ドクターヘリ活躍 運航1年出動379件

2013.05.20

 

[焦点みやざき]ドクターヘリ活躍 運航1年出動379件=宮崎
2013.05.19 読売新聞 


 ◆迅速な搬送に貢献

 宮崎大付属病院(宮崎市)が昨年4月に導入したドクターヘリは、運航開始から1年が過ぎた。道路網の整備が遅れている県内の救急医療に大きなメリットをもたらしている。一方、患者搬送の起点となる離着陸場(ランデブーポイント、RP)はドクターヘリを運航している他県に比べて少なく、年間約2億円という運航費用の将来的な負担問題なども今後、浮かび上がりそうだ。(尾谷謙一郎)

 ◆費用年2億円 将来的負担が課題

 小林市立病院で4月26日、ドクターヘリによる患者搬送訓練が行われた。病院近くに設けたRPに、白地に赤のラインが入ったヘリが着陸。ヘリから降り立った医師と看護師は救急車内で待ちかまえた市立病院の入院患者を手際よく担架で運び、ヘリに乗せた。

 ドクターヘリの最大の特長は患者を迅速に医療機関へ搬送できることだ。県医療薬務課によると、ヘリは出動要請から5分以内に宮大付属病院のヘリポートを離陸。最も遠い大分県境まで30分以内で着く。

 小林市立病院ではこれまで、宮大付属病院まで救急車で約1時間かけて運んでいた。4月の搬送訓練では、地元消防本部が付属病院に出動要請を行ってから約15分後にヘリ到着を確認できたという。

 ドクターヘリは医療機器や医薬品を備えている。医師が現場到着直後に初期医療に対応できることも強みだ。小林市立病院の坪内斉志(ひとし)病院長は「今後はドクターヘリを最大限に活用し、地域医療の向上に努めたい」と話した。

 県医療薬務課がまとめた運航実績によると、スタートの昨年4月18日から1年間の出動件数は379件。「年間400件」という当初の見込みと同等で、ほぼ1日に1件の割合で出動している。内訳は、交通事故などによる現場出動が199件で全体の52%を占め、重篤な患者を別の病院に運ぶ転院搬送も174件あった。

 とりわけ常設の消防組織がない美郷、高千穂、日之影、五ヶ瀬、西米良、諸塚、椎葉の計7町村での運用効果は大きかった。7町村の合計で37件の出動があり、延岡市(49件)、都城市(47件)、日向市(42件)などの各消防本部に続く数だった。

 このうち高千穂町では18件。中には農作業中のトラクターが横転して骨折した患者や、町国民健康保険病院で入院中に重篤な状況に陥った患者を、いずれも約100キロ離れた熊本市内の病院に約15分で搬送したケースもあった。

 「救急車での搬送なら往復4時間。町の医師1人が救急車に同乗するため、その間は町内の医療体制が手薄になっていた」と高千穂町総務課。「ドクターヘリのおかげで町全体にメリットが出ています」と喜ぶ。

 1年目は順調に推移したドクターヘリの運用。今後は運航にかかる費用負担の問題が出てきそうだ。

 年間約2億円の運航費用のうち、国からの補助金(1億円)を除いた1億円は、国からの交付金を原資とした県の基金を財源にしている。これから2年程度は、基金から引き続き捻出される予定だ。

 しかし、基金はいずれ底をつく。県医療薬務課は「将来的には、市町村と一緒にドクターヘリの運航のあり方を考える時が来るでしょう」と話している。

 ◆離着陸場 他県に比べて少なく

 患者の救命率を向上させるには、出動から医療機関に搬送するまでの時間をいかに短縮できるかがカギとなる。

 宮崎大付属病院では2月、病院西側の救命救急センターに隣接してヘリポートを新設した。これまではセンターの医師が病院東側のヘリポートまで車で移動していた。新設によって、医師がヘリに搭乗するまでの時間の短縮につながった。

 ヘリで運ばれる患者の受け入れ態勢整備も県内各地で進んでいる。県立延岡病院(延岡市)では3月、屋上にヘリポートが付いた救命救急センターを新設した。これまでのRPだった大瀬川河川敷は病院から約4キロ離れていたため、着陸後の搬送時間は約15分短縮したという。

 県内のRPは学校の校庭や河川敷を中心に360か所が指定されている。しかし、県土面積が宮崎県(約7735平方キロ)の約8割の茨城県では、RPの数は約3倍の1146か所ある。県土面積が約7割の千葉県でも939か所。「消防機関などに対して、RPの積極的な選定をお願いしているため」と千葉県医療整備課は働きかけの成果を強調する。

 宮崎県医療薬務課は「RPが多ければ、患者をヘリに収容するまでの時間短縮につながる」と指定数拡大を図る方針を示す。しかし、RPには広大な用地が必要なうえ、ヘリの離着陸の際には一時、台風並みの強風が発生するため、近隣住民らの安全確保も課題となる。


 〈ドクターヘリ〉

 消防機関が患者の容体を判断して、宮崎大付属病院の救命救急センターに出動を要請する。搬送先の医療機関は、搭乗した医師が患者の容体や搬送時間を考慮して選ぶ。運航時間は午前8時30分から日没の30分前まで(土日含む)。悪天候で運航できないこともある。ヘリでの搬送自体には、患者側の費用負担はない。