(成長後の千葉 銚子から:中)混迷続く市立病院 診療科減り見えぬ黒字化

2013.05.15

 

(成長後の千葉 銚子から:中)混迷続く市立病院 診療科減り見えぬ黒字化 /千葉県
2013.04.13朝日新聞  


 銚子市中心部にある市立病院。毎朝、午前8時半の開院前から大勢の通院患者がロビーにあふれる。

 血圧の治療で通院する市内の主婦加勢静江さん(66)は「この病院がなかったら通院のタクシー代だけで1万円以上かかる。
再開して本当に助かる」。

 市立病院は2008年10月に、医師不足や市の財政難で診療を休止した。
その翌年、この問題を争点に当時の市長に対するリコールが成立。市長選の後の10年5月に再開が決まった。

 再開当初の1日あたりの平均外来患者数は十数人だったが、12年度は281・6人。運営母体にあたる病院再生機構の徳丸隆文事務局長は「外来数は順調に増えている」と話す。

 ただ、一度休止した影響は大きい。休止前に16あった診療科は10に減った。市民からの要望が多い小児科の再開は、医師不足のあおりでめどすらたたない。


 ●支援めぐり対立

 病院は再開後も赤字が続いている。どこまで支援するべきかをめぐり、市と市議会は対立を深めている。

 赤字の原因は、収益の柱となる入院患者数が低迷していることだ。入院は11年3月に再開したが、393床ある病床のうち稼働しているのは76床にとどまる。
再生機構は「入院を増やすには医師、看護師がいないといけないが、ともに不足が深刻。計画通りにいっていない」と打ち明ける。

 休止した08年度の体制は常勤医12人、看護師128人。現在は常勤医9人、看護師46人まで縮小した。
赤字を埋めるために市が病院に払う繰り出し金は12年度で15億6千万円。
人件費は減っているのに、休止前からほとんど変わらない。

 「なぜ赤字補填(ほてん)を青天井でするのか」。反発を強める市議会側は、補助金追加の議案を相次いで否決。
市は窮余の策として、議会の同意を得ないまま、市長権限による「原案執行」という形で成立させた。

 支出を抑えるため、市は13年度当初予算で、赤字の穴埋め分と再生機構に支払う指定管理料、修繕費の計10億円を支援の上限にする方針を決めた。
ただ、これは「努力目標」。上限額を超えても補助金をストップすることはないという。

 今年度前半に予定通り1病棟(52床)を再開させられれば、赤字幅は縮小する見込みだ。
ただ再開から5年後としていた黒字化の見込みは「まったくたっていない」(市幹部)という。


 ●地域医療に危機

 銚子市の高齢化率は12年の29・1%から40年には41・7%に達する。地域で医療に対する需要は確実に高まっているが、それを支える医療機関側の体制は、茨城県南部を含めた医療圏全体でみても心もとない。

 茨城側の基幹病院の鹿島労災病院は今月から医師を派遣していた大学病院の事情で常勤医が23人から半減。
外科など主要科の新規入院を停止している。

 銚子に隣接する旭市の旭中央病院(956床)は1日あたりの平均外来患者数が3千人台で、地方公営病院で全国1位。
救命救急センターの年間受診者数も6万人前後で全国トップ級だが、医師不足で救急患者受け入れを一部制限せざるをえない事態となっている。

 匝瑳市民病院(157床)は今月から病院に医師を紹介した仲介者に最大100万円の謝礼を払う制度を始めた。
ここまで高額の謝礼は全国的にも異例だが、「これぐらいインパクトがないといけないぐらい、地方の医師不足は深刻」(事務局)という。

 匝瑳市民病院の常勤医は11人。10年前に比べて半減した。人繰りが厳しく、60歳代の院長も当直に入るほどだ。
「もしうちが潰れてしまったら、県東部の医療崩壊につながりかねない」(事務局)と危機感を募らせている。


 ■銚子市立病院をめぐる経緯

 日時       概要

 2006年 4月 35人いた常勤医が派遣元大学の引き揚げにより半減。

 2008年 7月 18億円を超す累積赤字を理由に岡野俊昭市長(当時)が休止を発表。翌月議会も同意。

 2008年 9月 月末で休止が決定。事実上の閉院。反対派は市長リコール運動を開始。

 2009年 3月 岡野市長(当時)のリコールが成立。

 2009年 5月 岡野氏を含めた6氏が立候補した出直し市長選で、公設民営での再開を掲げた元職、野平匡邦氏が当選。

 2010年 5月 公設民営方式で外来診療を再開。11年3月には入院も再開。

 2011年10月 赤字補填(ほてん)のための補正予算案を市議会が否決。同様の否決は12年10月までに3回起きた。

 2013年 3月 赤字補填は年間10億円を上限とすることで市と議会が合意。