地域の医師不足深刻

2012.11.26

地域の医師不足深刻

現在は使われていない病室。ひっそりとした室内にベッドだけが残っている=南砺市梅野の公立南砺中央病院(朝日新聞2012年10月20日)

病院の分娩休止■大学・県が対策
 
富山県南砺市梅野の公立南砺中央病院http://nantohp.city.nanto.toyama.jp/www/hospital/outline.html。3階のフロアは、空のベッドが並び、ひっそりと静まりかえっていた。かつては、この階に分娩)室や産科の病室が並んでいたが、医師不足のため2008年度いっぱいで閉鎖されたという。
 
同病院は、県内の公立病院で最も常勤医が少ない。内科と整形外科合わせて6人。医師が足りない科は金沢大医学部の医局などから派遣される、57人の非常勤医でまかなっている。
 
190の病床のうち、稼働しているのは149床。休止は41床ある。
産科医が確保できなかったため、09年度から分娩の取り扱いをやめ、使わないベッドが増えた。
 
同病院は、岐阜県白川村など2町3村(当時)からなる「広域連合」を母体に02年に開院。当時、常勤医は16人いたが、4年後に南砺市が母体になると、医師の確保がうまくいかず9人に。

関係大学の医局との連携などで翌年は13人にまで回復したが、その後は減少を続けている。
平日の夜勤、土日祝日の日勤・夜勤が常勤医に重くのしかかる。
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 厚労省が2年ごとに実施している調査では、02年の県内医師数は2521人。
10年は2635人と、8年で114人増えた。人口10万人あたりの医師数は02年の225・3人から241人に増加している(いずれも実数)。
 
一方、同省がまとめた10年の「病院等における必要医師数実態調査」によると、県内の医療現場では291人の医師の増加が求められている。
 
医師数は増えているのに、なぜ医師不足が問題になるのか。
一つに、主に都市部以外の地域にある病院が十分な数の医師を確保できていない現状がある。
 
例えば、南砺中央病院では、外来診療が毎日できるのは、常勤医がいる一般内科と整形外科、非常勤医でまかなう小児科の三つのみ。
心療内科の外来は週に1度、午後の3時間に限られる。休診日が目立つ科もある。
 
地域での医師不足を招いた要因の一つとして、04年度に始まった新たな臨床研修医制度が挙げられるという。
それまでは、大学の医局が協力病院への研修医の派遣を調整してきた。
しかし、制度導入後、臨床研修先を自由に選択できるようになった研修医は、高度な医療技術を学ぶために中核病院を選ぶケースが多くなったという。
その結果、地方の公立病院で医師不足が顕著になった。

県医務課の担当者は「医師不足の公立病院では、勤務する医師の負担が大きくなり、さらに医師がその病院を敬遠する悪循環が起きている所もある」と話す。
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 こうした中、医師確保策として富山大学は、県内高校からの推薦で、卒業後も県内に残ることを条件とした「地域枠」を作った。順調にいけば来春、1期生が卒業する予定だ。
 
一方、県は08年から、県内高校を卒業した医学部進学者に「知事の手紙」を送り、県内での「活躍」を促している。
県は対策として「医師数の増加」を目標としており、県内に残る医学生を確保するほか、現役の医師にも照準を合わせる予定。
「IターンやUターンを考えている医師の就職支援なども検討する必要がある」と県医務課の担当者。
 
南砺中央病院の担当者は「県内に医師が残っても、富山市の病院に行くケースが多い。へき地の病院で地域医療を学ぶ意欲がある医師には、何らかの優遇策を設けるなど、対策を強化して欲しい」と話す。(金沢ひかり)