論説 新好生館の開院//新しい県立病院「県医療センター好生館」が佐賀市嘉瀬町にオープンした。

2013.05.17

 

論説 新好生館の開院
2013.05.08 佐賀新聞 

 新しい県立病院「県医療センター好生館」が佐賀市嘉瀬町にオープンした。移転構想から約18年。救急医療や高度専門医療に加え、災害医療の拠点として期待される。


■チーム医療目玉に


 施設の充実ぶりには目を見張るものがある。約6万平方メートルの敷地に建つ9階建ての病院棟は県内唯一の免震棟で、東日本大震災クラスの地震にも耐える造り。屋上には県が導入するドクターヘリ用のヘリポートがある。

 病室は450床で個室の割合が35%に増えた。4人の病室もゆとりのある広さで、ベッドの間をカーテンで仕切れば個室に近い状態になる。
全病室に洗面台とトイレを完備し、患者が治療に専念できる環境と言えるだろう。

 移転をめぐっては候補地の選定に時間がかかったが、ふさわしい施設に仕上がったことを喜びたい。県民が望むのは「もしも」の時に受けられる良質な医療であり、整備に合わせて診療機能の強化が図られることは、地域に暮らす上で安心につながる。

 新病院の救急外来は従来の1・5倍の広さで、集中治療室が倍増し8床になった。
24時間対応はもちろん、ドクターカーやドクターヘリが駆けつけ、速やかに治療できる態勢をとる。九州初の外傷センターやトリアージナースも本格稼働する。

 外傷センターは事故などのけがに対応し、救急医だけではなく、整形外科など各科の15人体制で治療に取り組む。
外傷死を防ぐだけではなく、後遺障害を最小限に抑えることも目標になる。複数の専門家によるチーム医療は、新病院の目玉ともなる可能性を持っている。

 トリアージナースは、看護師が救急外来の受付に待機して、マイカーなどで来た患者の治療順を決める。痛みや症状など患者の訴えを聴き、緊急を要するケースを見分けるという意欲的な試み。
これまでは夜間に限った対応だったが、24時間体制にするため人材も育成した。

 新病院の診療科は32科。
臓器や疾患別にセンター体制をとり、外科系と内科系の枠を超えて治療を進める。血管に通すカテーテル治療など内科医が担当する分野が広がっており、外科と内科のチーム医療に適した「ハイブリッド手術室」も備えた。柔軟な対応で患者の社会復帰を早めることにつながりそうだ。

 見逃せないのは災害時の拠点病院としての機能である。
医薬品や水の備蓄庫を持ち、自家発電装置などライフライン関連の設備を強化した。
災害時には入院2倍、外来5倍の患者に対応できるように設備が施されている。採算は難しい部門だが、県民の安心を保証する意義は大きい。


■環境の充実還元を


 好生館は2010年に地方独立行政法人となって以降、経営が黒字転換した。
外来患者や手術数が増え、医師やスタッフ体制も充実した。経営改善によって最新医療機器の購入が可能になり、人材が集まるという好循環を生み出している。人を大切にする病院ならではの経営を目指してもらいたい。

 病院の評価につながるのは治療面ばかりではなく、患者への接遇もある。
新病院の敷地内には職員宿舎や保育所ができ、働きやすい環境も整った。
その効果を接遇に生かすことも課題となるだろう。幕末から続く伝統の上に立って、信頼ある病院としての運営を期待したい。(宇都宮忠)


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佐賀県医療センター好生館/5月7日開院/県初の免震構造、基幹災害拠点機能を充実
2013.05.07 建設通信新聞  


 佐賀県唯一の県立病院として150年余の歴史を持つ佐賀県立病院好生館の移転新築事業が完成、「佐賀県医療センター好生館」として、きょう5月7日に開院する。2010年に地方独立行政法人に移行した佐賀県医療センター好生館が建設を進めたもので、佐賀市嘉瀬町中原の地で新たな一歩を踏み出す。新病院棟は、医療機能の充実はもとより、県初の免震構造の採用や屋上ヘリポート設置など、基幹災害拠点機能を充実させるとともに、癒しの空間を創出することで患者にも優しい病院に生まれ変わった。設計・監理を担当した日建設計・三島設計JVは、県民に末永く親しみをもって愛される病院を企図し、関係者の期待に見事に応えた。施工を担当した竹中工務店・松尾建設・中野建設・唐津土建工業JVらも協力会社と一体となって歴史と伝統を引き継ぐ高品質で精度の高い医療施設に造り込んだ。■設計・監理=日建設計・三島設計JV 施工=竹中工務店・松尾建設・中野建設・唐津土建工業JVら

◆設計メモ・磁器質タイルを採用、ステンドグラスなどアート作品で明るく快適な空間

 本計画は、佐賀県唯一の県立病院として、地域基幹病院の役割を担ってきた佐賀県立病院好生館の新築移転です。計画地内には病院以外に付属施設の研修棟、宿舎棟、保育所棟も同時に整備されます。

 計画地西側には、病院への主動線となる道路が新しく整備されました。この西側道路に面して外来駐車場を配置し、北側住宅地の住環境に配慮し、さらに将来の医療機能の変化にも柔軟に対応するために病院周辺に増築用地を確保できるように、病院を計画地のほぼ中央東寄りに配置しました。付属施設の配置は、病院の西側を避け、宿舎棟は北側、研修棟は東側、保育所棟は園庭の自然採光と静かな環境が確保できる南東側としました。西側道路から病院へのアプローチ動線に沿って、ヒーリングパークと称した、豊かな緑とアート作品などで憩いの空間を演出した庭園を設けています。

 病院の玄関は、正面となる西側に大きく構えます。玄関前には路線バスの停車が可能で、雨天時にも濡れることなく車の乗降ができる大屋根のある車寄せを設けます。一方、救急、スタッフ・サービスの出入口は北側に設け、一般来院者の動線と明確に区分します。

 病院の外装材は、佐賀県にゆかりのある青磁をイメージした磁器質タイルを採用し、佐賀県民の皆さまに愛着を持ってもらえる特色ある外観としました。

 病院内の主な階構成は、1階にはエントランス、外来、放射線、救急、栄養、2階には外来、検査、薬剤、管理、3階には手術、集中治療、救急病棟、3階の西側から8階には病棟を配置します。屋上には、患者搬送用のヘリコプターが離着陸できるヘリポートを設置しました。

 エントランスホールは、2層の吹抜け空間で内装仕上げ材に杉材を使用し、佐賀の四季をテーマにしたステンドグラスのある光庭に面することで、明るく快適で利用者が親しみを持てる空間としました。エントランスと光庭を中心に、1、2階の外来、放射線、検査を配置することで、利用者に分かりやすい病院にするとともに、病院内には、光庭のステンドグラスを始めとして、共用部分だけではなく小児病棟、病室、放射線、リハビリ、手術室などにも数多くのアート作品を設け、患者の負担を少しでも和らげる優しい病院を目指しました。

 4階以上には1フロアに2つの病棟を配置します。病棟の中心にスタッフステーションを設け、その周囲に病室を配置させることで看護動線の短縮を図った機能的な病棟としました。病室は、1床室と4床室とを交互に配置することで4床室の廊下側のベッドサイドにも窓を設け、患者アメニティーの向上を図りました。

 構造計画は、大地震時にも建物内の被害を最小限に抑える免震構造を採用しています。さらに設備計画は、災害時においても病院機能を維持できる設備を採用して、災害に強い病院としました。

 環境への配慮として、最適な 熱源構成、自然を利用する仕組みなどにより、確実な省エネルギーを実現します。これらの取り組みが認められ、国土交通省より2010年度住宅・建築物省CO2先導事業として九州で唯一採択されました。

日建設計 設計部門 副代表 藤記 真/主 管 田上 慎也

◆佐賀県医療センター好生館理事長 十時 忠秀/最新機器備えた癒しの空間

 150年余の歴史を持つ佐賀県立病院好生館の老朽化に伴い、2003年3月に移転改築することが決定され、そこから10年の歳月を経て、これまでの歴史と伝統を残しながら、本日、佐賀市嘉瀬町中原に新病院として「佐賀県医療センター好生館」が開院します。

 これまでも佐賀県の中核的医療機関としてその役割を果たしてきましたが、新病院となり、最新の医療機器の導入や手術室の増設などにより医療機能を充実させるとともに、佐賀県で初の免震構造の採用やヘリポートの設置など基幹災害拠点病院としての機能を充実させただけでなく、エントランスホールには光庭とステンドグラスによる癒しの空間を創出し、個室率を向上させるなど患者の皆さまにも優しい病院として生まれ変わりました。

 また、病院棟とは別に研修棟も整備し、医学館として発祥した好生館の原点である研修の場にも力点を置き、医療スタッフの質の向上を図り、質の高い医療を提供する所存です。

 本日、ここに開院を迎えることができましたことは喜びに耐えません。これまで、新病院「佐賀県医療センター好生館」の建設に携わられた多くの方々のご労苦をねぎらうとともに、開院できたことに感謝を申し上げ、ごあいさつといたします。

◆佐賀県知事 古川 康/こころとからだに目を向けて

 「人間を大切に扱って、患者のこころとからだの両面に目を向ける感性、アートこそが今、医学において求められているのだと私は思います」……医師であり、100歳を過ぎてなお、精力的に講演や執筆活動に取り組んでいらっしゃる日野原重明さんの言葉です。

 きょう5月7日から「佐賀県医療センター好生館」が診療を開始します。新病院は、県民の皆さまにより質の高い医療を提供するとともに、免震構造の採用や屋上ヘリポートの設置など基幹災害拠点としての機能充実を図っています。その一方で、院内で過ごされる方に落ち着きと安らぎを感じていただくための環境づくりにも力を入れました。

 たとえば、病棟のサテライトキッチン。好みに合った食事は、入院生活の潤いとなるでしょう。また、付き添われるご家族用の宿泊施設。患者やそのご家族の強い支えになると思います。さらに、多くの蔵書をそろえる図書コーナーにある日野原文庫。長い人生を歩んでこられた大先輩の言葉に心癒されることもあるでしょう。

 これからの佐賀県医療センター好生館が、患者やそのご家族、そして県民の皆さまのこころとからだに目を向けた、感性豊かな、新しい病院のモデルとして発展していくことを期待しまして、ごあいさつといたします。

◆概 要

▽工事名称=新佐賀県立病院好生館(仮称)病院棟新築工事

▽建設地=佐賀市嘉瀬町大字中原

400

▽建築主=地方独立行政法人佐賀県医療センター好生館

▽設計・監理=日建設計・三島設計JV

▽施工=竹中工務店・松尾建設・中野建設・唐津土建工業JV(建築)、九電工・佐電工・岡田電機JV(電力設備)、関電工・電興社JV(通信情報設備)、高砂熱学工業・栄城設備工業・大西工業JV(空調設備)、朝日工業社・兼茂・古賀空調工業JV(衛生設備)、三菱電機(昇降機設備)、佐賀ガス(ガス設備)

▽敷地面積=5万2602.53〓

▽建築面積=1万3059.93〓(研修棟を含む)

▽延床面積=4万7436.17〓(研修棟を含む)

▽構造=SRC・S造、免震構造

▽階数=地上9階建て塔屋1層

▽最高高さ=40.60m

▽工期=2010年10月-13年3月