[論点]女性外来の閉鎖 総合診療の専門医 必要 上條美樹子氏(寄稿)

2013.06.27

[論点]女性外来の閉鎖 総合診療の専門医 必要 上條美樹子氏(寄稿)
2013.06.18読売新聞 


 症状を限定せずに女性医師が女性患者を診察する「女性外来」が誕生して10年以上が過ぎた。
誕生の背景には、女性と男性の精神的かつ身体的な相違に注目した「性差医療」の概念があった。

女性に特化した医療を行う女性外来の登場は、男性医師主体の医療に不満をもっていた女性たちに歓迎され、いわゆる女性外来ブームが到来。その普及と定着が期待された。

 しかし、この数年、女性外来の新たな開設は少なく、むしろ公的病院などでは閉鎖する病院が増えている。
背景には、受診者の減少や担当する女性医師の不足などが挙げられる。加えて、女性外来が扱う「女性特有の病気」が何なのか、今まで明確にされてこなかったことも、問題の一つではないだろうか。

 「女性特有の病気」とは、必ずしも婦人科疾患や乳腺疾患を意味するのではない。女性の体調は性ホルモンの変動に左右される。
月経周期はもちろん、思春期の身体変化への戸惑い、母となる喜びと同時に生じる不安、更年期の喪失感……。いずれの時期にもホルモン変動は、たとえそれが生理的変動であっても女性の心身に大きな負担をかける。

 老年期の女性に骨粗鬆症(こつそしょうしょう)や大腿骨(だいたいこつ)骨折が多いのは、女性ホルモンの低下に関係する。
女性は、女性ホルモンに一生ふりまわされ続けるのである。

 女性外来には、このような女性たちが、「体調が悪い」「頭痛やめまいが続く」「意欲がわかない」「体中に痛みを感じる」など様々な訴えとともに訪れる。

担当医は彼女たちの話に耳を傾け、体のどこかが損傷を受けていないか注視し、こころの悩みに対しても適切な解決法を探すように努める。
患者さんとの会話は最も重要で、会話の中から、ストレスの内容や診断の決め手となる症状が見つかることも数多い。

 話を聞く技術は、一朝一夕に身に着くものではない。医師としての研さんが求められるので、女性外来担当医にはある程度の経験年数が必要である。

だが、女性外来の中には「女性医師が診療すること」を重視するあまり、経験の浅い若手や内科の知識に乏しい医師が担当するケースも少なくないようだ。
そうした施設では、当然のことながら、受診者が満足を得ることは難しい。

 育児や介護負担のストレスを軽減することも女性の健康管理には重要である。
家事と仕事の両立や孤立無援の介護に疲れ果て、心身を病む女性が増えている。
女性医師は同性であるがゆえに、こうした女性の健康不安を理解しやすく、患者さんも相談しやすいと言われているが、ただ同性であるだけで女性の痛みを理解できるわけではない。歩み寄り、寄り添う姿勢が何よりも必要である。

 今後、女性外来の定着には、女性の抱えるストレスを適切に理解し、総合診療力にたけた専門医の育成が急務であろう。
担当医は必ずしも女性である必要はない。むしろ女性の気持ちを理解できる男性医師が増えていくことが、真の意味での女性医療確立につながるのかもしれない。


 ◇かみじょう・みきこ 神経内科専門医。愛知医科大助教授などを経て、2001年から中部労災病院神経内科部長。女性診療科部長を兼任。