地域医療 壊れる TPP交渉表明で 富山県医師会長に聞く

2013.03.16

 

地域医療 壊れる TPP交渉表明で 富山県医師会長に聞く 中日新聞2013年3月16日

TPP交渉参加への懸念を話す岩城会長=富山市茶屋町で

安価な薬流入 産業も打撃


 TPPは工業製品や農作物などの“モノ”だけでなく、労働規制や医療など“サービス”の自由化も掲げている。
過疎や高齢化が進む北陸地方で今まで通りの治療が受けられるのか。
交渉入りに反対する富山県医師会の岩城勝英会長(69)は「慎重に交渉しなければ、医療崩壊もあり得る」と厳しい表情で指摘する。


 -なぜ交渉参加に反対なのか。


 規制緩和で海外の安い医薬品が入ってきた場合、富山のように薬業の盛んな地域への影響は大きい。
中央社会保険医療協議会(中医協)による薬の価格決定も、米国の介入を受ける可能性がある。


 また、小児科や産婦人科を中心に医師不足も深刻だ。病院が市場競争にさらされれば、高所得者が少ない地方の病院から倒れていくのは必至だ。


 -評価すべき点はないか。


 安価な保険商品や医薬品は、患者にとって魅力的。保険外診療が増えれば国の医療費も減る。
だが国民の医療格差は広がるだろう。
誰もが平等に医療を受けられるのは国民皆保険のたまもの。それが崩れる恐れがある。
医療分野に株式会社が参入したり、混合診療が全面解禁になったりしては制度が骨抜きになる。


 -なぜ株式会社の病院はいけないのか。


 日本では営利目的の病院の開設が制限されている。病院が株式会社になれば、株主に配当を払わねばならず、設備・人材面で投資の切り捨てを迫られる。

保険外診療で利益を出そうとする病院が増え、米国の安価な民間保険会社が一気に参入してくる。
すると、国が税金で保険制度を維持する意義が薄まり、公的な保険の適用範囲が狭まる恐れがある。低所得者が安心してかかれる病院がなくなってしまう。


 -日本の医療を守るための対策は。


 日本が他国と粘り強く議論し、皆保険を脅かされそうな局面では決して譲らないこと。
また、県民一人一人がこの問題をわが事と認識し、注目していくほかにない。

首相は誠実に訴え 自民・宮腰議員


 自民党TPP対策委員会で農水重要品目などの取りまとめを担当した党富山県連会長の宮腰光寛衆院議員は十五日夜、東京から空路で富山空港に降り立ち、安倍首相の会見について「首相は現在の日本の状況を踏まえ、これからの国際社会での行く方向を見定めて、自国の重要品目、国民皆保険制度を守らなければいけないと誠実に国民に訴えた」と述べた。