首都圏の医師が「消える」 医学部新設機運高まるも

2013.06.04

首都圏の医師が「消える」 医学部新設機運高まるも
2013.06.03 AERA  


 首都圏は大丈夫--。そんな思い込みが問題解決を遅らせる。医師不足も然り。

 医学部新設の機運が高まっている今、正しい状況認識から始めてみたい。

 (編集部 岩田智博)


 首都圏の救急医療に従事する医師の間では、次の言葉が半ば常識として定着しているという。

 「夜、それに週末は車を飛ばしたらいけない」

 この意味を、帝京大学ちば総合医療センターの小松恒彦教授(第三内科)が次のように解説してくれた。

 「そもそも、平日の日中でも医師が不足している。夜間や週末になると、その状況は悪化こそすれ、よくなることはない」

 小松教授は今年3月まで、千葉県北部にある二次救急病院で夜間の当直も行っていた。
軽度のケガから心疾患まで、患者は絶えず、病状は多岐にわたった。そのすべてを、小松教授一人で対応しなければいけなかった。眠っている時間はなかった。

 小松教授は、自分は守備範囲が広いという自信があるが、当直勤務を支えているのは、自分のような医師ばかりではない、という思いも強い。


 ●首都圏こそ医師不足

 「医師不足」--。この言葉は長年、もっぱら地方における医療崩壊とともに語られることが多く、都会、とりわけ首都圏には縁遠いと思われがちだ。

 しかし、実態は違う。崩壊過程がより深刻なのはむしろ首都圏なのだ(グラフ)。

 このグラフは、東京大学医科学研究所の湯地晃一郎助教らのグループが、2010年と、35年時点で予想される医師および死亡者数を、各都道府県別に算出したものだ。
団塊世代や団塊ジュニア世代といったボリュームゾーンが高齢化し、病気にかかりやすくなる35年時点の医師と死亡者数を、人口動態などを基にはじき出した。

 もっとも死亡者数の伸び率が高いのが埼玉県だ。2010年の5万2788人から、25年後には9万4499人に増えると予想され、1・79倍。

 次いで神奈川県が6万5518人から11万5537人で、1・76倍だ。千葉県は4万8132人から8万3723人で1・74倍。
現時点でも年間で10万人以上が亡くなっている東京都は、伸び率こそ1・57倍と低いが、2035年の死亡者数は16万4225人に達する。

 このままでは、高齢化でどこも大幅に死亡者数が増える一方、医師数はそれほど増えないことが一目瞭然。
その医師数とて、額面通りに受け取ってはいけないと湯地助教は言う。

 「医師も高齢になると、以前と同じような労働量は提供できない。近年増えた女性医師も、出産や育児などでフルタイムで働けない場合がある。
これらを考慮すれば、医師の数は不足はしても、充足することはない」

 60~75歳の「高齢医師」の伸び率は、東京では3倍超だ。次いで神奈川2・79倍、千葉2・47倍、埼玉2・41倍などと続く。
女性医師は東京、神奈川で1・85倍、千葉は1・82倍など。

 高齢と女性の医師の割合が高くなっても医師不足が深刻化するとは一概に言えない気もするが、東京都立墨東病院で内科医長も務め、現場の実情にも詳しいナビタスクリニック東中野の濱木珠恵院長はこう話す。

 「例外はあるにせよ、年をとるとフットワークは重くなる。多くの医師は年をとるにつれ、勤務医ではなく開業医にもなる」


 ●妊娠できない病院も

 開業医になると、何でも診られるオールラウンドプレーヤーにならざるを得ない。専門分化が進み、高度化する中で、続々と増える医薬品や新たに可能になった治療法に目配りしたり、勉強したりする時間は、不足しがちだ。
大病院でしかできない治療法も多い。
結局、大病院頼みになり、十分な医療を提供できなくなりかねないという。

 では女性医師はどうか。

 1985年に男女雇用機会均等法が成立して、まもなく30年。さすがに状況は変わりつつあるかと思いきや、だ。

 「産休、育休と休みを取れば、知識も含めて追いつくのは難しくなるし、現場感覚もなくなる。
復帰しても当直をしないと迷惑をかけてしまう。そうした理由から現場に戻れない女性医師を多く見た」(濱木院長)

 一部の病院では、「病院に勤務する以上、妊娠しないように」と上司に言われることもあるという。
しかも、当直をせずに許されるのは、人的にも精神的にも比較的余裕がある病院だ。
医師不足が進めば、女性医師はいっそう働きづらくなりかねない。

 これらを念頭に置いて都道府県ごとの状況を見ていくと、薄ら寒い気分になる。

 10万人当たりの医師数が、実は全国で最下位の埼玉県。今年1月、「胸が苦しい」と呼吸困難を訴え、119番通報した久喜市の男性(当時75)が、県内外の25病院から計36回の救急搬送の受け入れを断られ、約3時間後に到着した茨城県境町の病院で亡くなった。

 埼玉医科大学総合医療センターで高度救命救急センター長だった堤晴彦病院長は、この事態は例外でないと明言する。

 「このケースは、不幸にも患者さんが亡くなられたので表面化した。同様のたらい回しは埼玉では日常茶飯事です」

 堤病院長は、自らの病院が「最後の砦」との自負もある。ただ、その事実を公にすると、患者は一極集中。
周辺の病院は救急を行わなくなってしまう。結果、周辺病院の救急体制を緩ませ、診療能力を奪う一方、自身の病院は過重労働でスタッフが疲弊し辞めていく。最後の砦と明かした途端に砦ではなくなってしまうジレンマがあるという。

 やはり死亡者の大幅増が想定される茨城県でも昨年末、驚くべきことが起きた。

 診療報酬の不正請求で阿見町にある東京医科大学茨城医療センターが12月、保険医療機関の指定を取り消されたのだ(現在は再指定)。
保険医療機関でなくなると、医療費全額を自己負担しなければならない。
それでも患者には、ほかに行ける病院がない。
結局、市町村などの保険者が肩代わりし、保険診療と同じ自己負担で済む特例措置の「療養費払い」が実施された。


 ●医師紹介で「100万」

 茨城県の医師不足は、73年に筑波大学医学専門学群ができるまで、県内に医師養成機関がなかったことが影響しているとされる。
筑波記念病院にも勤務する先の小松教授は嘆く。

 「茨城でも、つくば周辺には医師はおり、病院もある。ただ、他の地域の医療は貧しすぎる」

 医師不足が深刻なのは埼玉、茨城と接する千葉県も同じだ。
千葉県東部の匝瑳市にある国保匝瑳市民病院は、病院に医師を「紹介した人」に最高で100万円の謝礼を支払う制度を今年4月から始めた。

 また、小松教授が当直をしていた二次救急の病院は県北部、自身の病院は市原市にある。

 「比較的医師数が多いはずの千葉市からも救急の患者は来る。それほどまでに人手がない」

 これらの地域は東京のベッドタウンでもある。昼間は東京の会社などに通い、都内の病院にかかる場合が多い。
その人たちが定年などで日中も地元にいるようになったら、医師不足はより深刻化するとの指摘もある。

 東京都とて例外ではない。70万区民を抱える練馬区は、一般病床200床以上の病院が順天堂練馬など3病院しかなく、人口10万人あたりの病床数は276(09年)と、23区で最低レベルだった。
加えて本誌12年7月2日号で詳報したように日本大学(法人)が練馬光が丘病院の運営から12年3月に撤退し、医療過疎になりつつある。

 そもそも東京には、急性期を過ごした後、リハビリなどを行う慢性期向けの療養型病床が少ない。
先端医療は集中するが、高齢者に多い慢性疾患に対応する病院は意外と少ないのだ。

 「東京の病院には他県から人が続々と来るイメージがありますが、慢性期は逆。
入院先がなく、患者は東京から出て行かざるを得ない」(ある腫瘍内科医)

 神奈川県は東京以外の首都圏と東京で起こっている事態が複合しつつ、進行している。


 ●「79年の壁」は崩れるか

 こうした状況に風穴を開けると期待されているのが、医学部の新設構想だ。79年の琉球大学を最後に新設は認められてこなかったが、09年、マニフェストで「医師数を1・5倍」と明記した民主党が総選挙で圧勝。
認可する文部科学省も翌年12月、有識者による検討会を立ち上げ、「79年の壁」が崩れる機運が高まる。
流れは東日本大震災以降、加速した
 

震災では東北、とりわけ岩手、宮城、福島の被災3県の医療体制が危機に瀕した。
宮城県の石巻市立病院は津波で全壊した。
福島第一原発に近い福島県相馬市を含む浜通り
の相双地域では一時、医師が震災前の半分に減った。こうした傷はいまだ癒えず、回復途上だ。

 そんな中、昨年2月に相馬市の立谷秀清市長(28ページ囲み)が中心となって、被災3県の16沿岸部市長が連名で、東北に医学部を新設することを国に要望。
昨年9月に発足した自民党の「東北地方に医学部の新設を推進する議員連盟」(会長・大島理森前副総裁)が、東北地方の医学部新設を「特例」で求める決議を今年2月に採択した。


 ●東北のみ特例で新設か

 賽は投げられた。以前から東北の医師不足問題に関心を寄せ、震災2カ月前に医学部新設構想を発表していた仙台厚生病院の目黒泰一郎理事長は語る。

 「奨学金なり、学費面をこちらで出す代わり、一定期間、東北各地に行ってもらい、研鑽を積んでもらうのです」

 目黒理事長は新しく大学を作る以上、従来型と同じでは意味がないと意気盛ん。
東北福祉大学と連携するとみられているが、東北に医学部が新設されれば、それがどの大学であれ、新設用に貯めた200億円を寄付する意向も示している。

 だが、東北に医学部ができても、首都圏の「医師不足」問題の抜本的な処方箋にはならない。
目黒理事長や先の自民党議連で副会長を務める平沢勝栄衆院議員らは、東北に医学部を作ることで「79年の壁」を壊し、他の地域にも道を開こうとしているように見える。

 しかし、「先行実施論」には、これまで医学部新設を推進してきた人の中にも異論がある。

 「東北一つを作って事たれりとされると困る」(新設医学部推進のある医師)からだ。
被災地の新設医学部があくまで「特例」なら、原則認めない現状と変わらないに等しい。

 医学部新設をめぐっては左の表にあるように、開業医が中心の日本医師会が反対し、推進側との議論はかみ合わない。

 だが、問題を放置するうちに医師不足は進む。
過密、繁忙になるほど現場の人間はその職場を避け、負のスパイラルに陥るのは過去の例が証明している。人口10万人当たりの医師数が全国最下位の埼玉で、最前線にいる先の堤病院長の言葉を引いて終わりたい。

 「いろんな政策、対策に期待し続けたが、状況は何も変わらなかった。それならば、医学部新設しかないはずだ」


 ■医学部の誘致構想が話題になった主な自治体の声

 自治体/大学
(1)医学部誘致・新設の意向
(2)誘致・新設の理由
(3)誘致したい大学/新設したい候補地と理由(4)将来(2025年)の医師数の見通し
(5)東北のみに医学部新設が認められる可能性が高いことについて

 -は不明、未回答など。
取材や報道などで医学部誘致・新設の意向があると判明している自治体・大学にアンケートを送付し、回答を抜粋して掲載した。掲載していない自治体でも計画などがある場合もある

   *

 <北海道函館市>

(1)○(2)地域の医療環境の向上に資するため(3)-(4)これまで地域において医師数の不足・地域偏在を主な要因とし、医療環境は厳しい状況にある。医療需要の変化や医師の地域・診療科偏在の課題がある中で、医師数や医師の配置が適正かどうかを見通すことは極めて難しい
(5)国がどのように判断していくのか、その動向を注視している段階にあり、必要に応じて国に要請していくことも考えている


 <宮城県>

(1)○(2)東北地方は、従来から人口10万人当たりの医師数が全国最低で医師不足が深刻な地域だったが、東日本大震災の発生により、本県では医師不足に拍車が掛かっており、また、今後も高い高齢化率を背景とした医療ニーズが見込まれることから、抜本的かつ恒久的な対策として、東北地方に「地域医療を志す人材を養成する新たな医学部の設置」が必要であるため(
(3)-(4)充足せずに地域格差が拡大すると思う。
一般的に、卒業後にどこで働くかは医師の自由な選択であるため、住環境や教育環境に恵まれた都市部に医師が集中する傾向にあり、これを抜本的に解消する対策を行わなければ、都市部とそれ以外との地域格差はますます拡大するだろう
(5)医学部の新設は、将来に大きな不安を抱える数多くの被災者にとって、医療環境の改善のみならず、新たなまちづくりに向けた「希望の光」であり、「復興の象徴」となる。震災からの復興の特例として、東北地方に医学部の新設を認めていただけるよう、国に働きかけている


 <新潟県>

(1)-(2)新潟県は、人口10万人当たり医師数は191.2人(総数)と全国平均230.4人(同)を大きく下回る状況にあり、特に勤務医の不足が顕著だ。
これは、国の1県1医大政策により、都道府県によって医師養成定数に大きな格差が生じているためであり、本県のように大都市圏から遠く、一定の人口を有する地域にその影響が顕著に現れている。
医師不足、地域偏在を抜本的に解消するため、医師不足が顕著な都道府県については、医学部の設置規制の緩和や医師養成数の大幅な増員か、医師の地域偏在解消に向けた実効性ある対策が国において実行されるべきと考えている
(3)-(4)新潟県では、全国との格差は年々拡大する一方だ。
本県のような医師不足が顕著な県においては、医学部新設等の抜本的な対策がとられない限り、医師不足は解消されないものと考えている
(5)激甚災害の指定などでは、新潟県も「東日本大震災」の対象地域であり、本県も被災地であると考えている


 <茨城県>

(1)○(2)医師不足の解消を図るため(
(3)-(4)人口1000人当たり医師数が、現在の全国平均に達するにも約1900人の医師の確保が必要であり、抜本的な地域偏在対策などが講じられなければ、本県の医師数が充足するとは考えられない(5)東北に新設を認めるのであれば、本県も大きな被災地であり、しかも人口1000人当たりの医師数も東北被災3県より少ない状況からして同じ扱いをすべきである


 <千葉県成田市>

(1)○
(2)医師不足、医師の地域偏在、看護師不足は全国的にも深刻な問題となっている。
なかでも千葉県の医師数は47都道府県中最低ラインであり、医師数の将来予測の中でも埼玉県と最下位を争っている。加えて、当県には医学部を持つ大学が一つしかないため、このことも医師不足の要因の一つであると言われている。
医科系大学が誘致できた場合には、地域医療への貢献はもとより、国際空港を活かした国際医療への展開、さらには、大きな経済波及効果が生まれると考えている
(3)-(4)将来の医師数については、医師の高齢化や女性医師の増加により、有資格者は増えても実際に従事できる医師数はそれほど増加せず、また、超高齢化社会の到来により人口1000人当たりの医療ニーズは大幅に増加すると考えている。
加えて、千葉県内においては地域医療の崩壊が始まっており、現状でも医師の確保が非常に困難な状況となっている。25年段階でも医師数は不足すると考えている
(5)既に地域医療の崩壊が始まっており、将来的にも医師数は不足すると考えているので、特例としてではなく、医学部の新設を認めていただきたい


 <埼玉県>

(1)埼玉県立大学に医学部設置を調査・検討中(2)最大の課題は、将来医学部の設置が可能となった場合に必要となる実習病院を確保することである。確保する方策の一つとして、総合病院の誘致を目指していく。
国が医学部新設の方向性を示していない中、誘致した総合病院と埼玉県立大学を連携させ、医学部設置に向けた環境整備を進めていく
(3)-(4)医師の需給の将来推計を行うことは困難である。最近の医学部入学定員の増員や今後の人口減少が影響して人口10万人当たり医師数は増加する。
このため、2025年段階で医師数は充足するとの試算がある。一方で、「医師自身の高齢化」「女性医師の増加」「病院勤務医の労働時間の適正化」を加味すると、医師不足は継続するとの試算もある。
医師の需給については様々な要因があり、判断は難しい
(5)医学部新設の可否や設置の形態を国が一律に決定するのでなく、地域の実情が十分に反映されるよう、設置に関する規制が緩和されるべきと考える


 <神奈川県>

(1)○
(2)京浜臨海部ライフイノベーション国際戦略総合特区で、外国人医師や看護師による治療なども可能な「開かれた医療」を実現するため、国際的な医学部の新設や既存の大学による共同設置、国際的な大学院の設置などについて、検討を進める
(3)-(4)本県の人口10万人当たりの医師数は2020年においても、全国平均を下回ると推測しており、また、特定の診療科や地域による偏在もあることから、2025年においても、同様であろうと推測される
(5)医学部設置に関する規制が緩和されることが望ましい。これを契機に医学部新設の議論が広がればよいと考える


 <静岡県>

(1)○
(2)人口10万人当たりの医師数は、06年169.9人(医療施設従事者)に対して10年には182.8人(同)と増加し、全国順位も44位から40位に上げているものの、まだ低い状況にある。
このため、将来を見据え、医師養成を進めていく必要があると考えている
(3)-(4)医学部入学定員の増加により、医師養成という供給面では将来の医師数増加が見込める一方、高齢化が更に進行し、医療の高度化・専門化が進むものと見込まれ、医師の需要は一層高まるものと考えられる。このため、現時点で、地域間や診療科間の偏在の解消も含め、医師数が充足するとは言い切れない
(5)国に対し、医師養成数の確保の手法として医科大学または医学部の新設を認める方針への転換を提案しており、東北への医学部新設が認められた場合、本県のような医師不足が深刻な他の地域にも医学部新設が認められることを期待する


 ■医学部の新設構想が話題になった主な大学の声

 <北海道医療大学>

(1)○
(2)北海道の過疎地では医師不足が明らかで、広大な大地に点在するように生活している高齢者を中心とした地域住民にとっては、都市住民と同等のレベルの医療を受ける権利さえあやしい状況
(3)当別町と釧路市。医学基礎教育を当別町に設置する医学部で行い、臨床医学教育を釧路市内の大規模病院と共同で行う
(4)現在、顕在化している問題は都道府県単位の医師数ではなく、医師の極端な大都市への偏在である。全国的にも首都圏や関西地域に医師が集中し、首都圏近傍の諸県でも医療過疎地となっている現状がある。北海道に限ると札幌市と旭川市周辺に多く、道東・道南・道北で過疎化している
(5)東北地区での医学部新設を適正な医師配分への第一歩とし、医師が不足している地方での医師教育を重点的に増やすべきだろう


 <東北福祉大学>

(1)○
(2)東日本大震災の以前から、東北地方の医師不足は顕著で、各自治体から悲鳴とも言える声が上がる現状を看過できない
(3)仙台市。東北地方では各県に一つの医学部または医科大学があり、これらが医師を供給してきたが、東北地方の医師不足は深刻である。
東日本大震災で甚大な被害を受けた仙台市に臨床医の養成を目的とする医学部を新設することは、より効果的に医師不足を解決し、明確な復興に向けたビジョンを描ける
(4)医師が勤務地域や診療科を自由に選択できる現状のままでは、相変わらず医師が都市に集中する(5)単なる医師数の増加で医師不足を解決することだけではなく、地域医療を担う医師の多くが過重労働などの過酷な勤務環境を余儀なくされている状況を一刻も早く解決し、卒業生たる医師が東北地方に定着しやすいシステムを構築し、東北地方の医療環境の改善を図る


 <国際医療福祉大学>

(1)○
(2)30年以上にわたり学部新設がなく、新規参入が認められていないため、競争の原理が働いておらず、改革がなされていない。閉塞感を打ち破るような、現行の医学教育に新風を吹き込む医学教育モデルを提示・実践したい
(3)キャンパスのある栃木県大田原市、または誘致を受けている自治体(複数)。大田原キャンパスのある栃木県北部は、栃木県内でも医師不足が深刻な地域であり、また本学に誘致を呼びかけて下さっている自治体もいずれも医師不足が深刻な地域であること(4)「医師不足」というと、医療機関のない、過疎地域をイメージしがちであるが、未曾有の高齢化の影響は、人口が多く、団塊の世代が多く住まう、首都圏においても激烈である。高齢者を多く抱える地域での医師の業務量は飛躍的に増加することが予想されるため、その莫大な医療需要を現在の定員増による増員のみで補えるとは、とうてい考えられない
(5)医師不足の緩和のみならず被災地を活性化させるものとして、素晴らしいことだと考える。しかし、東日本を中心に高齢化と医師不足は急激に進んでおり、これらの地域でも医師不足の解消と地域の活性化は非常に重要


 <聖隷クリストファー大学>

(1)北米型メディカルスクール(専門職大学院:医学系)の開設を検討
(2)地域医療に貢献する、対象者ひとりひとりを大切にする臨床医の養成
(3)浜松市(本学所在地)。
静岡県内の人口当たりの医師数が他県と比べて少ない/周辺地域の医療の質的向上に貢献したい。そのためにもメディカルスクールで対応したい
(4)患者数・死者数の増加、医師の年齢構成等により簡単には医師不足は解消されないと考える
(5)仮に特例で許可されるとしても、30年以上認められなかった新設が認められるとなれば大きな転機になると考える


 ■その他の回答

 <早稲田大学> Vision150で示した通り、新しい知の領域を開拓し人類の行くべき先を指し示すことは、学問の府としての大学の重要な使命であると考えている。
総合大学としての文理融合型研究を推進し、新たな形で食と農、健康・医療、超高齢社会、安心安全社会等の教育・研究に挑戦していく


 <同志社大学> 学校法人同志社理事会のもと、医科大学(医学部)設置の検討にあたって必要な情報や資料を提供する目的で医科大学(医学部)設置基本計画検討チームが設置されている。大学としては具体的な検討をしていない


 ■医学部新設についての主な対立点とそれぞれの主張

 ◇現状・将来の医師数

 <反対派>

 医師の地域、診療科間の偏在こそ問題。2008年から医学部の定員は増やされており、25年に日本の医師数は、現在の1.4倍になると試算。医師の絶対数確保には、一定のめどがつきつつある(中川俊男/日本医師会副会長)


 <推進派>

 医師の絶対数が足りない(平沢勝栄/衆院議員・東北地方に医学部の新設を推進する議員連盟副会長)


 医学部の定員増と日本の人口減少で、医師数こそOECD平均に達する見込みだが、高齢者とともに高齢医師も増加するので、医師数が充足することはない(湯地晃一郎・東京大学医科学研究所・助教)


 ◇医学部新設の可否

 <反対派>

 医学部が設置認可されても、卒業までには8年、診療が可能な医師になるには10年以上を要する(岩手医科大学長、東北大学医学部長、福島県立医科大学長)


 医師が過剰になり、入学定員割れや医療の質の低下の恐れもある。医学部を新設し、教育を確保するためには、1大学につき約300人の教員(医師)を現場から引き揚げざるをえず、地域医療の崩壊を加速させる(中川副会長)


 <推進派>

 欧米の水準では、医学部は人口100万人あたり1校は必要。埼玉県は人口700万人、千葉県は600万人に対して1校など、医学部は大幅に不足しており、新設しなければ対応できない(湯地助教)


 少子高齢化による医療需要の高まり、医師の高齢化などの状況を考えれば、医学部の定員増などの従来の対策では医師不足状況は改善しない(平沢議員)


 ◇行うべき重要な偏在・不足対策は

 <反対派>

 被災地をはじめ東北地方などの医師確保は急務。医師の地域偏在の解消に取り組む「地域医療支援センター」の拡充のための支援などが必要。将来的には地域の偏在を解消するため、研修医制度を見直し、臨床研修医が地元出身大学に軸足を置くようにすることも重要(中川副会長)


 <推進派>

 公務員の兼職を医師に限って認め、公務員である国公立の大学医学部教員や病院の医師が、医師不足の病院や地域で働ける環境を整備するなどの対策を行う。と同時に、医学部の新設を順次、進めていく必要がある(湯地助教ら