頼れる病院 消える病院 ・・・週刊ダイアモンドより

2012.10.30









特集 頼れる病院 消える病院 (2/5) 

2012.10.27 週刊ダイヤモンド  



Part 1 窮地に立つ病院 





病院という箱は、医師や看護師らスタッフと、医療を求める患者がいて、初めて意味を成す。 

そこに経営があるから将来にわたり存続し得る。どれかが欠けたとき、病院は窮地に立たされる。 



地域ルポ 

患者殺到! 医師脱走! 国内最大自治体病院の悲劇 





患者が押し寄せる中で医師不足にあえぐ千葉の旭中央病院、患者がいない北海道の苫小牧病院、不採算問題に端を発して医師も患者も失った東京の光が丘病院。三つの病院の窮地に迫った。 





 「危機的状況ではないですか!」──。力の入った声が響いた瞬間、会場は一気に緊張感に包まれた。 



 10月2日、千葉県の旭市役所で第1回となる「総合病院国保旭中央病院検討委員会」が開かれた。 

病院と市の関係者、有識者らが一堂に会し、2時間に及ぶ話し合いで浮かび上がってきたのは、名門・国保旭中央病院の「異変」と「将来リスク」だった。 



 1953年に開院した旭中央病院は病床数989床、診療圏は千葉県東部ならびに茨城県南部を含む人口100万人の地域で、公立病院で全国最大規模を誇る病院だ。 



 比較的軽症の1次救急から重症患者を受け入れる3次救急まで対応し、年間の救急患者数は6万人に上る。 

血管内治療の装置が組み込まれた最新のハイブリッド手術室を新設するなど、高度な医療に熱心だ。 



 経営面では長年にわたり黒字経営を続け、国の自治体優良病院賞を過去に2度受賞している。 

昨年5月に新築した地上12階建ての立派な病院の広々としたエントランスは診察を待つ患者で溢れている。 



 旭市の市立病院ではあるが、外来、入院、救急とも7割が市外から訪れる患者で、広域の医療過疎地を支えている。 

市外からも押し寄せるため救急車搬送件数は増え続け、2010年は6700件にまで達した。外来患者数は毎日約3000人に及ぶ。 



 名実共にナンバーワンの市立病院に、いったい何が起きているのか。 



 事の発端は4月、内科医9人を含む14人もの医師がいっせいに退職したことにあった。 





医師が大量に退職 苦肉の患者受け入れ制限 





 救急の前線を担う若手内科医が抜け、脳梗塞の治療に当たる内科医も不足する中、旭市と周辺市町村の患者受け入れを維持するために、やむなく千葉県山武市や茨城県鹿嶋市からの脳卒中患者の受け入れ制限をした。 

さらに7月には呼吸器内科医も減り、旭市民以外は紹介状があっても新規外来が制限された。 



 しかし、医師の大量離職が起きる以前から、旭中央病院のオペレーションはパンク寸前だった。 



 表1‐1は都道府県別に見た人口10万人当たりの常勤換算医師数、つまり医師不足度をランキングしたものだ。千葉県は118・3人と埼玉県に次いで全国で2番目に低かった。 



 千葉大学の医局との連携が強く、過去50年は医師不足に困ることなどなかった。 

しかし自由に研修先を選べる新臨床研修医制度が6年前に始まってから、医師の派遣が少なくなった。 



 診療圏とその周囲には診療科目が重複した100~300床ほどの中規模病院が複数あるものの、どこも深刻な医師不足に陥っている。 

近くの銚子市立病院(旧銚子市立総合病院)は08年に経営難で休止に追い込まれた。 



 一方で旭中央病院は「24時間365日断らない救急」という開院以来の理念の下、規模を拡大してきた。 

医師を増やし、医療の質を高め、患者の評判が評判を呼び、市外からも続々と患者が集まった。 



 結果、入院患者の約4倍もの外来患者を受け入れてきたが、周辺病院が弱体化するぶん、患者が旭中央病院に一極集中した。これが医師たちを疲弊させた。 



 「救急をやり続けるのは当院の使命だが、外来患者も押し寄せて医師の負担は増えるばかり。 

もっとたくさんの医師を確保しようにも、東日本大震災の津波で数百戸の家が流れて医師が離れてしまった」と吉田象二病院長は苦しい胸の内を明かす。 

「5倍の競争率があった研修医からの人気も落ちてしまった」という。 



 苦肉の策である患者受け入れ制限は、病院経営に影響を及ぼし始めた。 

つい最近まで満床を理由に救急車受け入れを断らざるを得なかったのに、8~9月の稼働病床利用率は87~88%に落ち込んだ。 



 資金的な余裕はあるので今すぐ経営面で崖っぷちに立たされるわけではないが、「これから先はわからない」と吉田病院長は将来に不安をのぞかせる。 



 外来、入院、救急の三つは密接に関わっており、一つでも歯車が狂うと負のスパイラルに陥る。増え過ぎた外来だけを縮小することは簡単ではない。 



 つまるところ、他の病院との機能分化、地域連携の構築を急がなければいけない。 

いくつかの取り組みに着手してはいるが、さらに加速させなければ、地域医療の最後のとりでさえも崩壊するだろう。 



 そんな中で千葉県は3月、医療過疎化した地域医療を再生するために約3000床分を増やすことを打ち出した。 

ところが県の思いとは裏腹に、病院関係者たちは「看護師が数千人規模で不足し、さらに問題が大きくなるのではないか」と危惧する。 



 病院や病床が増えたところで、医師や看護師が行き渡らなければ、問題は何も解決しない。 







患者がいない道立苫小牧 役割終えて存続に疑問符 





 北海道・札幌駅から電車で1時間、JR苫小牧駅から程近い住宅街に閉鎖が検討されている道立苫小牧病院がある。 



 連休明けの朝なのに外来受付の患者の姿はまばらだ。 



 道立病院は慢性的な赤字が問題となっている。 

道立8病院の10年度の赤字は総計72億6000万円。 

繰入金を入れてなお最終的な赤字は13億4000万円に上り、累積赤字は683億円に達した。 



 抜本的な体質改善をするため、08年から今年までを対象にした道立病院改革プランでは、経営形態の見直しが促され、公設民営である指定管理者制度の導入か、他の医療機関へ機能継承する案が盛り込まれた。 



 しかし、不採算医療を担う必要があることから継承先は公的病院に限定され、医師の確保も難しく、引き受け手は見つからなかった。 



 そこで道は7月、13年から5年間を対象とした新プラン策定のための意見書をまとめた。 

それは、苫小牧病院を廃止し、他の6病院は独立行政法人化の検討を行う必要があるというものだった(移管した紋別は除く)。 



 表1‐5は8病院の病床数と経営状況をまとめたものだ。 



 江差病院と紋別病院、羽幌病院は、民間病院の進出が少ない地域の中核病院で、救急の拠点にもなっている(紋別は昨年、地元5市町村でつくる事務組合の企業団に移管)。 

子ども総合医療・療育センター(コドモックル)は07年に二つの小児病院が統合されたもの。 

緑ヶ丘病院と向陽ヶ丘病院は精神科、北見病院は循環器科の専門病院だ。 





 苫小牧病院は、結核とその後遺症の治療を中心とした病院だ。廃止案が持ち上がった理由は、結核患者の減少にある。 



 現代では結核は投薬治療が標準化され、苫小牧病院の昨年度の1日平均入院患者数は2・5人、病床利用率は1割に満たない。患者がいないため採算が合わず、収支差は6億5600万円の赤字だ。 



 そもそも道立病院は結核と精神疾患の治療を主たる目的として整備されてきた歴史がある。 

多くの病院は機能をシフトし、結核病床を一般病床へと転換した。 

もともと北海道の結核罹患率は全国平均に比べて低い。 

いまだ結核治療を中心としている苫小牧病院は歴史的な役割を終えたといえるだろう。 



 地元自治体と医師会は閉鎖に大反対。市は「ぜひ残したい」という考えを示し、もっと丁寧に議論するべきと主張している。 



 とはいえ、他の病院への統合や、機能譲渡も難しい。苫小牧病院の目と鼻の先に、苫小牧市立病院と王子総合病院という呼吸器科を持つ二つの大型病院がある。 

しかし、いずれも急性期病院で、結核病床は組み込めない。 

一般病床へ転換した上で組み込むのも、地域の法定病床数を上回るためにできない。 



 9月、道はプランの素案をまとめた。苫小牧病院の存廃は「地域と協議を進める」と明記するにとどめ、廃止の判断は先送りされた。 







不採算による閉院騒動で患者を失った光が丘病院 





 民間病院で閉院問題を抱えたのは東京都練馬区の練馬光が丘病院(旧日本大学医学部付属練馬光が丘病院)だ。 



 区との軋轢や不採算を理由に日大が今年3月に病院運営を終了。 

地域医療振興協会が、日大と同規模・質の医療提供を宣言し、4月から引き継ぐこととなったが、実際は日大運営時の約半数の医師・看護師しか確保できず、地元や患者は大混乱に陥った。 



 特に問題となったのは小児科や周産期医療だ。 

光が丘病院は練馬区のみならず、東京都北西部と埼玉県南西部からも年間1000件以上の小児救急を受け入れていた。 



 病院によると、現在、常勤医は71人、常勤看護師は179人。 

看護師はまだ足りない。 

医師は特に小児科と産科が足りず、他の診療科も含め積極的に採用し、13年4月までに常勤医100人、看護師250人の体制にする計画だ。 



 同病院の藤来靖士管理者は、「入院と救急に重きを置き、一日も早く地域の信頼を得たい」と4月の開院会見で語った。 

現在は342病床のうち200床程度が稼働しているもよう。年度内には全病棟を稼働させる方針だ。 



 もっとも、患者が溢れ返っているわけではない。 

小児救急の体制を強化した埼玉県和光市の埼玉病院や、東京都板橋区にある日大系列の板橋病院に患者は流れている。 

閉院問題に端を発し、医師・看護師不足、患者離れを生み、存在価値を失いつつある。 







Column 一部村民によるイジメが原因? 医師が定着しない上小阿仁村 





 秋田県中央部に位置する上小阿仁村にある唯一の医療機関、村立上小阿仁国保診療所には医師がちっとも定着しない。 



 3人の医師が連続して赴任後1年以内に辞意を表明してしまった。 



 高齢化と過疎化が進む人口2560人の小さな村で僻地医療に臨んだ医師たちが、失意のうちに相次ぎ辞職した背景には、年間休暇がわずか20日という激務に加え、一部村民からの心ない誹謗中傷があったもようだ。 



 例えば60代の女性医師は、土日・祝日も診療をほとんど休まず、雪深い季節でも熱心に往診に取り組み、献身的な医療を続けた。 

辞意を表明した際に、村民から残留を求める大量の署名が届くほど人望は厚かったが、結局、「精神的な疲労」を理由に辞職した。 



 別の辞めた医師は、村の広報誌に「医者への接し方に頑張る意欲をなくさせるものがあった」「医者を大切に思わない限り、この村に医者が根を下ろすことはないでしょう」とやるせない思いをつづっている。 



 無医村になって困るのは村民自身である。そんな上小阿仁村に10月、また新たな医師が着任する。 







自治体病院 





赤字補填しても5割が赤字 遅々とした自治体病院改革 





多額の税金が投入されながらも、5割の自治体病院は赤字を垂れ流し続けている。 

3年前に改革プランで掲げた「経営効率化」「再編」「経営形態の見直し」のどれもが中途半端なままだ。 





 9月末に速報が発表された「公立病院改革プラン」の実施結果は惨憺たる内容だった。 



 全国に1000ある自治体病院の経営悪化を食い止めようと、国が出した「経営効率化」「再編・ネットワーク化」「経営形態の見直し」のガイドラインに沿って、各自治体がプランを策定したのは2008年のこと。経営効率化は3年のスケジュールが組まれ、11年度が目標達成の最終年度だった。 



 しかし、プランを策定した886病院のうち、経常収支の黒字を達成したのは470病院と5割にとどまった。 

自ら設定した目標値(経常収支比率、職員給与比率および病床利用率)をすべて達成できた病院は1割に満たない。 



 しかもこれらの結果は病院の赤字を補填する国や自治体からの「繰入金」を含んでおり、本当の結果はさらに悪い。 





1床753万円補填で赤 人件費率95%の高コスト 





 表1‐7は大都市にある自治体病院を対象に、1床当たり繰入金が多い順に並べたものだ(10年度実績、病床数は一般病床以外も含む)。 

最も金額が大きい横浜市の脳血管医療センターは、1床当たり753万円も投入されながら赤字で、11年度も改善が見られなかった。 

表中の他の病院も税金投入がなければ赤字だということがわかる。 



 脳血管医療センターは11年度の病床利用率が65・3%と低迷し、職員給与比率は95%と異常に高い。経営効率化を阻む大きな要因は、経営感覚の欠如と高コスト体質である。 



脳血管領域は民間病院では稼ぎ頭で、医療材料費やスタッフの手間暇はかかるが、きちんとやれば採算はとれるはずだ。 



 赤字経営から脱却するための経営形態見直しには複数の選択肢がある。 

詳細は表1‐8の通りだが、ポイントは運営責任者と職員の身分だ。いまだ多くの病院で行政が運営の主導権を握り、職員は給料の高い公務員である。 



 公立病院改革ガイドライン策定時の有識者会議で座長を務め、今も自治体病院の再生に携わる長隆・東日本税理士法人代表は「柔軟な経営を可能にする地方独立行政法人化がベスト」と言い切る。 

ただ、独法病院の中でも「改革の度合いには差がある」という。 



 独法病院も赤字補填金の意味合いを持つ「運営費負担金」が自治体から交付される。表1‐9は独法病院のうち300床以上の病院を、1床当たり負担金(営業収益における運営費負担金収益)でランキングしたものだ。 



 目に付くのは、採算を取るのが難しい小児・周産期病院、高度先進医療を提供するために専門センターに転換した病院などだ。 

地域に必要な不採算医療を提供するという事情から、負担金交付が多い理由はうかがえる。 



 その中にあっても、市と県二つの自治体病院を統合・再編し、独法化した日本海総合病院のように、産科、小児科を含めた診療科目を持ちながら、非常に効率的な経営をするようになった病院もある。 



 自治体病院はその役割を果たすために多少の税金を投入しても致し方ない面はあろう。 

しかし、民間の経営レベルとかけ離れたものであってはならないし、独立採算は図るべきだ。そのためには再編をさらに進める必要がある。 









Column 中核病院の厳格処分に住民蒼白 不正請求で揺れる東京医大茨城 





 「これからもここで医療を受けられるのか、すごく心配」。 

週に3日間、人工透析で通院している男性患者は、不安げに語った。 



 9月下旬、厚生労働省が診療報酬を不正請求したとして、東京医科大学茨城医療センター(茨城県阿見町)の保険医療機関指定を取り消すと発表したからだ。 

不正請求の数は2008年4月~09年5月の1年2カ月に約3万件。 

金額にして約8300万円だ。 



 取り消し期間は12月1日から5年間。 

保険が使えなければ、患者は全額自己負担となり、医療行為を受けることは不可能に近い。病院も実質的に運営できない。 



 病院側がペナルティを受けるのは仕方がない。 

問題は地域の住民だ。 

「5年間も指定取り消しになってしまうと、地域の医療が完全に崩壊する」との声が相次いでいる。 



 同センターは、1日平均外来患者数は1047人、1日平均入院患者数は386人、救急車の1日平均来院台数は9・4台。 



常時通院する透析患者数は約150人。 

地域がん診療連携拠点病院、肝疾患診療連携拠点病院の指定を受けており、専門医数は183人(延べ換算)もいる。 



 今回の本誌の病院ランキングでは、あえて同センターを掲載したが、茨城県で2位。地域の中核病院だ。 



 とりあえず、茨城県では、地元10市町の国民健康保険分については、患者自己負担分が従来通りに3割で済む公的保険制度「療養費払い」で対応することを決めた。 



 指定取り消し期間についても、「5年では病院も患者も大変なので、取り消し期間を短くしてもらうように早期再指定を目指している」(茨城県保険福祉部)というが、まだまだ先が見えない。 







医療とカネ 





知恵と工夫で医療費を節約! 診療報酬の仕組みQ&A 





いざ、病気になったり、ケガをしたときには、思わぬ出費が気になるものだ。医療費は少しでも抑えたい。知らないと損をする医療費の仕組みや節約の方法を紹介しよう。 





Q 診療報酬とは何か。診療報酬は患者にどんな関係があるのか 





A 診療報酬とは、医師が行う医療行為に対して、点数化された料金表である。料理店でいえば、メニューのようなもの。当然、患者が窓口で支払う医療費にも大きく関係してくる。 



 診察や検査、投薬などの個々の医療行為に点数があり、1点当たり10円で計算される。これらの合計が治療費となり、通常は3割分が自己負担になる。 



 てっきり無料サービスだと思っていても、大半は点数が付いていて有料である。 



 例えば、医師が書く紹介状をはじめ、調剤薬局で薬剤師が行うお薬手帳を通じた情報提供や、残っている薬の確認、後発医薬品の情報提供にも点数が付いている。 



 時間外や休日などに診療してもらった場合も時間外加算という点数があり、料金の割り増しが発生していることが多い。 



 決して「親切心」というわけではないのだ。 



 よって、なるべく無駄な治療費を抑えたいと思うのならば、不必要な医療行為は要求しないほうが賢明である。よほどのことがない限り、時間外や休日の受診は避けたほうがよいだろう。 



 いくつかの例外はあるが、総じて大病院での検査や治療は割高になる。 



 これは最新の検査機器や専門医、専門スタッフによる医療行為にそれぞれ点数が付いていることが多く、料金が上積みされるためだ。 

なので、簡単な検査や治療であるならば、大病院を避けたほうがいくらか節約になるというわけだ。 



 診療報酬は、政策誘導の道具としても使われる。例えば、後発医薬品の情報提供に点数を付けるのは、後発医薬品を普及させて医療費を削減したいという国の方針があるからだ。 



 こうした政策的意図が患者から見ると、おかしな状態になってしまうことがある。 

例えば、意外なことだが、高血圧などの慢性疾患の場合、治療費は診療所よりも大学病院などの大病院のほうが安い。 

また、薬代も市中の調剤薬局よりも院内処方のほうが安いのだ。 



 これは国が大病院への患者集中を避けるため、薬の院外処方を増やすために、診療所と院外処方の点数を厚くした結果である。よくある患者の勘違いについては図1‐10のようなものがある。 





意外なところでカネがかかる 1-10 よくある患者の勘違い 





●高血圧などの慢性疾患は診療所のほうが安いだろう 



→実は大病院のほうが安い。診療所は割高 



●薬代は市中の調剤薬局のほうが安いし便利だろう 



→実は院内か、門前薬局でもらったほうが安い 



●「お薬手帳」への記入や薬の説明は無料サービスだろう 



→実は診療報酬で加算されており、有料 



●診療所で診療せずに薬だけもらえば、安くなるだろう 



→形式上は診療を行ったことになっており、安くはならない 



●最新式コンピュータ断層撮影装置(CT)でも普及型CTでも検査費用は同じだろう 



→実は最新式と普及型では検査費用が異なる 



●どんな医者が診ても診察代は同じだろう 



→例えば、放射線専門医が画像診断すると割高となる 





Q 大病院への紹介状はなぜ必要か 





A 治療費には、公的医療保険の対象となる治療費と、保険適用外(自由診療)の治療費がある。本来は保険を使った治療費と保険外の治療費は併用できない。 



 ただし、一部は例外として併用が認められ、自由な料金を患者に請求できる。 



 実は200床を超える大病院の場合、紹介状のない初診に対し、病院側が決めた料金を請求することが認められているのだ。 

これも大病院への患者集中を避けるための政策である。 



 その金額は、通常は数千円程度。首都圏の大学病院の場合、3000~5000円程度が多い。 

厚生労働省の資料によると、最低価格で105円、最高価格で8400円、平均が1966円である。 

紹介状があったほうが治療もスムーズにいくことが多い。紹介状は用意したほうがよいだろう。 



 同様に、緊急性がないのに患者の都合で行った時間外診療、制限回数を超える治療、180日以上の長期入院なども病院側は保険外の料金を取ってもよいことになっている。 



 予約診療についても保険外で予約料を取ることが認められている。だが、予約料を取る場合、(1)待ち時間は30分以内であること、(2)予約患者に対して10分以上の診察をすること、などさまざまな条件があるために、予約診療を行っていても予約料を取っていない病院のほうが圧倒的に多い。 





Q 例外的に「混合診療」が認められているものもあるのか 





A 日本の医療制度では、公的保険を使った医療と自由診療を組み合わせる「混合診療」は認められていない。ただし、例外的に認められているのが、「先進医療」と呼ばれるものだ。 



 先進医療とは、厚労省が認めた最先端の医療技術であり、重粒子線や陽子線など特別な放射線を使ったがん治療が代表的だ。 



 先端医療部分の費用については、保険が使えず患者の自己負担となるが、入院費など一般治療と共通する部分は保険適用となる。 



 現在、先進医療は65種類、これ以外にも未承認薬を使った治療などの「高度医療」が38種類あったが、10月からは先進医療に統一されている(ただし、二つのタイプに区別されている)。 



 実際にどこの医療機関でどんな先進医療が行われているかについては、厚労省のホームページ「先進医療を実施している医療機関の一覧」(http://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/isei/sensiniryo/kikan02.html)で見ることができる。 



 分野を見ると、やはり、圧倒的にがん治療に関する技術で、大学病院で行われていることが多い。 





Q 「個室しか空いていない」と言われたが、差額ベッド代は支払うのか 





A 料金については、診療報酬で何かと制限されている。 

ただし、4人部屋以下、1人当たりの病室面積が6・4平方メートル以上、プライバシー確保の設備を備えている、などの条件をクリアすれば、差額ベッド代を自由に決めてよいことになっている。 



 だが、差額ベッドの割合については、一定のルールがある。 



 例えば、総病床数の50%(国が開設する病院は20%、地方公共団体が開設する病院は30%)を超えてはならないとされている。 



 それでも、このルールもすべての病床が2人部屋以下であるなど条件を満たせば、クリアすることができる。 



 聖路加国際病院などは差額ベッドの割合が61・3%と50%を超えている。 



 差額ベッド代を患者から取るには、いくつかの条件がある。 



 具体的には、(1)受付窓口や待合室などに差額ベッドの数や料金を掲示する、(2)設備や料金などについて、十分に説明し、患者の同意の上で入院させる、(3)料金などを明示した文書に患者の署名を受ける、というものだ。 



 これらを満たしていなければ、差額ベッド代は請求できないとされている。 



 つまり、単純に「空きがないから」という理由や、医療上の必要があって医療機関側の判断で差額ベッドに入った場合は該当しない。 

患者による選択と同意がなければ、払う必要がないので、よく覚えておこう。 



 なお、表1‐11には、首都圏における有名病院の差額ベッド代を掲載した。 

この中で見る限り、1日当たりの1人部屋最高価格は東京大学病院と東京女子医科大学病院の18万9000円。 



 一方、この表の中で、最も安いのは、千葉大学病院、国保旭中央病院、埼玉医科大学病院の2100円。厚労省の調査では50円という差額ベッドもある。近年は景気の影響もあって、差額ベッド代も下落傾向にあるようだ。 





Q 治療費が高額となりそうだが、大丈夫か 





A 例えば、がんにかかった場合、検査も多く、手術をしたり高価な医薬品を使用することも多いので、治療費は高額になる。 

自己負担分が30万~40万円以上となるのも珍しくない。 



 そんなとき、利用する制度として「高額療養費制度」がある。 



 これは公的医療保険による制度の一つで、医療機関や薬局の窓口で支払った額が、暦月(月の初めから終わりまで)で一定額を超えた場合に、その超えた金額分が支給される制度だ。 



 この制度を利用するためには、健康保険組合などの保険者に対し申請書を提出する必要がある。 



 年齢や所得に応じて、本人が支払う医療費には上限が定められている。 

いくつかの条件を満たすことにより、さらに負担を軽減する仕組みも設けられている。 



 ただし、入院中の食事代や差額ベッド代などの保険外の自己負担分については対象外となる。 



 原則として、いったん窓口では患者が治療費全額を支払う。その後に、自己負担の超過分が支給される仕組み。 



 だが、現在では、患者が窓口で治療費全額を支払わずに済む方法もある(健保組合によってはできない場合もある)。 

また、事前に申請すれば、申請書を提出しなくても自動的に支給される場合があるので、確認しておくとよい。 



 詳しくは、入院や通院の際、病院の相談コーナーや医事課などに相談すれば、教えてくれるはずだ。 



 また、あまり知られていないが、海外旅行中に海外の医療機関で治療を受けた場合も、支払った医療費の一部が戻ってくる制度がある。 

「海外療養費」と呼ばれるものだ。 



 ただし、支給対象となるのは、日本国内で診療を受けた場合に健康保険が利用できる治療に限られ、美容整形や高価な歯科材料などは対象にはならない。 

また、臓器移植やメディカルツーリズムのように、初めから治療目的で海外へ渡航した場合は支給対象外となる。 





Q 医療費控除はどの範囲まで認められるのか 





A 窓口で支払った1年間の医療費(自己負担分)が合計10万円を超えた場合、確定申告すれば、一定額の税金が戻ってくる。 



 その医療費控除の適用範囲については、「生計を一にする」という条件で配偶者や親族のために支払った医療費にも適用される。 

生計を一にするとは、家計が同じということだ。つまり、共働きの配偶者をはじめ、生活費を仕送りしている親や子ども、配偶者の親族(6親等内の血族および3親等内の姻族)も対象になる。 



 控除対象は広く、医薬品(大衆薬を含む)の購入、医療機関への交通費、入院中の食事代、入院時の付添人の報酬のほか、自由診療による診療費(レーシックや高価な義歯など)なども含まれる。 



 一方、寝巻きや洗面用具の購入費、医師への謝礼、病院までのマイカーによるガソリン代などは対象外となる。 





Column 天井から綱がぶら~り 人気の大奥スタイル分娩室 





 湘南鎌倉総合病院には、全国から産婦人科医が見学に来る古風なお産部屋がある。 



 この「フリースタイル分娩室」(写真)で出産する妊婦は、天井から垂れ下がった綱をつかんでいきむ。時代劇でしばしば登場するお産の光景を想像させることから、「大奥スタイル分娩室」「お江戸スタイル分娩室」とも呼ばれる。 



 これは当然ながら見学用スペースではなく、実際の出産に使用されるものだ。お産部屋20室のうち、7室は同じように綱が垂れ下がっている。 



 もちろん、室内には酸素ボンベをはじめ、最新の医療設備が備えてあり、緊急の際はいつでも医療処置を行うことができる。 



 正常なお産は、健康保険の対象にはならない。それならば、こだわりの出産をしてみたいと思う人にお薦めである。