殺菌効果で注目浴びる銅 手すりやドアノブなど利用広がる

2012.11.27

 

殺菌効果で注目浴びる銅 手すりやドアノブなど利用広がる 2011/2/3 7:00 日本経済新聞 

電線や硬貨などに使われる身近な金属、銅の用途が新たな広がりを見せている。
熱や電気の伝導性の高さや腐食のしにくさといった性質からフライパンなどの調理器具に使われたりもしている。
ここにきて殺菌・滅菌性などの効用に着目した使い方が広がってきた。大手企業も参入するなど素材としての輝きを増している。


■幼稚園の手すりに利用


 東京都三鷹市にある保育園、第二小羊チャイルドセンター(園児数約100人)。
昨年、園児たちが頻繁に手を触れる階段の手すりや調理台をステンレスから銅製品に切り替えた。
市川ルミ園長は「殺菌作用があるとされる銅を使うことで安心感がある」と話す。



子どもたちが手を触れる手すりを銅を使った製品にした(東京都三鷹市の第二小羊チャイルドセンター)
 導入のきっかけは研究機関、日本銅センター(東京・台東)が銅の殺菌作用を実証するプロジェクトの一環で、銅を使う場所を提供する育児施設を募集したことだった。乳幼児が多い保育園ではインフルエンザなど感染症の拡大スピードが速い。
同チャイルドセンターは銅の殺菌・滅菌効果に期待した。

 銅の殺菌・滅菌作用については公的機関の調査結果がある。2008年、米環境保護局(EPA)は2時間以内に病原菌を99.9%殺菌することが実証されたとして殺菌性を認定した。


■医療機関も効果に注目


 そうした効用に医療機関も注目している。北里大学病院(相模原市)では05年から皮膚科病棟の処置室の床面やドアの押し板やノブ、洗面台などで銅を使っている。また病棟で使うボールペンのグリップにも銅を使っている。
微生物学が専門の笹原武志講師を中心に緑膿菌(りょくのうきん)など院内感染の原因となる病原菌の数を調べたところ、使っている箇所で軒並み減っていたという。
笹原氏は「銅を使うことで院内感染を防ごうとする意識が高まっている」と話す。




銅製の板を床に張った(相模原市の北里大学病院)
 北里大学病院の皮膚科病棟のドアノブをつくっているのはユニオン(大阪市)。銅と亜鉛を混ぜた真ちゅう製だが、ユニオンが扱う約2000種類のドアノブのうち、真ちゅう製は2割程度。「病院で使う機会が増えれば、新たな需要を喚起できる」(ユニオンの富正一さん)と期待は大きい。

 企業の動きも出てきた。三井化学は表面に薄く銅合金を蒸着させた樹脂フィルムを開発、量産化に向けて検討に入っている
。飲食店の厨房(ちゅうぼう)機器に張って使うことなどを想定している。


■既存の材料よりコスト5割増し


 優れた効果が認識されるつつあるといっても需要拡大は簡単ではない。
まず、費用面の課題がある。ドアノブでよく使われるのはステンレスやアルミニウムだが、これらと比べると銅製は5割程度割高になるケースもある。



 最近の銅の値上がりも頭の痛いところ。国際指標となっているロンドン金属取引所(LME)先物価格は1トン9900ドル程度。
昨年の同時期と比べるとおよそ4割高い。銅価格高騰でステンレスやアルミなどに比べた割高感が増すことも予想される。

 防臭剤などに使われる銀に抗菌効果があるのは知られているが、銅の殺菌・抗菌効果は「医療関係者でも知っている人は多くない」(北里大学の笹原氏)。一般の人であればなおさらだろう。効果が知られていなければ、製品数も限られ市場が拡大していかない。


■普及すれば課題克服も


 銅は人類が初めて使った金属とされている。便利な生活を手に入れるために銅の利用は増える一方、減った分野もある。
「日本国内の水道管は銅中心だったが、価格の安さと加工のしやすさで塩化ビニール管に替わった」(銅を使った建築に詳しい建築家の佐川旭氏)。
殺菌・抗菌に着目した需要拡大の試みは始まったばかりだ。

知名度を高めて量産化につなげることができれば課題の克服も難しくないかもしれない。