驕るな自民党!日本医師会が激怒!復活した「利益誘導政治」医学部新設に群がる国会議員の厚顔 ▼族議員復権をウラで操る長老たちの思惑

2013.03.21

驕るな自民党!日本医師会が激怒!復活した「利益誘導政治」医学部新設に群がる国会議員の厚顔 ▼族議員復権をウラで操る長老たちの思惑
2013.03.31 サンデー毎日 


 野党の体たらくもあって自民党の勢いは日増しに強まっている。政権復帰を果たした当初は控えめだったセンセイたちの“我田引水”活動も激しくなってきた。
その姿は、まるで有権者が据えた“下野”というお灸の効果が消えかかっているように見える。自民党よ、驕るな!


 覆水盆に返らず――。
いったん破綻した蜜月関係は様変わりし、溝が埋まらないどころか広がっているようにさえ見える。

「長期政権が見込まれるほど勢いがあるから天狗になっているのか、それとも野党転落時に支援を渋ったことへの意趣返しなのか」

 日本医師会(日医)の役員がそう憤るのは、支持相手の自民党、とくに国会議員有志30人による「東北地方に医学部の新設を推進する議員連盟」だ。

 会長を務める大島理森前副総裁(衆院青森3区)をはじめ、東北選出や出身の議員が大半だが、なぜか鴨下一郎衆院議員や平沢勝栄衆院議員といった東京選出の議員まで加わっている。

 議連は2月27日、東日本大震災からの復興の象徴として、東北地方に大学医学部を新設するよう政府に要請する方針を正式に決議した。
5日前の22日には日医幹部を招いてヒアリングしたばかりだったが、「新設には医療現場から300人規模の医師を教員として引き揚げる必要が生じ、逆に医師不足が加速して地域医療が崩壊する」という反論には耳を貸さなかった形だ。

 中川俊男・日医副会長が訴える。

「医師不足は、医師の絶対数の不足と地域や診療科の偏在によるもの。
これまで被災地の大学医学部は定員を増やして対応してきました。
そこで進められている医師の教育や派遣を通じた地域医療支援を、国が財政面を含めて十分にバックアップしてほしい。
何より、自立して診療が可能な医師を養成するには10年以上かかります。
医学部新設を優先するより、政治主導で医師の偏在を解消すべきです」

 そもそも東北地方の医師不足は震災前から深刻だった。
それだけに日医の指摘は頷ける部分が多いだろう。
医学部新設がたとえ医師不足に効果があるとしても、実感するまで時間がかかるのは間違いない。
それに議連が主張する「復興のシンボル」になり得るのかも疑問だ。
震災と関連が薄い事業の数々が、復旧・復興予算として計上されていた問題も記憶に新しい。

 医学部新設に激怒する日医だが、いま自民党には強気を貫けない。
2009年に自民党が政権から陥落すると、民主党に擦り寄った“負い目”があるからだ。

日医の政治団体・日本医師連盟は、民主党に近い会長を選出。
10年の参院選では、投票の2カ月前に自民党現職の「推薦」を「支援」に格下げし、代わりに民主党新人を推薦した。
前出の日医役員が頭を抱える。

「自民党の政権復帰が濃厚になった昨年、日医連は横倉義武日医会長をトップに選出しました。
横倉氏は古賀誠・自民党元幹事長の後援会長を務めた人物で、日医側は自民党に詫び、再び連携相手に据えるメッセージを送ったわけです。
今年7月の参院選では、羽生田俊・日医副会長を組織内候補として自民党から擁立します。
ただ今の自民党は昔と違い、支持団体の主張を聞き入れなくなった。
著しく路線が違えば、士気が下がって選挙運動が緩むのに……。
本来なら怒鳴り込んでやりたいところですが、日医連は自民党を一度裏切った立場で、頭が上がりません。主従関係が完全に固まったと言っていい」

 自民党は日医との“主導権争い”で優位に立ったというわけだ。もっとも、自民党が強硬路線を採用するのは、何も日医に限った話ではない。農協の反対を押し切り、環太平洋パートナーシップ協定(TPP)への交渉参加に踏み切るのも同様で、「以前より支持団体との関係を軽視するようになった」(自民党ベテラン議員)表れかもしれない。


圧力で形骸化する文科省告示


 実は議連が果たそうとしている役割は、東北地方の復興がメーンではなさそうだ。
議連の本音を探る上で、ヒントが決議文に潜んでいるという。議連に参加している衆院議員が明かす。

「文部科学省は03年の告示で医学部新設の“凍結”を決めているため、議連は東北地方に限って特例と認めるよう、文科省に改正を求めています。
これがミソ。
一度でも例外を作れば、プレッシャーで方針を転換させた前例になる。
つまり事実上、告示は形骸化されるわけです。
東北以外では、同志社大(京都市)や国際医療福祉大(栃木県大田原市)、聖隷クリストファー大(浜松市)も医学部構想を打ち出している。
議連には多数の文教族議員が群がっていて、東北を皮切りに、なし崩し的に医学部の設置ラッシュに持ち込もうと画策しています」

“震災復興”を前面に押し出すのは、厚顔ぶりをカモフラージュする狙いがあるとの見立てだ。
それは、医学部新設の動きはかつての自民党政権下で権勢を振るった族議員と、利益誘導政治の復活を印象づける。
公共事業のバラマキを謳い、建設族と道路族の議員の高笑いが聞こえてきそうな国土強靱化計画と、本質は変わらないといえる。

  驕れる者、久しからず――。『平家物語』の教訓は、自民党にとって無縁のようだ