薬のネット販売 安全性をどう守るか

2013.06.06

:薬のネット販売 安全性をどう守るか
2013.06.04毎日新聞 


 利便性を求めると安全性が危うくなり、安全にばかりこだわると不便を感じている人たちを置き去りにする。薬局などで販売されている一般用医薬品のインターネット販売問題がそうだ。政府はほとんどの一般薬のネット販売を解禁する方向で調整している。離島や過疎地に住む人には朗報だろう。ネット業界からは100%解禁を求める声が上がるかもしれない。しかし、一般薬でも副作用被害は起きており、安全性の確保も十分に考えなければならない。

 一般薬は副作用リスクの高い順に第1~3類に分類され、厚生労働省は第1類と2類は薬剤師らによる対面販売が必要としてネット販売を認めてこなかった。ネット業界は以前から解禁を求め、最高裁も厚労省の規制は薬事法を逸脱した違法なものとの判決を出した。規制改革会議からも解禁を求める意見が出ている。

 厳重な臨床試験を通って認可された薬でも市販後に予想されなかった副作用が表れることがある。薬効や副作用は個人の体質や体調、他の薬との飲み合わせによっても異なる。一般薬でも年間平均250例の副作用被害があり、2007年度から5年間で24件の死亡、15件の後遺症が報告されている。薬剤師などによる対面販売が必要なのはそのためだ。ネット販売が解禁されれば、違法ドラッグに似た効用を求めてかぜ薬を大量購入したり、偽造医薬品が海外から流入したりすることを止められなくなるとも指摘される。

 ただ、現行の対面販売のルールが十分に機能していないのも事実だ。第1類の医薬品について「文書を用いて詳細な説明があった」のは半数程度で、まったく説明がないケースも2割近くに上るとの調査結果がある。報告された副作用被害と販売時の説明不足との因果関係も実証されているわけではない。

 利便性を求める流れを変えることは難しいが、予測できない副作用リスクがある以上、患者側に自己責任を求めるだけではいけない。最高裁判決以降、ネット販売は野放図状態になっているともいわれる。悪質な業者をチェックして締め出す仕組みや、副作用の監視や報告体制の充実、若年者らを対象にした薬に関する教育も必要ではないか。

 高齢者人口が増え、複数の慢性疾患を持った人がいくつもの薬を服用するのが当たり前になった。患者の服薬履歴を管理しながら相談に乗る「かかりつけ薬剤師」を持つこともこの機に進めるべきだ。医療費抑制のため、軽症の疾患は病院にかからないようにすることも今後は検討される可能性がある。薬剤師の役割は地域医療でますます重要になってくるに違いないのだ。