[争点・13参院選](7)医師偏在 地方病院 細る診療機能(連載)=北海道

2013.07.04

[争点・13参院選](7)医師偏在 地方病院 細る診療機能(連載)=北海道
2013.07.02読売新聞  


 ◆解消を可能にする具体策 持続可能な医療の将来像

 紋別市の広域紋別病院は2年後の改築を控え、外壁塗装の剥がれが目立つ。同市と周辺4町村の中核病院となっているが、医師不足で診療機能は低下している。

 現在の臨床研修制度が始まった2004年度に23人いた常勤医は、4年間で10人にまで減った。心筋梗塞に対処できる循環器内科の常勤医が不在となるなど、現状では17診療科のうち、9診療科で非常勤の応援医師に頼っている。

 脳外科の医師も不足している。急患が出るとこれまでは約50キロ離れた遠軽厚生病院(遠軽町)に搬送していたが、遠軽厚生病院でも10年から常勤の脳外科医が不在となった。

 両病院のある遠紋医療圏で脳卒中の急患はほぼ3日に1人の割合で出ている。北見市の病院に搬送されているが、同地域の北端・雄武町から北見までは135キロもあり、救急車で約2時間かかる。

 紋別病院では及川郁雄院長(59)らが医師の招請に力を入れた結果、現在、常勤医は13人に回復した。しかし、目標数の半分に過ぎない。磁気共鳴画像装置(MRI)などの設備を改築時に更新し、診療環境を改善させ、さらなる医師招請を目指すが、及川院長は「医師不足が深刻な地域は他にもある。医師数はなかなか増えない」と嘆く。

 今回の参院選で持続可能な医療制度をどう築いていくかは大きな争点となる。中でも北海道では医師不足が健康保険の負担増につながっており、事態は深刻だ。

 中小企業の従業員とその家族が加入する健康保険(協会けんぽ)に、深刻な事態が象徴的に表れている。協会けんぽの13年度の保険料率を都道府県ごとに見ると、北海道は10・12%と、福岡県と並んで佐賀県(10・16%)に次ぐ高水準にある。

 その原因には、道内計約1万2000人の医師のうち、半分以上が札幌と旭川周辺に集中している医師偏在が挙げられている。地方の医師が不足しているために札幌の病院に患者が集中し、人口10万人当たりの病床数や在院日数が全国平均を上回って高い医療費を招き、保険料を折半する中小企業従業員や企業主の負担を重くしているのだ。

 医師は国家資格だが、国はこれまで、実効性を伴った医師偏在対策を描けていない。宮川良一・紋別市長は「市町村でできる対策には限りがある。一定期間だけでも不足地域に医師を赴任させる仕組みを作ってほしい」と訴える。

 医師の供給源となっている大学病院も医師偏在対策に知恵を絞っている。札幌医科大学では今年度の入試から、卒業後9年間の道内勤務を誓わせる「北海道医療枠」を設け、来年度からは定員に占めるその割合を31・8%から50%へと高める。ただ、ある程度の効果は期待されるものの、意欲や能力の高い医師が地方に順調に派遣されるかどうかについては疑問視する声がある。

 医師偏在の解消を始めとした道内の持続可能な地域医療の将来像をどう描いていくのか。政党や候補者は具体像を示す必要がある。(江村泰山)