医師への営業「脱接待」 製薬業界

2012.11.21

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医師への営業「脱接待」 製薬業界、変化の兆し 会食1人5千円・ゴルフ禁止
2012.11.20朝日新聞 



 製薬会社の営業社員「MR」=キーワード=が日本に導入され、今年で100年になる。
薬の効能や副作用の情報などを、医師に伝える仕事だ。
医師への過剰な接待が問題になった時期もあったが、製薬業界は今春から接待費に上限を設け、ゴルフ接待を禁じた。
営業スタイルがスマートに変わりつつある。


 平日の夕方、東京都内の大学病院。医師らの部屋近くの廊下やエレベーター前に、スーツ姿のMRが立っている。
胸には会社名の入った名札。目当ての医師が通ると、さっと近づいて話しかける。自社の新薬を処方してもらうためだ。

 医師は日中、忙しい。関係を築くため、かつては夜に高級料亭でもてなし、休日はゴルフ場へ連れて行った。「昔は接待も仕事という意識が強かった」(製薬大手のMR経験者)。

 ただ、患者の命や健康にかかわる医薬品の選択が、接待に左右されていいのかという問題がある。
2001年には、大阪府内の公立病院長が薬を採用する見返りに、製薬10社から泊まりがけのゴルフ接待などを受けるなど、計300万円近い賄賂を受けとったとして、有罪判決を受けた。

 また薬剤費は、税金や公的医療保険などで賄われている。その薬剤費が結果的に接待費用に回っていることへの批判も強かった。

 製薬会社約220社でつくる「医療用医薬品製造販売業公正取引協議会」は今年4月、MRと医師の会食に「1人5千円まで」などと上限を設け、ゴルフ接待は禁じた。

 製薬大手の営業担当役員は「5千円では実質的に接待できない。これからは、いかに医師が会ってくれるような情報を持って行けるかが勝負だ」と話す。


 ●ネットで接点づくり

 接待への風当たりが強まるなか、創業13年目のベンチャー企業、エムスリー(東京)は、いかに医師との接点を持つか頭を悩ませている製薬会社を手助けし、業績を伸ばしている。

 ネットのウェブ上で「MR君」というサービスを提供している。
登録した医師がサイトを訪れると、製薬会社ごとに新薬を説明する動画を再生できる。
無料ということもあり、国内の医師の7割以上、約23万人が登録。製薬会社は大手を中心に28社がサービスを利用している。
このMR君サービスの2011年度の売り上げは約76億円。5年前から倍増した。

 武田薬品工業は今年5月、MR君のサービスを導入した。
10月下旬からは、より現場の営業に役立つように「てのひらMR君」をエムスリーと共同開発。
MRは、担当の医師が見た動画をタブレット端末「iPad」で確認できる。そのうえで医師にウェブ上で「詳しく説明したいので、面談の時間をいただけませんか」といったメッセージを送るしくみだ。

 武田薬品マーケティング部の小出一郎主席部員は「医師と接触する時間が減る一方、新薬が増え、医師に伝えるべき情報も増えている。
最終的には医師と直接話すことが重要だが、薬の作用などの説明はネットを使い、効率化したい」と話す。(生田大介)


 ◆キーワード

 <MR> Medical Representativesの略。医薬情報担当者。
日本ではスイスのロシュ社が1912年に導入したのが始まりとされ、当初は「プロパー(宣伝する人)」と呼ばれた。ただ、医薬品の値引き競争や過剰接待が問題に。業界は91年に呼称をMRに改め、薬の価格交渉を禁止した。


 ■製薬業界による接待規制の主な内容

                      1人あたりの上限額

 MRの営業活動での飲食             5千円

 自社の薬の説明会で出す茶菓や弁当        3千円

 自社の薬に関する講演会後の懇親会での飲食    2万円

 社内研修会の講師への慰労のための飲食      2万円

 飲食の2次会や、ゴルフやスポーツ観戦など     禁止

 (医療用医薬品製造販売業公正取引協議会の規定から)