難聴の研修医 夢へ奮闘 十和田中央病院・今川さん 「手話使える人に医師になってほしい」友人の言葉が励みに

2014.01.11

難聴の研修医 夢へ奮闘 十和田中央病院・今川さん 「手話使える人に医師になってほしい」友人の言葉が励みに
2014.01.09 東奥日報社


 十和田市の十和田市立中央病院で、聴覚障害がある今川竜二さん(27)=岡山県出身=が研修医として働いている。同病院などによると、聴覚障害のある医師は全国的に少ないが、研修では手話通訳士を介しながら指導医や患者との意思疎通を図っている。
今川さんは「聴覚障害がある患者さんのためになれる医師になりたい」と、一歩一歩夢に向かっている。

(土屋実伽子)

 今川さんは先天性の「感音性難聴」で音がゆがんで聞こえ、正しく聞き取ることが難しい。
難聴の度合いは聴覚障害の中で最も重度とされる障害等級2級。
音だけで相手の話を理解することはほぼ不可能だという。

 幼いころに3歳上の兄と読んだ手塚治虫の漫画「ブラックジャック」を読んで、医師にあこがれるようになった。ただ、以前は医師法上、聴覚や視覚に障害があると医師免許が与えられなかったため、一度は医師を目指すことを諦めた。
転機が訪れたのは高校生だった2001年。法改正があり、視覚や聴覚に障害があっても医師になることが可能になった。

 大学の医学部を目指し、学校での授業以外に1日5時間勉強した。
「高校の先生には法律が変わっても大学が受け入れてくれるかどうかと心配された」。
それでも「なんとかなる」と希望を捨てず、見事、筑波大学医学専門学群に合格した。

 大学入学後も苦労は続いた。
病棟実習では患者に「ほかの耳が聞こえる医師に代えてほしい」と言われ、落ち込んだ。
そんな今川さんを励ましたのは聴覚障害のある友人だった。「手話を使えるあなたのような人に医師になってほしい」

 その言葉で、健常者と同じようなコミュニケーションはできなくとも耳が聞こえない人とコミュニケーションができる強みがあると気づき、「耳の聞こえない人のためになれる医師になりたい」と考えたという。

 13年3月、医師国家試験に合格した今川さんは、祖父が本県に住んでいたことや、じっくり学ぶことができる研修体制などから、十和田市立中央病院を研修先に選んだ。同年4月から地域医療の現場に立っている。

 同病院では、研修医が2年間かけて病院の全ての診療科をひと通り回る。今川さんは昨年12月まで、幅広い疾患に対応する総合診療科で研修。
今年1月からは外科に移った。東京在住の手話通訳士山本麻衣子さん(44)を介して指導医から診療の仕方を学んだり、入院患者から体調を聞いて治療法を検討したりしている。

 12月17日には、同市のNPO法人が主催する市民と医師との勉強会で講演。聴力に関する参加者の質問に「耳に負担を掛けない生活を」と答えるなど交流を深めた。
日々充実しているという今川さんは「患者さんの話をしっかり受け止められ、大好きな子どもたちを守れる医師になりたい」と抱負を語る。

 今川さんの受け入れを決めた同病院の丹野弘晃院長は「病院ができることをして今川君を応援していきたい」と見守っている。