臨床研究疑惑の徹底解明を 製薬大手ノバルティスファーマの高血圧症治療薬をめぐる臨床研究疑惑が新たな段階を迎えた。

2014.01.10

臨床研究疑惑の徹底解明を 製薬大手ノバルティスファーマの高血圧症治療薬をめぐる臨床研究疑惑が新たな段階を迎えた。(日本経済新聞 1・10)


厚生労働省は9日、改ざんされたデータに基づく研究論文を不正に広告に利用した疑いがあるとして、薬事法違反(誇大広告)の容疑で同社を刑事告発した。

 刑事告発は厚労省による行政調査の限界を示す。臨床研究に携わった大学や製薬会社、学会など医療関係者が自らの手で疑惑を解明できなかったのは極めて残念だ。

 捜査当局には再発防止につながる徹底した真相解明を期待する。
医療界には製薬企業と大学などの研究者の癒着を排し、自浄作用を高めるよう強く求めたい。

 問題の臨床研究は京都府立医科大学など5大学が個別に実施、ノバルティス社の薬が血圧降下のほかに、脳卒中や狭心症の予防にも効果があるとした。

これらの研究のデータ解析に同社の社員(昨年退社)が身分を隠して関わりデータを改ざんしたと疑われている。

 ノバルティス社と元社員は解析に携わったことは認めたが、改ざんは否定する。

疑惑の調査にあたった厚労省の委員会も、同社が「会社として関与していた」と指摘したものの、改ざんした人物を特定できていない。

 仮に元社員による改ざんがあったとしたら、医師主導の研究の下、大学側が管理すべきデータをなぜ元社員が操作できたのかが問題になる。
大学の管理責任も厳しく問われねばならない。

 ノバルティス社は研究論文を宣伝に使い、この薬を年間約1千億円販売する一方で、臨床研究を手掛けた大学に多額の「奨学寄付金」を払っていた。
金銭で臨床研究がゆがめられた疑いが濃い。

 過度な効能をうたった宣伝によって、製薬企業間の公正な競争が阻害され、患者や健康保険が余分なお金を支払った可能性も高い。

 奨学寄付金など産学間の不透明な慣行を排し、研究協力の仕組みを透明化することが急務だ。
臨床研究の質の確保に何らかの監視の仕組みが必要だろう。