「山形県医師会副会長を務める日本海総合病院(酒田市)の栗谷義樹理事長は、中小規模の病院を統廃合し、医師が多くの症例を経験できる環境づくりが重要だと指摘する。

2013.01.25

 

「山形県医師会副会長を務める日本海総合病院(酒田市)の栗谷義樹理事長は、中小規模の病院を統廃合し、医師が多くの症例を経験できる環境づくりが重要だと指摘する。

医師の技量を上げるには手術や診察を繰り返すほかないが、県内は中小の病院が乱立していて扱う症例が少なく、若手医師から敬遠されるという。

 栗谷理事長は「人材は成長できる環境に集まる。拠点病院の医師が充実すれば、へき地医療にも波及効果が生まれる。県には旗振り役として大胆な決断をしてほしい」と話している。」




(吉村流 2期目の課題:1)へき地医療 続く深刻な医師不足 /山形県
2013.01.24朝日新聞  


 雪が舞う1月中旬の平日。戸沢村古口にある村営の村中央診療所に、幼子を抱えた母親や杖をついた高齢者らが続々と集まってきた。

 人口約5千人の村に診療所は1カ所だけ。多い日は100人以上が訪れる。村内5地区が「準無医地区」で、本数がまばらなバスで遠方から訪れる患者も少なくない。車で30分ほどの距離に県立新庄病院があるが、とくに高齢者は移動手段がなかったり、長い待ち時間が負担になったりするため、診療所が頼りという人が多い。

 村出身の渡辺孝弘医師(58)が診療所を構えたのは24年前。当時は新庄病院の勤務医だった。「本音を言えば、あまり来たくなかった。大きな病院で経験を積みたかった」。しかし当時の村長らに半年間口説かれ、村に戻ることを決めた。専門は消化器科。皮膚科や小児科の知識は独学で身につけた。夜間は電話を自宅に転送し、24時間体制で診療したこともある。

 来年夏に還暦を迎える。「そろそろ後任を探さないといけないが、教育過疎地でもある村に子を持つ医者が来てくれるとは思えない。雪国の生活にもなじめるのか」。先は見えない。

 県内の人口10万人あたりの医師数(2010年末現在)は全国28位の221・5人で全国平均の230・4人を下回る。地域別で全国平均を上回るのは村山地域(278・1人)だけ。最上地域(137・6人)は特に医師不足が深刻になっている。

 09年のまとめで、県内の無医地区と準無医地区は4町村9地区。県は環境改善を目指しているが、地域の拠点病院に医師を回すので手いっぱいなのが実情という。

 県地域医療対策課は「へき地医療の改善には医師の絶対数を増やすしかない」と言う。鍵は「山形大卒の医師の県内定着」「県外に出た医学生の呼び戻し」「医師志望の高校生の増加」の3点だ。

 県は10年、山形大と事業連携を結び、本格的な医師確保対策に乗り出した。

 「山形では最先端医療が学べない」との不安を取り除くため、卒業後も専門医研修が受けられる特別講座を山形大に設置。県内で一定期間勤めれば返還が免除される奨学金も設けた。県内外の医学生を対象に病院ガイダンスを催したり、高校生向けの医療体験セミナーを行ったりもしている。

 だが取り組みの成果が見えてくる時期は不透明だ。「数年は我慢の時期が続く」と同課は話す。

 県医師会副会長を務める日本海総合病院(酒田市)の栗谷義樹理事長は、中小規模の病院を統廃合し、医師が多くの症例を経験できる環境づくりが重要だと指摘する。医師の技量を上げるには手術や診察を繰り返すほかないが、県内は中小の病院が乱立していて扱う症例が少なく、若手医師から敬遠されるという。

 栗谷理事長は「人材は成長できる環境に集まる。拠点病院の医師が充実すれば、へき地医療にも波及効果が生まれる。県には旗振り役として大胆な決断をしてほしい」と話している。(遠藤隆史)

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 吉村知事が無投票で再選を決めた。県民から高い支持を集め、県議会にオール与党状態を築いてスタートする2期目。知事が掲げる「あったかい県政」が積み残した課題を探る。