看護現場は今(下) 働きやすさ 模索続く 離職防止、掘り起こし 決め手なく

2012.12.08

 

看護現場は今(下) 働きやすさ 模索続く 離職防止、掘り起こし 決め手なく
 
2012.12.06 福井新聞


 福井県の看護職員需給見通しでは、2015年度にかけて不足傾向が続くが、徐々に緩和すると見込む。一方で「看護師不足が今後深刻化する可能性がある」との指摘もある。

国は「地域完結型医療」を目指しており、病院だけでなく在宅医療を担う訪問看護ステーションなどの充実が迫られるためだ。増え続ける需要に対し、人材の供給は心もとない。(西脇和宏)


 県内で看護師を養成する高校、大学、専門学校の1学年の定員は11年度395人で、卒業時の県内就職率は6~7割で推移している。
14年度を目指す敦賀市立看護大(仮称)の開学後は、現在の同市立看護専門学校から定員が20人増える見通しだ。

 一方で、看護学校を運営する福井市医師会が「毎年学生を確保するのに苦労している」とするように、学校によっては定員割れもみられる状況だ。
施設や教職員などの制約もあり、県はこれ以上の定員増は必要ないとしている。

 
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 県は「育てる、辞めるの繰り返しでは、いつまでも看護師不足が解消しない」(地域医療課)とし、現役の離職防止や、何らかの事情で現場を離れた「潜在看護師」の再就業促進を重視する。

 県内の看護師の離職率は10年度6・9%(うち1年以内の新人4・2%)で、全国平均の11・0%(同8・1%)を下回っている。
ただ、仕事についていけないなどの理由から就職後3年以内の退職割合が比較的高い。

 福井市内の病院に勤める30歳代の中堅看護師は「学生時代の実習と就職してからの現場のギャップが大きい」と話す。
少子化の中で看護師を目指す学生は“金の卵”。「昔は実習でも厳しく怒られたが、今はいかに褒めて伸ばすかに気を配っている。
でも、患者さんの命に関わる実際の現場では、そんなこと言っていられない」(同看護師)。
若手の離職防止に向け、県はスキルアップ研修を主要病院に委託し、他の小規模施設の職員も受け入れている。

 
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 県ナースセンターが行っている再就業あっせん事業では、10年度からナースサポーターを配置し、求職者と医療機関の細やかなマッチングに力を入れる。11年度は延べ400人近い再就業に結びついた。
ただ、同センターに求職を含めた相談で登録している人のうち、何らかの施設で働いている現役が3分の2を占める。年2回行っている再就業に向けた講習会の受講者にも現役が目立つ。

 未就業者は「育児やブランクなどで非常勤、短期勤務を希望する」(同センター)傾向で、常勤の再就業に結びつきづらい。
「夜勤を避けたい」など条件面で折り合わない求職者も多く、一層の上積みは難しいという。

 そもそも潜在看護師の掘り起こしには限界がある、との見方もある。
全国で40万~50万人いるといわれるが、日本看護協会副会長を務める県済生会病院の大久保清子副院長は「正確な数字ではない。実数把握に動きだした段階」と語る。
県看護協会の石丸美千代会長は「未就業の有資格者の足取りが全く分からない。
国も県も看護学校もチェックしておらず大きな問題」と指摘する。同協会の事業の力点も現役の離職防止に移っている。


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 福井大医学部附属病院は、熟練度が異なる看護師同士でペアを組んで看護に当たる独自の体制を09年度に導入した。
院内保育や短時間勤務、夜勤免除の導入など、県内医療機関は働きやすい環境を模索している。

 県も看護師の待遇改善に向け、11年度から各病院の看護部長級を対象にした研修会を始めた。
労働時間など関係法規にのっとった勤務環境を維持するよう指導している。
石丸会長は「看護師も自覚を持ち、自分の生活と健康を守る勤務体制を確保しなければならない。それがミス防止につながり、患者のためにもなる」と訴えた。