神栖市の地域医療(上) 支援策

2013.01.09

神栖市の地域医療(上) 支援策
2013.01.06 茨城新聞社

■助成で医師16人確保 小児救急、24時間体制に

人口10万人当たりの医師数が全国46位(166.8人)と医師不足が大きな問題となっている本県で、2008年度から独自の医師確保支援事業に乗り出した神栖市は、5年で常勤・非常勤医師計16人を確保した。

筑波大と連携した事業も同時展開し“医師の卵たち”に将来的な同市での医療従事を懸命にアピールしている。
一方で、市内の二次救急医療病院の医師減少が止まらず医療過疎が加速する恐れも出ている。地域医療をめぐる同市の取り組みや課題を探った。(鹿嶋支社・松崎亘)

市健康増進課によると、同市を含む鹿行地域の医師数は10年12月末現在で、人口10万人当たり96.4人と全国平均230.4人の半数以下だ。

九つある本県の二次医療圏の中でもワースト2位。トップのつくば(354.5人)の3割程度に低迷している。

こうした現状に歯止めをかけようと、同市は08年、市内の病院や診療所が常勤医師や小児科・産婦人科の非常勤医師を新たに雇用した場合、1人に付き最高1500万円の支援金を助成する制度を創設した。

同市の鈴木誠副市長は「もともと、医師の数が少ないところへ2004年に導入された新医師臨床研修制度が追い打ちをかけた。地域医療に空白が起きかねない事態に直面する前に先手を打つ必要があった」と話す。

市の公的支援により事業開始からこれまでに常勤医師10人、小児科非常勤医師6人を確保した。
また、09年度からは3カ年度にわたり、経営難に陥る可能性のある病院に対して、年間1億円を限度額として助成する財政支援も行ってきた。

こうした取り組みの成果は、夜間や休日の子どもの急患に対応する小児救急医療の24時間体制確立に結び付いた。
知手中央の神栖済生会病院は、小児科常勤医師3人(現在は4人)が確保されたことにより11年6月から週5日間の小児救急医療をスタート。
入院治療を要する中等症までの小児患者の治療が可能となった。

市健康増進課の卯月秀一課長は、「市内では年間千人近くの子どもが生まれるにもかかわらず、受け皿となる医療機関が少なかった。
小児救急の空白地帯を解消し、子育て世代の不安を少なからず解消できたのではないか」と胸を張る。

金銭的な支援のほかにも、地域医療の重要性をじかに感じてもらおうと、筑波大の医学生たちを取り込んだ事業も展開している。
その一環として、神栖済生会病院に10年10月、地域医療の研修の場となる「神栖地域医療研修ステーション」を設置した。

地域医療の現場に密接に関わり、実践的な診療能力を習得できるメリットがあり、年間90人程度が市内で研修を行った。
指導医は筑波大付属病院から派遣されているが、本年度は指導医不足のため未実施となっている。
市は来年度からの事業再開に向けて関係機関に要望を行っているという。

一般市民や児童生徒らを対象とした健康増進教室や禁煙教育にも医学生たちの参加を促し市民と触れ合う機会を創出している。
卯月課長は「地域を知ってもらうことで地域医療を志す医師を増やし、市内での医療従事を将来の選択肢の一つにしてほしい」と期待を寄せている。