約受け付けを休止。県北では既にリスクを伴う出産に対応できる医療機関がないため、県南地区に搬送しなければ対応できない状態に陥るとして、関係者の懸念が強まっている。(報道部・根本樹郎)

■立たぬ見通し

水戸赤十字病院の産科は現在、8人の医師で診療を行っている。2012年度は490件の出産を受け入れた。3分の1はリスクを伴う出産で、この場合、治療には4人以上の医師で当たる。

派遣元の昭和大(東京)から、新病院建設に伴う医師引き揚げを告げられたのは5月。何人の医師が来年度も残るのか、現時点では見通しが立っておらず、来年3月以降の出産予約受け付けを休止した。水戸赤十字病院は「もう少し積極的に動くべきだったかもしれない」と唇をかむ。

■続く満床状態

本県の周産期医療体制は県内を3地区に分け、ハイリスクの患者に対応できる総合周産期母子医療センターをそれぞれ1拠点ずつ指定。その下に地域周産期母子医療センターと周産期救急医療協力病院が配置されている。

県北・県央地区はいずれも水戸市内の水戸済生会総合病院と県立こども病院が総合センターの役割を担い、2施設が協力病院となっている。

これに加え、日立製作所日立総合病院(日立市)が県北のセンターとしての役割を果たしてきたが、派遣元の東京大による医師の引き揚げで09年4月から産科の休止を余儀なくされた。10年4月に再開したものの、リスクを伴う出産を受け入れるセンター機能は休止状態のまま。患者は主に県央地区で受け入れられてきた。

ただ、受け入れる側も対応は容易ではない。水戸済生会総合病院は10年末ごろから満床状態が続き、ホームページに「病棟が大変混みあい、ご不便をおかけしています」と掲載。日立総合病院に続き、水戸赤十字病院の休止が長引けば、出産医療への影響は計り知れない。

■先行きが不安

県医師会副会長で石渡産婦人科病院(水戸市)の石渡勇院長は、「医師会として関与し患者の分配が必要になる。土浦に搬送することが多くなるのではないか」と見通し、「開業医としても不安だ」と先行きを懸念する。

県も「産みたくても産めなくなる。何とか手立てを考えないといけない」とお産難民の発生を危惧。水戸赤十字病院関係者は「県央地区に影響を与えてしまうので必死で態勢を整えたい」と、9月までには医師確保の目途をつけたい考えだ。

とはいえ、全国的に産科医不足が叫ばれる中、従来通りの医療態勢を組めるかどうかは未知数。石渡院長は、大学による相次ぐ医師引き揚げに対し、「東京で医師が余る一方、地域医療が崩壊することに、大学も責任を感じてほしい」と指摘している。