緊急連載 揺れる尾道市民病院 <上> 小児科休診の危機

2013.06.20

緊急連載 揺れる尾道市民病院 <上> 小児科休診の危機
2013.06.19中国新聞 朝 


緊急連載 揺れる尾道市民病院 <上>

小児科休診の危機

医師確保 派遣頼み限界

 尾道市民病院(同市新高山)が揺らいでいる。小児科医師2人が今月末で辞め、後任のめどは立っていないためだ。小児科は休診の危機に直面。

産婦人科への影響も懸念されている。小児外科医師でもあった市病院事業管理者の青山興司氏の罷免から約1カ月。市民への影響を最小限にする行政努力が問われている。(尾道市民病院問題取材班)

 18日、病院の中央受付には普段と変わらない診察待ちの風景があった。しかし患者や家族の心中は穏やかでない。

 生後5カ月の長女を連れてきた市内の主婦(23)は「せっかく慣れたのに、他の病院を探さなければいけないのでしょうか」。

3人の子どもがいる会社員男性(37)は「休診が決まれば、混乱は避けられない」と危惧する。

 同病院では、妊婦が帝王切開する際は小児科医師が立ち会う。小児科医師がゼロになれば産婦人科への影響も避けられない。

出産相談で産婦人科を訪ねた市内の主婦(28)は「小児科と産婦人科の連携が魅力のひとつだと思っていたのに」と不安がる。

 この日、小児科は6人、産婦人科は19人が受診した。小児科には現在1人が入院中だ。

チャンネル必要

 一方、今回の混乱の背景には、医師確保を大学の医局やNPO法人などの派遣に頼らざるを得ない公的病院の現状がある。
尾道市民病院は医師47人のうち、38人が岡山大の医局からの派遣という。

 市民病院は「医局は医師確保の頼みの綱。本来、医師の安定確保にはいろんなチャンネルが必要だが…」と苦しい胸の内を明かす。

 近隣では三原市の三原赤十字病院で、約20年間、産婦人科医師を派遣していた鳥取大医学部(米子市)が10月末での引き揚げを決めた。産婦人科は休止の危機だ。

都市を選ぶ傾向

 ただその医局も人材確保に頭を痛めているのが実情だ。

 厚生労働省医事課によると、転機は、免許を取得した新人医師に2年間の研修を義務付ける臨床研修制度が導入された2004年度。新人は人口が多く、高度医療の集積する大都市の病院を選ぶ傾向が強くなった。

 それから地方での医師不足が深刻化することになる。研修先は自由に選択できるため、大学の医局が地方病院へ医師を派遣する機能が弱まることにもつながった。

 自治体は、独自の奨学金制度を設けるなどして人材確保に知恵を絞るが、奏功しているとはいえない状態だ。県内の地域医療関係者の一人はこうも指摘する。

「地方では公募しても継続して一定レベルの医師を確保できないのが実情。医師にとって魅力ある職場になるよう、住民側も必要でない受診は避けるなど地域の取り組みも大事だ」