健診ニセ医師、立件へ 十数カ所で担当

2012.09.26

 

健診ニセ医師、立件へ 十数カ所で担当 
2012.09.23朝日新聞  ・・・・・・ 

医療機関としての信頼度を示す国際的な認証を取得している亀田メディカルセンター亀田総合病院(千葉県鴨川市)の亀田信介院長は「国際的には、顔写真付きの医師資格証明書が常識。日本の制度は遅れている」と話す 


 東京都板橋区の民間病院「高島平中央総合病院」で、実在の医師になりすました男が非常勤医師として約2千人の健康診断をしていた問題で、男が関東などの十数カ所の医療機関でも健康診断をしていたことが、医療関係者などへの取材でわかった。警視庁は、医師法違反や詐欺などの疑いで近く立件する方針で捜査を進めている。 


 男が勤務した医療機関の関係者などの話を総合すると、男が医師を名乗るようになったのは2009年ごろ。 
東京や神奈川、長野などの十数カ所の医療機関で、非常勤医として健康診断を担当したとみられる。医師をあっせんする人材紹介会社を通じて契約したケースが多かった。 

 医療機関のほか、首都圏の複数の医療系予備校にも看護師や医師を名乗って勤務していた。埼玉県内の医療系予備校もその一つだ。 

 この予備校には今年3月、経歴詐称の疑いがあるという情報が寄せられた。 
学校側が問いただすと、男との連絡が取れなくなった。 

 6月中旬、男は突然、姿を見せた。 
「実は私は医者ではない」と、土下座をして泣きじゃくったという。何者なのか。 
学校側が尋ねると本名だけ告げて立ち去り、再び音信不通になった。 

 男は一昨年、この学校の講師に採用された。 
「九州の国立大看護学科と山梨県の国立大医学部を卒業し、看護師と医師の資格を持っている」と自称した。その経歴は、学校の広告にも掲載された。 

 短髪でがっしりした体格。さわやかな印象の男は「話がわかりやすいと生徒に好評だった」(同校関係者)という。 

 高島平中央総合病院には一昨年5月、板橋区の委託で実施している健康診断を担当する非常勤医として採用された。 

 男を同病院にあっせんした人材紹介会社の担当者は、男が「健康診断しかやらない」と、一般診療をかたくなに拒むのを奇異に思ったという。 

 関東信越厚生局によると、保険診療を行う医師は、主な勤務先の最寄りの厚生局などに「保険医登録」をする必要がある。男は実在の医師になりすましていたため、不正の発覚を避けるため、保険医登録の必要がない健康診断にこだわったとみられている。 


 ●診断医の確保、あっせん業者頼み 病院側、チェック不十分 

 医療機関はなぜニセ医者と見抜くことができなかったのか。 

 男は、実在する医師の名義の医師免許証のコピーを高島平中央総合病院に提出していた。見た目は本物の免許証と同じだが、生年月日は実在の医師とは違っていた。自分の年齢に合わせるためだったとみられる。 

 厚生労働省は医療機関に対し、医師を雇用する際には医師免許証の原本と戸籍謄本などで本人確認するよう求めている。生年月日などの情報を記録した「医籍」も保管し、医療機関の照会に応じている。 

 同病院は厚労省のインターネット検索システムで身分照会をしたが、このシステムには生年月日のデータがなく、不正を見抜けなかった。免許証の原本での確認はしなかったという。病院幹部は会見で「健康診断を行う医師を常勤で雇うのは難しい。どこの病院も非常勤医が多数だと思う。人材紹介会社を通じての採用が多くなっている」と語った。 

 健康診断は多くの病院で非常勤医に支えられている。男を紹介した人材紹介会社によると、特に春と秋には、企業や学校などの健康診断が集中。病院からの求人が殺到し、一時的に非常勤医の売り手市場になるという。 

 都内の別の人材紹介会社の担当者も「多くの病院は人手不足。健康診断だけを行う非常勤医の身分確認に十分な手間をかけていられない場合もある」と言う。医療関係の人材紹介会社は全国に500社以上あり、「登録時の身分確認が不十分な会社も多い」とも明かす。 

 医療機関としての信頼度を示す国際的な認証を取得している亀田メディカルセンター亀田総合病院(千葉県鴨川市)の亀田信介院長は「国際的には、顔写真付きの医師資格証明書が常識。日本の制度は遅れている」と話す。 

 地域医療に詳しい伊関友伸・城西大教授は「10人程度の常勤医に対して、非常勤が数十人という病院もある。入れ替わりも激しく、大量の非常勤医を管理しきれていない病院もあるのではないか」と指摘する。 

 (奥田薫子、清水優)