町医者だから言いたい! 【制度・課題】地域医療 入院・通院  「死ぬならこの病院がいい!」と初めて思った

2013.05.13

 

町医者だから言いたい!
【制度・課題】地域医療 入院・通院
 「死ぬならこの病院がいい!」と初めて思った

長尾和宏 (ながお・かずひろ)
2013年5月11日朝日新聞

昨日は千葉県鴨川市にある亀田総合病院のお招きで
館山市にある安房地域医療センターで講演しました。
終末期医療に関するお話です。

館山市の行政関係者をはじめ、南房総地区の医療従事者に
平穏死やリビングウイルについてお話しました。
高齢化が著しいこの地域では、高い関心があるようでした。

講演に先立って、鴨川の亀田総合病院を見学しました。
トップ4人が私に1時間にわたり、房総地区の医療の
現状について説明していただきました。

高齢化、雇用、産業、子育て支援など、医療の周辺のこと
にも亀田総合病院は多角的に取り組んでおられました。
その後院長先生自らが、広い院内を案内していただきました。

亀田総合病院を一度は見学したい、とずっと思っていました。
念願が叶って実現したわけですが、見学は私の想像を遥かに
絶する収穫がありました。

まず、アメニティーの素晴らしさです。
あの空間にいるだけで心が癒されます。
病室のみならず、家族へアメニティーも素晴らしい。

手術場や子供ちゃんの集中治療室も見学しました。
まるで映画の世界にいるような錯覚を感じました。
患者相談センターには50人位の相談員がいました。

亀田総合病院は、日本を代表する高度急性期病院です。
各診療科それぞれの医療への取り組みは半端ではない。
各専門スタッフの数の多さにも、腰を抜かしました。

亀田総合病院のすごいところは、周辺施設も充実していることと、
地域振興にも大きな貢献をしているところでした。
市の基幹産業として見事に地域包括ケアをリードしていた。

あまりに単純な表現で恐縮ですが、感動、しました。

私はこれまで、病院に長く居たいと思ったことはありません。
しかし昨日はちょっとでも長くここに居たい、と思いました。
本当に不思議な気持ちになりました。

また私は、これまで自分が病院に入院したいと
思ったことは一度もありません。
しかし昨日は何故か、一度は入院してみたい、と思いました。

さらに「死ぬならこの病院がいい!」と思いました。
病院で死にたいと思ったのは、生まれて初めてです。

しかし「長尾先生、ここは高度急性期病院ですよ。
死ぬのなら、在宅スタッフに任せて下さい」と言われました。

なんと壮大な規模での在宅医療も行われていました。
医療で治す病気と、付き合って寄り添うべき病気が
はっきり区別されている、スーパー総合病院でした。

鴨川の美しい海岸風景に癒されたあとは、
朝風呂につかりました。
会議のため東京に戻る途中にこれを書いています。


長尾和宏 (ながお・かずひろ)
1958年、香川県生まれ。1984年に東京医科大学卒業、大阪大学第二内科入局。阪神大震災をきっかけに、兵庫県尼崎市で長尾クリニックを開業、院長をしています。最初は商店街にある10坪程度の小さな診療所でした。現在は、私を含め計7人の医師が365日24時間態勢で外来診療と在宅医療に励んでいます。趣味はゴルフと音楽。著書に「町医者力」「パンドラの箱を開けよう」(いずれも、エピック)「『平穏死』10の条件」(ブックマン社)「胃ろうという選択、しない選択」(セブン&アイ出版)などがあります。ツイッターでもつぶやいています。