<医療・福祉プラス>夜勤者足りず 1病棟48床休止*正看護師確保 悩みの種*苫小牧市立病院*

2012.10.29

<医療・福祉プラス>夜勤者足りず 1病棟48床休止*正看護師確保 悩みの種*苫小牧市立病院*初任給アップ、学資制度拡大*解決の保証なく 


2012.10.23 北海道新聞 

 苫小牧市立病院(藤咲淳院長、382床)が看護師の確保策に頭を悩ませている。 
全9病棟を十分にケアするには260人前後の正看護師が必要だが、産休や育休の取得者が相次ぎ、夜勤が可能な正看護師の数が不足。 
9月には1病棟48床の休止に追い込まれた。 
初任給見直しや学資金制度拡大といった対策を講じているが、いずれも安定確保に結び付く保証はなく、看護師不足解消のめどは立っていない。(大脇聡) 

 看護師採用は例年、6、8、12月の年3回の定期募集が主だが、今年は10月と12月を加えて5回に増やした。 
必要な正看護師を確保するため、病院側は「新たな育休や産休の取得者、定年退職者を考えると来春は50人の採用が必要」とにらむが、現段階で内定者は十数人にとどまり、安定的な看護師確保策が急がれている。 

 看護師確保を妨げている理由の一つに、初任給の安さが挙げられる。市立病院の初任給は16万6900円。道内他都市の公立病院と比べ約2万円低い。 
給料の上がり方は他病院より早く、定年までの総収入は同水準になるというが、市内の医療関係者は「最初から定年まで勤めようと決めている人はごく一部。普通は初任給が高い病院を選ぶ」と話す。 

 このため病院側は給与見直しを準備中。現在勤務中の看護師はそのままだが、新しく採用する看護師の初任給を高くし、給料の上がり方を緩やかにすることで、「他病院と遜色ない水準」(同病院)を目指す。来春には導入したい考えだ。 

 学資金制度の拡大も安定確保に有効とされる。 
市内の看護学生に月額5万円、3年間で180万円の学費を貸し付け、看護学校卒業後に市立病院で3年間勤務すると返済が免除される制度で、毎年30人分の予算を計上。来春に5人、2014年春に7人、15年春に13人の採用を予定している。新年度予算案では、この予算枠を増やす方向で準備を進めている。 

 ただ、これらの対策を講じても50人を確保できるかどうかは不透明だ。 
診療報酬の高い「看護師1人につき患者7人」「夜勤は月72時間まで」という体制を維持するため、全国の病院が競って看護師を抱え込んでいる。 
市立病院も、胆振・日高管内の看護学校を訪ねて応募を呼び掛け、東北の看護学校にまで募集要項を配布しているが、結局は看護学生の選択に委ねられる。 

 苫小牧看護専門学校を運営する、苫小牧市医師会の小林直樹事務局長は「給与も選択基準の一つだが、看護学生は各病院の医療体制や働く看護師の姿を非常によく見ている。 
市立病院に限らず、学生を地元の病院に定着させるには、やりがいや人間関係を含め魅力ある職場環境を整えていくことが求められるのでは」と指摘する。 

*育児支援の充実が一因? 

 苫小牧市立病院に在籍する正看護師は毎年10人ほど増えているが、夜勤が可能な人は2010年度をピークに減少している=グラフ参照。 
9病棟382床のケアに加え、手術や透析を担当する看護師を考えると、260人前後の正看護師が必要だが、20人以上足りない。 
仕事と育児の両立を後押しし、看護師確保を目指したはずの子育て育児支援制度が「皮肉にも看護師不足を招いた一因」(市幹部)との指摘も出る。 

 市立病院では、産休は産前産後に各8週間、育休は最大3年間取得できる。 
09年度には「8時間勤務を週3回」「5時間勤務を週5回」などと、勤務方法を選ぶことができる育児短時間勤務制度も新設された。 

 育休の3年間が明けても、続けて育児短時間勤務制度を活用する人もいるし、その多くは日中の勤務時間を選ぶ。育休期間中に第2子を出産する場合も育休が延長される。 
もちろん育児のためには制度活用が望ましいが、ここ数年は産休と育休、育児短時間勤務制度の利用者が増えたため、結果として夜勤に対応できる正看護師の数が不足している。 

 入院患者数はピーク時でも330人前後で、患者受け入れへの影響は少ないというが、12月には新生児集中治療室(NICU)も現在の6床から9床に増え、24時間体制で配置する看護師の増員も必要。早急な確保策が求められている。