崩壊する準備は整った-医療崩壊の第2章が始まる

2014.01.15

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崩壊する準備は整った-医療崩壊の第2章が始まる

つくば市 坂根Mクリニック
坂根  みち子

2014年1月14日 MRIC抜粋

・・・2)労働環境
医療体制を維持するのに必要な人件費は診療報酬に反映されなくてはいけない。2013年2月奈良県立奈良病院の産婦人科の医師たちの裁判でも判決が出ているが、今回の改定ではそれもスルーした。

ほとんどの病院はブラック企業である。
医療界では日勤-夜勤-日勤という過酷な連続勤務が常態化している。
全国の医療機関は今や戦々恐々であろう。
勤務医が訴えれば夜勤代を払っていない病院側が負ける。

でも、その分の賃金を払えば病院は倒産する。
また労働基準法違反を是正するためには交代制勤務が必要であり医師を増やさなくていけないが、大枚はたいて医師を引き抜くのも、病院の魅力で医師を引き抜くのもいずれも生易しいことではない。
今回国はこの問題の是正に動かなかった。各医療機関の経営者は勤務医がジョーカーを切らないよう祈るのみということになる。


3)医療事故調査制度

福島県立大野病院事件で産科医療が崩壊し始めたのが2006年だった。

茨城県でも産科のある医療機関は年々減少し、つくば市では現在3か所しかない。

少子化対策が叫ばれながらいざ子供を産もうとするときに産むところさえない現状に直面し、子を産もうとする夫婦やその親たちは茫然としている。
 なぜこんなことになったのか一般の人は知る由もない。


大野病院事件では出産時の妊婦死亡に対して2年も経ってから突然医師を逮捕した。

医師が手錠をかけられ逮捕されその映像がTVで流された。

発端は、遺族に補償金を取りやすくさせるために主治医の意に反して書かれた医療事故報告書だった。

病院も県も、医師の逮捕で表彰さえされた警察も誰しも自分たちの犯した罪に気付かなかった。

医師は無罪になったが、この事件により多くの産婦人科医が産科から手を引き、静かに医療崩壊が始まった。



次の通常国会で法制化される医療事故調査制度は、死因不明社会日本において、診療に関する死だけ「予期せぬ死を全例届けさせて」死因の究明と再発防止を法制化するものである。

残念ながらWHOのガイドラインを無視した医師の対する可罰的な制度が作られようとしている。
医療事故は再発防止のための制度設計が最優先であり、これに原因究明を入れてしまうと、大野事件のように裁判に報告書が利用される恐れから誰も正直には話さなくなる。

医療事故は当事者による迅速で真摯な対応と、再発防止のための個人名を記載しない報告書の作成が重要だが、どれだけ言っても私たちの声は届かない。

人を助けようとする医師たちの行為は時として侵襲的なものになる。
100%の結果責任を問われると、すべての医療行為はできなくなる。
世界で一番妊産婦死亡の少ない日本で産科医療が崩壊したのがいい例である。
医療事故調の法制化がどれだけ危ういものかいったいどれほどの人たちが認識しているのだろうか。