建て替えで独自の方向性/都市型高層、全室個室も増加

2013.04.17

医療をデザインする・2/建て替えで独自の方向性/都市型高層、全室個室も増加
2013.04.16 日刊建設工業新聞  


 日本の病院経営を取り巻く環境は厳しさを増している。国の財政難を背景にした医療費抑制の流れの中で、長期的には人口減少による医療需要の縮小も予想されている。

 各病院は生き残りを懸けて質の高い医療サービスを維持するため、合併や買収による規模の拡大や、医療現場を支える人材の育成・確保などの施策を展開。中でも、施設の建て替えや改装をきっかけに、独自の方向性を色濃く打ち出そうとする動きが目立っている。

 川崎市幸区の川崎幸病院は、一般外来の機能を持たないのが特徴だ。1973年に開業した旧病院の老朽化や医療機器の大型化への対応のため、同区内でより広い床面積を確保できる場所に移転。地域医療の要である救急医療とそれを支える高度医療に特化した急性期専門の病院として12年6月に新たに開業した。病院の建物は、横に広い低層にするのが一般的とされる。だが、移転先は敷地面積が約3680平方メートルで五角形と厳しい条件が重なった。そのため、高層でしかも矩形という珍しい建築計画となった。

 将来の医療機器の大型化などを見越し、現状の必要面積よりも広さに余裕を持たせて建てるのも最近の病院建築のトレンドだ。しかし川崎幸病院では、「いかに入れるか」を突き詰めた結果、救急救命室(ER)や手術室など核となる部分は一般の病院より面積を広く取り、その他の部分は通常サイズあるいは狭くするという新たな発想の平面計画にたどり着いた。

 この病院が担う地域医療の機能を色濃く反映すると同時に、都市型の高層病院の一つの方向性を提示した病院建築ともいえる。

 現役を退いた団塊世代が75歳以上の後期高齢者となり、医療・介護費用などの社会保障費が膨れ上がる「2025年問題」が迫る。人口の4割が高齢者という超高齢化社会で既存システムが立ち行かなくなるのは明らか。病院の作り方も変えていく必要がある。

 高齢化社会では医療に加え、介護や福祉も見据えた施設の作り込みが求められる。その一例として、高齢者の合併症や感染症などを防ぐための「個室化」が進む。

 92年、聖路加国際病院(東京都中央区)は国内で初めて全室個室の病院を作った。以降、後に続く病院は少なかったが、近年は、名古屋セントラル病院(名古屋市中村区、06年7月)、済生会長崎病院(長崎市、09年6月)、足利赤十字病院(栃木県足利市、11年4月)などが相次ぎ全室個室を採用。16年4月開院予定の加賀市統合新病院(石川県加賀市)は自治体病院では初の全室個室で計画されている。

 「これまで4床をベースに1床を設計していた。しかしこれからは1床のしつらえやプロポーションなどをきちんと考えていかないといけない」。病院建築に長年携わってきた山下設計の藤田衛氏はそう指摘する。

 個室を特別室とした表層だけの作り方ではなく、医療を提供する場としてのあり方が問われ始めている