庄内医療連携座談会 庄内は一つ、連携強化へ

2013.01.15

 

庄内医療連携座談会 庄内は一つ、連携強化へ
2012.06.07山形新聞  


 人口減少社会の本格到来や少子高齢化の進行など近年、地域医療を取り巻く環境は大きく変化。
高齢化や医療技術の高度化に伴い、医療費は年々増え続け、医師、看護師の不足も深刻化している。
多様化する県民の医療ニーズに応え、充実した医療を提供し続けるには、地域の医療資源を有効活用し、より効率的な医療システムを再構築していくことが不可欠だ。
誰もが、いつでもどこでも適切な医療サービスを受けられる体制を確立するため、庄内地域の医療連携をどう築いていくか。関係者に課題と今後の展望を聞いた。


【現状と課題】厳しさ増す病院経営-投資重複避け将来に備え

 -まず庄内地域の医療の現状と、抱える課題をお聞きしたい。


 栗谷 公立病院である日本海総合病院も鶴岡市立荘内病院も、病院経営を地方交付税に依存している部分が大きい。

今後、国の財政赤字が拡大した場合に、地方交付税の行方が気掛かりだ。
緊縮財政が不可避になったときに備え、庄内の地域医療が生き残るためのモデルを早急につくっていく必要がある。

 酒田地区は、日本海総合病院と医師会との医療連携が比較的うまくいっている。
県立病院と市立病院が統合し、それぞれの病院では互いに不足していた医師の数が合算されたほか、新たな診療分野の医師を迎えることもできた。経営面でも統合のメリットは大きかった。

 課題は、高齢化、医療の業務拡大に備え、これからの投資をどう進めていくかだ。投資の重複を避けるためにも、2次医療、3次医療を庄内全体で進めるべきだ。
北庄内、南庄内の中核病院となっている日本海総合病院、荘内病院は運命共同体で、どちらかが立ち行かなくなれば庄内の地域医療は大崩壊してしまう。
そうならないため、今から備える必要がある。


 三科 一番の課題はやはり医師不足。人口10万人当たりの医師数(2010年12月末現在)を見ると、庄内地域は176・4人で県平均221・5人、全国平均230・4人を下回っている。

酒田地区の方が鶴岡地区よりも医師の数が多いが、両地区とも県平均と比べ人口10万人当たりで40~50人は少ない状況だ。
少ない医師をどう増やしていくか、あるいは少ない医師でどう医療水準を確保していくかを考えなければならない。

 鶴岡地区では、救急医療について「地域連携パス」の導入などにより、医療施設の機能分担が進められているが、私個人としては全国的に外科系の新規参入医師が少なくなってきていることを懸念している。
このままでは10年後、鶴岡地区でがんの摘出手術ができなくなるのではないかとさえ心配される。


 本間 2008年4月に県立日本海病院と市立酒田病院を再編統合し、地方独立行政法人山形県・酒田市病院機構が誕生した。
二つの医療資源が統合したメリットを今、地域の方々が感じている。二つの病院が共存していたならば医師の数も今ほど確保できず、市民への医療サービスの提供もスムーズにはなっていなかっただろう。

 酒田地区では11年4月に酒田地区医療情報ネットワーク協議会を立ち上げた。
電子カルテを使い、日本海総合病院などからの開示情報を46診療所で共有している。登録患者数は1年間で3千人を超えた。
また、病院機構と医師会、酒田市が協力し、日本海総合病院の中で、夜間の急病に対応する地域連携平日夜間診療を実施しており、日本海総合病院を中核にスムーズな医療連携が図られていると言える。

 課題は看護師不足。酒田、鶴岡両地区医師会のアンケート結果で、診療所の約4割が看護師、准看護師の不足を感じており、地域内で絶対数が不足している。背景には県内、特に庄内における看護師や准看護師の養成施設が少ないことが挙げられる。
Uターン組の定着率向上などを含め、抜本的な取り組みが急務だ。


 三原 鶴岡地区ではここ数年、在宅医療の充実に力を入れている。
訪問看護や訪問リハビリ、訪問入浴を行う在宅サービスセンター、介護老人保健施設「みずばしょう」、ケアプランセンター「ふきのとう」、地域包括支援センター「つくし」、湯田川温泉リハビリテーション病院など、医師会が介護系施設を運営。08年度からは「緩和ケア普及のための地域プロジェクト」の地域に選定され、11年度からは在宅医療連携拠点事業室を開設して多職種の連携を支援している。

 課題となっているのは病院内科医の不足と、救急医療を担う病院勤務医の疲弊。高齢化が進むにつれ、在宅、施設での「看(み)とり」をどうするか、医療と介護の連携をどう充実していくかも考えていかなければならない。


【克服に向けた対策】在宅の拠点づくり必要-地域医療の集約一つの手法

 -課題克服のため、具体的に取り組んでいることがあれば紹介してほしい。


 栗谷 厚生労働省の推計では、2015年に「ベビーブーム世代」が前期高齢者(65~74歳)に到達し、25年には高齢者人口がピークになる。
一方、日本国債は、わずかな金利の上昇で利払い負担が大幅に増加するリスクが高まっており、債務残高の増加や一般会計収支へのしわ寄せが懸念されている。行政も財政難に苦慮しているが、地域医療も国の行く末と財源を見据えながら対策を考えないといけない。


 三原 効率化という意味では、在宅医療はとても非効率で、患者にどこかに集まってもらい、そこに訪問看護師や介護士などが訪れる仕組みにしないと合理的なケアはできない。
今の在宅医療システムは限界があり、そこでの「看とり」は増えていかないだろう。
そうなった時、まちのどこかに在宅の拠点をつくり、給食や介護などのサービスを提供することを考えなければならないだろう。
増加する空き家を活用するのも一つの方法だ。


 中目 日本の医療費はこれから毎年1兆円ずつ増えていく。この財源をどう確保していくかは国全体で考えなければならない。
これまで医療費は聖域化されてきたが、財源不足が深刻化すればそうはいかない。
医療費削減には、地域医療の集約も一つの手法になるだろう。


 本間 酒田には今、お産ができる医療施設が日本海総合病院を含め二つしかない。
1年間に庄内で出生する約2600人のうち7割は鶴岡市内の産婦人科医を利用している。
交通アクセスが便利になり、鶴岡が庄内一円の産婦人科、新生児医療を担っているのが実態だ。

 医師が各専門医に細分化されている現在、一つの病院で全ての診療科目をそろえるのは不可能に近い。
県立日本海病院と市立酒田病院が統合する前、われわれ開業医などは、それぞれ専門医に患者を紹介し、対応してきたが、これと同じように日本海総合病院と荘内病院を中核に庄内一円で医療ネットワークを構築できないか。病院を経営する上での課題はあるが、県がスーパーバイザーになって実現を目指す必要がある。