医学部受験は千差万別、 子どもの願いをかなえるためには

2013.01.15

 

医学部受験は千差万別、
子どもの願いをかなえるためには (2013・1時事ドットコム)


 今、大学の医学部(医学科、以下同じ)が熱い視線を集めている。医師不足解消のための政府による規制緩和で医学部の入学定員が過去最高となっていること、長引く不景気により安定した職業として医師の人気が高まっていること、生命や倫理観を重視する傾向が若者の間に広がっていることなどを背景に医学部の受験者が増加しているからだ。
子どもが医学部を目指すとき、保護者はどう対応したらよいのだろうか。

なぜ、今、医学部が注目されているのか


 2012年度の4年制以上の大学進学率は50.8%(浪人を含む)で、高校卒業者の2人に1人が大学に進学する実質的な「大学全入時代」を迎えているものの、少子化による18歳人口の減少と大学進学率の頭打ち傾向などにより、大学志願者の総数は年々減少している。

これに対して医学部の志願者数は、予備校などの調査によると10年度が約11万人、11年度が約11万5000人、12年度が約12万人で、実に2年間で1万人も志願者が増えている。
現在、いかに医学部が人気を集めているかが分かるだろう。

 では、なぜ医学部に人気が集まっているか。
その第一の理由は、医学部の入学定員の増加だ。
医学部は全国で国公私立合わせて79校(防衛医科大学校を含めると80校)あるが、政府は医師の供給過剰を防止するため医学部の入学定員を2007年度まで毎年7625人に抑制していた。
ところが、医師不足が全国的に深刻な問題となったため、政府はそれまでの定員抑制方針を緩和し、臨時措置として08年度から入学定員の増加に踏み切った。

これによって医学部の入学定員は07年度の7625人から12年度は8991人にまで増え、過去最高となっている)。
さらに文科省と厚生労働省は、13年度から19年度までの7年間についても暫定的措置として、「十分に教育環境が整った大学」に対して入学定員の上限(現行125人)を超える定員増を認めることにしている。
これにより医学部の入学定員は19年度まで増加することが確実で、医学部入試の門戸はかつてないほど広くなっているというわけだ。

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第二の理由としては、不況など社会的事情が挙げられる。
不況になると専門的資格が必要な職業に人気が集まるのが常だが、最近は弁護士や公認会計士などの代表的な資格職業でも「営業力」がなければやっていけないほど厳しいというのは周知の事実だ。
その中で医師は、資格さえ持っていれば比較的に安定した高所得が得られる職業として注目を集めている。

このため、「これまでなら東大、京大を受験するような学生が、医師になるため地方の国立大学医学部を受験するケースが増えている」(予備校関係者)という。
実際、東大や京大を卒業して一流企業に入社しても、将来どうなるか分からない。
ならば、医師を目指してどこでもよいから医学部を受験しようという学生が増えているようだ。

 第三の理由としては、先に挙げた第二の理由と矛盾するようにも見えるが、社会貢献など利益よりも生きがいを重視する傾向が若者の間に広がっていることもあるだろう。
医師は、文字通り患者の生命を預かる仕事であり、知識や技術と同時に高い倫理観が求められる職業だ。地域医療に貢献したいという若者も少なくない。
さらに、他学部の学費が値上げされる中で、医学部の学費を据え置いたり、値下げする大学もあり、以前に比べると私立大学医学部の学費が相対的に安くなっているのもポイントの一つのようだ。

 このほか、第四の理由として予備校関係者らが指摘するのが、現役医師の子どもたちの多くが大学受験期に差し掛かっているということだ。
1970年代に医師の養成拡充のため医学部の新設ラッシュがあり、現在80校ある医学部のうち34校がこの時期に新設された。
当時、大学に入学した現役医師の子どもたちが大学に進学する年齢となっており、病院や医院の後継者となるため医学部進学を求められているのだという。

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受験勉強も国公立型と私立型では大きな違いが


 医学部は、入学定員の増加により過去最高の広き門となっている。
ならば、子どもが医学部を受験したいと言いだした保護者、あるいは子どもに医学部を目指してほしい保護者は、それで安心してよいのだろうか。
実は、そうはいかないようだ。医学部専門予備校であるメディカルラボの山本雄三本部長は「入学定員が増えても、それ以上に志願者が増加しています。
つまり、逆に医学部受験は難しくなっている」と説明する。

 同時に保護者にとっての問題は、その多くが医学部入試の実態を理解していないことだ。
どんなに学生時代成績が良かったとしても、本気で医学部を目指したという保護者は少ないだろう。
ましてや医学部を実際に受験したことのある者となるともっと少ないはずだ。
一方、現役医師の保護者は、自らの受験経験があるので有利かというと、そうでもないらしい。
ある予備校関係者は、「1970年代あたりは、偏差値50台でもお金があれば私立大学医学部に入れたかもしれないが、今はそんなことは絶対にない。
自分が受験した当時よりも医学部入試は格段に難しいということを理解できていない保護者がいる」ともらす。

 では、保護者は医学部受験に向けて、子どもをどうサポートしたらよいだろうか。
メディカルラボの山本本部長は「遅くとも高校に進学するまでに医学部志望を決定し、さらに国公立大学と私立大学のどちらを受験するかを決められたら良い」とアドバイスする。
その理由は、医学部受験は他学部よりも特殊であり、かつ、国公立大学と私立大学では受験勉強が大きく違ってくるからだ。
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国公立大学の医学部の場合、大学入試センター試験と個別大学ごとの二次試験という流れは同じだ。

センター試験は当然のこと、二次試験の学科試験問題も他の学部と共通なので、通常の試験勉強と同じで問題はないようにみえる。
しかし、医学部受験者は学力がもともと高い者ばかりであるため、同一問題でもより高得点が必要となる。逆に言えば、わずか1点のミスが致命傷になりかねない。
ともかく苦手科目をつくらないことが国公立受験のポイントだ。
そのためには、どれだけ早いうちから効率よく勉強して対策を取るかがカギとなる。

 一方、私立大学の場合、試験問題の内容や傾向は、それこそ大学ごとに大きく異なる。
受験生全体のレベルが高いだけに、出題傾向の全く異なる私立大学を併願したとしたら、両方合格する可能性はかなり低いといえる。

例えば、順天堂大学の入試は、英語が200点満点に対して数学と理科は各100点満点なので、英語が得意ならば有利だ。

また、杏林大学のように英語の試験で医学論文や医療関係の記事が出題されるようなところもあるなど、大学ごとに入試の傾向は大きく異なる。

また、他学部と異なり医学部受験には面接と小論文が必須となっており、この対策も迫られる。
「国立大学医学部には合格したが、私立大学医学部は落ちたというケースもよくある」(山本本部長)というほどだ。
できるだけ自分の得意科目が活かせるところを選び、併願では出題傾向が似ている大学を選ぶというのが私立受験のポイントだという。



 重ねて言うが、医学部受験はやはり難関だ。
いかに早いうちから子どもの志望を決める支援ができるか、また、受験対策を国公立型か私立型のどちらにすべきかの相談に乗ることも重要だろう。
そのためには、医学部向けの予備校などの専門家からアドバイスをもらうのも有効な方法かもしれない。また、各大学の出題傾向の分析にも専門家の力が欠かせないようだ。