歴史は繰り返すか? 旭中央病院

2013.03.05

 

『歴史は繰り返すか? 旭中央病院』

「医」の中の組織、脱皮を医療再生 日本経済新聞 2001年8月9日より連載
第4部 変われるか病院
(1)「医」の中の組織、脱皮を



 病院が改革を迫られている。医療に対する患者のニーズが高まる一方で、収入源の診療報酬は今春から引き下げられ、手をこまぬいていれば経営基盤が揺らぎかねない。
厳しさを増す環境下で、安全かつ患者に分かりやすい良質な医療をいかに実現するか。
生き残りをかけた現場の取り組みを追う。


『二重構造 』
 

「医師を引き揚げさせてもらいます」。

3年前、国保旭中央病院(千葉県旭市)の次期病院長に内定していた村上信乃医師は、大学病院の教授の言葉に耳を疑った。
 
40年以上務めた前院長が病気で引退すると、麻酔医を派遣する2つの大学病院が相次いで引き揚げを通告してきたのだ。

麻酔医抜きでは手術はできない。
何度も翻意を求めたが、取り付く島もなかった。

前院長は日本病院会の会長などを歴任した医療界の重鎮。
「教授は彼との関係で医師を出してくれていただけだった。
人事を大学医局に頼ってきた危うさが出た」と村上院長は振り返る。

 組織のトップに人事権がないという、こうした一見異常なケースは、大半の医師が出身医局の教授の指示で関連病院を転々とする日本では珍しくない。
医師たちは教授の顔色をうかがい、病院への帰属意識は薄い。

「二重命令系統」の弊害は勤務態度にも表れる。
病棟での喫煙、連日の遅刻……。済生会熊本病院の須古博信院長は、ベテランの医師でも平気で就業規則を破る実態に危機感を感じた。
「人事管理をきちんとしなければ病院間の競争に生き残れない」

そこで7年前、住友金属工業から営業部門の管理職を事務長にスカウト、二人三脚で病院改革に乗り出した。
インフォームド・コンセント(十分な説明と同意)を徹底、患者の評判も年俸や賞与に反映させる人事評価を導入した。

「医療に評価はなじまない」などと反発され、診療部長が辞表を出す一幕もあったが、職員向けの説明会を重ねて乗り切った。

「病院には理念や診療方針を実践する現場指揮官が必要で、人の扱いにたけた企業出身の事務長は適役だ」と須古院長は語る。

 病院経営を学んだ人材がトップに就く欧米と違い、日本は医師が就任するよう法律が義務づけている。

人事管理や患者サービスが不徹底なのも、病院が医療の世界に閉じこもってきたためといえる。



[2002/1/21 日本経済新聞]