徳洲会医療、岐路 へき地守る理念、事件で痛手

2014.01.15

徳洲会医療、岐路 へき地守る理念、事件で痛手
2014年1月12日朝日新聞
  
 医療法人「徳洲会」グループが揺れている。昨年、公職選挙法違反の罪で幹部らが相次いで起訴され、猪瀬直樹前東京都知事への5千万円提供問題も、東京地検が捜査中だ。

 医師や職員の流出を防ぎ、理念に基づく、へき地での手厚い医療を続けられるのか。

  ■人材

  「申し訳ない。
 落ち着いた研修はできないと思い、大学病院に行くことにします」。
 東日本の病院に昨年10月、今春採用が内定していた研修医2人から、相次いで断りの連絡が入った。

  別の病院では先月、看護師約150人中、50人近くが、今春までの「退職」希望を出した。
 看護師の病院間異動は珍しくないが、それでも例年より20人ほど多い。
 採用予定者は十数人どまりで、院長は「まさに事件の影響。病棟の一部閉鎖も考えざるを得ない」。

  関西地方で今年開院予定の病院でも、採用予定だった医師数人から次々と辞退の連絡があったという。

  徳洲会は、徳田虎雄前理事長(75)が1973年に大阪府松原市に最初の病院を開設。「生命だけは平等だ」を理念に掲げ、離島へき地医療や24時間救急受け入れなどで成長した。既存の病院との衝突で、医師会とも対立。
 大学病院の医局制度に頼らず、独自に医師を集めてきただけに、事件の影響は大きい。

  「けっして高くない給料でも、職員は理念の下に集まっていた。
 『選挙のための医療』のイメージがつき、それも台無しだ」。病院幹部は今後を不安がる。

  徳洲会は、高度医療を実現する大規模病院が都市部を中心に複数ある。
こうした病院から、若い研修医を「離島へき地研修」として2カ月交代で、へき地の病院に送り込んできた。

  奄美諸島の最南端、人口約5500人の与論島。
 唯一の病院が、与論徳洲会病院だ。
 常勤医は2人だが、常に3人の研修医が「実動部隊」として診察にあたる。
こうして24時間オープン、救急対応を実現した。

  グループ幹部は言う。「手術が必要なら、大病院から外科医や麻酔科医も駆けつける。
だからこそ、離島でも最先端の医療が受けられる。でも医師が集まらなければ、それも無理だ」

  ■資金

  昨年9月に事件が発覚した後、主要取引銀行から徳洲会に文書が届いた。

  「今回の件で、金融機関が最も懸念するのは、人材の流出とグループの分断です」。
そこには、虎雄前理事長の一族支配からの脱却を望む文言が並ぶ。

  「すでに同族企業としての状況をはるかに超え、(一族は)公共的な使命も担う病院グループ経営には携わるべきではありません」「政治色をまとった負の遺産も大きく、早期の処理が望まれます」

  徳洲会グループは今後2年間で、大規模病院の建て替えや新築が10件近く予定されている。
へき地の小規模病院でも建て替えが必要な時期を迎える。

  グループ幹部は言う。
 「小さな病院でも銀行融資を受けられるのは、グループの信用が背景にあるから。
 執行部は過去の過ちを認め、信頼回復への道筋を早く示して欲しい」

  ■組織

  先月22日、事件後初めて、徳洲会グループの全国の病院長や看護部長らが東京都内に集まった。

  「徳田ファミリーから独立しなければならない」

  ある院長は、医療法人の最高機関「社員総会」に今も、虎雄前理事長が名を連ねている点に異議を唱えた。しかし、執行部は受け入れない。
 「徳洲会をつくり上げた徳田虎雄には敬意を忘れないで欲しい。
 追い出す根拠がどこにあるのか」。押し問答が続く。

  組織内には「事件後に理事長を退いた後も、『院政』が敷かれている。
 徳田家中心の法人運営が事件の原因なのに」(ある病院長)との不満がくすぶる。

  徳洲会は全国の66病院を始め、介護施設などを運営する10以上の医療法人の集合体だ。
 「『徳洲会』の看板を下ろしたい」(同)との声も上がる中、「別の医療グループが、都市部の優良病院を買収しようとする動きも出始めている」と話す徳洲会関係者もいる。

  へき地はさらに過酷だ。徳洲会では、CTやMRIなどの先端医療機器を一括購入して価格を抑え、へき地の病院にも導入している。
 離島の病院職員は「グループが一枚岩でないと、患者さんも心配する」と語る。