携帯電話とデジタル技術で途上国の生活に革命を起こす

2013.03.06

特別寄稿 Contribution 携帯電話とデジタル技術で途上国の生活に革命を起こす
2013.03.09 週刊ダイヤモンド



技術革新によって、最貧困層の人々の生活が改善する──。こう確信しているのが、マイクロソフトのビル・ゲイツ会長だ。現在は財団活動に専念する彼が、技術革新の将来像について語った。




ガーナでも進むモバイル母子医療


 デジタル支援医療、いわゆる「m(モバイル)医療」は、なかなか具体化してこない分野である。

優れたプラットフォームを構築し、医療システムのあらゆる関係者にその利用価値を納得してもらうことが困難だからだ。

一部の医療従事者が中央データベースに情報を送るのに携帯電話を使うとしても、他の者がその価値を認めていなければ、デジタルシステムは不完全なのだ。
そして、現行の紙ベースのシステムと同様に欠陥品なのである。

 筆者が目にした中で最も有望なm医療プロジェクトは、ガーナにおける母子医療に特化した「MOTECH(The Mobile Technology for Community Health)」である。

携帯電話を手にした地域医療従事者が村々を訪れ、新たに妊娠した女性についての重要な情報をデジタルフォームで送信する。

その後システムから、産前ケアなどに関する注意といったメッセージが毎週妊婦に対して送信される。

システムからは保健省にもデータが送られ、国民の健康状態に関する正確かつ詳細な実像を政策担当者に提供する。

 AIDSや結核、マラリア、家族計画、栄養改善、その他グローバルに見られる医療問題に取り組んでいる人々も、同じプラットフォームを用いることができる。

そうやって、一国の医療システムのあらゆる部分が情報を共有し、リアルタイムに適切な対応を取る。

夢のような話だ。

ただし、現場の担当者がデータを入力し、保健担当省庁がそれに基づいて行動し、患者が自分の携帯電話で受信した情報を活用しなければ、こうしたシステムはうまくいかない。

 プロジェクトが軌道に乗ったと私が確信したのは、私たちと提携しているMOTECHの関係者たちが、面倒なネットワークコストやユーザーインターフェースの簡素化について語り始めたときだった。

アプリケーションは実際に現場で使われていた。

最も困難な課題は、システムを紹介することだった。つまり、システムの価値はすでに十分に証明されており、従来のシステムに戻るよりも、使いこなしつつ、問題が発生するたびに解決していくようになっていたのである。

こうしたデジタルな仕組みは現在インド北部など他の地域にも広がっている。

 10年前、人々はこうしたことがすぐに実現するだろうと言っていた。

実際にはそうはならなかった。それは単に、「駒」がそろっていなかったからだ。今、それが実現しつつある。

 あるアプリケーションが多くの場所に導入されるには10年の歳月を要するかもしれない。

だがその勢いは増していくだろうし、その過程で私たちは学んでもいく。長期的に見れば、結果として、期待以上とは言わずとも、私たちが望んでいたのとまさに同じような変革が生じるだろう。

人々が本当にデジタル技術による能力を与えられれば、最終的に人々は、自らその能力を使って革新を始め、既存のソフトウエア開発業界が考えもしなかったようなソリューションを構築するようになるだろう。

翻訳・沢崎冬日(エァクレーレン)

ダイヤモンド社