倍率が意外と低くてびっくり 夢が広がる「太っ腹な奨学金」4タイプ

2012.09.29

 

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倍率が意外と低くてびっくり 夢が広がる「太っ腹な奨学金」4タイプ 
2012.11.01 プレジデントファミリー 

首席クラスの超成績優秀者でなくても給付型の奨学金をもらえる時代。 

“夢”をあきらめる必要はない。 



医師奨学金 

 医学部志向の高まりは、衰えを見せない。不況下で就職難が続く文系よりは、需要が安定している技術職に就ける理系、その中でも景気に左右されず、地方でも高収入を得られる医師が注目されているわけだ。 

 だが、ネックとなるのが学費。数千万円から1億円近くかかるといわれる私立大医学部の授業料の高さもさることながら、国公立大に行けたとしても6年分の学費が必要になる。 

 生活費も4年制学部と比べ1・5倍となり、自宅外通学の場合は、この支出負担も重くのしかかる。 


医師確保は国レベルの緊急課題だから奨学金もピカイチ 

 そこで注目したいのが、2008年度頃から多くの都道府県が取り組んでいる医師確保のための奨学金制度だ。 

 これは、政府・与党において07年5月31日に取りまとめられた「緊急医師確保対策について」および、同年8月30日の地域医療に関する関係省庁連絡会議において取りまとめられた「『緊急医師確保対策』に関する取組について」に端を発するものである。 

 ただし、金額や具体的な仕組みについては、都道府県によってバラツキがある。 

 東京都の場合、別表のように、医師養成数を増やした三つの私立大学について、09年度から「東京都地域医療医師奨学金(特別貸与奨学金)制度」がスタートした。 
たとえば杏林大学の「東京都地域枠入学試験」に合格し、入学すれば、6年間の修学費3700万円に加え、毎月10万円ずつ6年分の生活費が貸与され、合計4420万円という超大型の奨学金となる。 

 また、加えて、一定の要件を満たせば、返還免除となることから、奨学金によって“私立医大への道”が開かれることは、大きな魅力といえよう。 

 そこで気になる返還免除の要件だが、なかでもポイントとなるのは「医師免許取得後、直ちに小児医療、周産期医療、救急医療、へき地医療のいずれかの領域で、東京都が指定する医療機関に9年間(初期臨床研修期間を含む)、医師として従事すること」。 
この要件に該当しなかったときは、貸与を受けた奨学金に利息(年10%)を付した金額を返還しなければならない。 

 ところで、過疎や高齢化に悩む地方ならともかく、東京都の医師不足を意外に思う向きもあるだろう。 

 東京都福祉保健局医療政策部医療人材課長の馬神祥子氏は、「全体的な医師の総数については、東京都は恵まれているところもあります。 
しかし、小児医療、周産期医療、救急医療における医師確保はなかなか難しいというのが実態です。 
また、東京都にも島しょ部や多摩地区の一部など、へき地医療に課題があるのも事実なのです」と説明する。 

 東京都ですらこうした悩みを抱えているのだから、全国の自治体が医師確保に真剣に取り組んでいることは想像に難くないだろう。 
ところが、医師確保のための奨学金制度が一気に増えたこともあり、募集人員を下回る応募しかない地域もあるという。 

 そうした中、もし自分の希望と条件が合致する奨学金を見つけられれば、これほど幸運なことはない。 
そんな幸運と出会い、自らの力で医師への道をたぐり寄せたのが、岐阜大学医学部に通う西尾志織さんだ。 


全国くまなく探せば夢と条件が合致する奨学金は必ずある 

 西尾さんが利用しているのは「東濃地域医師確保奨学資金等貸付制度」。 
岐阜県の多治見市・瑞浪市・土岐市・中津川市・恵那市という隣接する5市が共同で08年度から開始した。 
「指定医療機関で働くこと」などの条件をクリアすればいいもので、現在、東京都出身で九州の大学に通う奨学生もいるなど、門戸は広い。 

 同奨学金制度の貸付金額は、最高で月額20万円を6年分と、入学時の60万円で合計1500万円。親元を離れ、国立大に通う西尾さんによれば「学費と生活費を十分にまかなえる」金額だという。 

 これほど魅力的な奨学金制度であるにもかかわらず、11年度は、5人の募集人員に対し、2人の応募しかなかったという(追加募集で1人増)。 

 同奨学金制度の実務を行う東濃西部広域行政事務組合事務局長兼総務企画課長の渡辺武彦氏は「全国でもいち早く医師確保のための奨学金制度に取り組んできましたが、各自治体の奨学金制度が充実する中、ややもすると情報に埋もれ、医師志望者の目に入らないケースも生じています。 
PR活動の見直しを行った12年度は、なんとか予定人員以上の応募者を集めることができました」と現状を説明する。 

 医学部合格者は地域にとって金の卵。両者のマッチングが成功すれば、これ以上ない実を結ぶことになる。 



海外留学 

 卒業生約450人のうち、進学先は京大81人、東大17人、一橋大10人、慶應大38人、早大10人、そして海外の大学へ約200人近く--。一風変わった名門高校のような実績だが、じつはこれ、ユナイテッド・ワールド・カレッジ(以下、UWC)日本協会が、イギリス、イタリア、カナダ、アメリカ、インドなど世界13カ国にあるUWCに送り込んだ高校生の進学実績である。 

 UWC日本協会の活動を支援しているのは日本経済団体連合会(経団連)だ。社会広報本部主幹の長谷川知子氏は「UWCはイギリス発祥で、ロンドンに本部があります。経団連に協力要請があったのは、チャールズ皇太子が2代目の会長に就任していた時期。イギリス政府も全面的にバックアップしており、経団連もその趣旨に賛同。1972年に日本協会を立ち上げたのです」と説明する。 


経団連の支援で日本から数多くのグローバル人材を育成 

 UWCへの留学期間は、日本における高校2年の8月上旬ないし9月上旬から約2年間。短期の語学留学などとは明らかに一線を画しており、日本を含む多くの国で大学入学資格として認められている国際バカロレア(IB)にのっとったカリキュラムが組まれている点が最大の特徴だ。 

 したがって、海外の大学へ進学するのに適しているのは言うまでもないが、日本の大学へ進学する場合は、帰国子女特別選抜制度が用意された京大、慶應大などへの進学が多くなる。 

「産業界としては、グローバル人材の育成という観点からUWCへの期待感は大きく、事実、外国語能力だけでなく異文化への理解や対応する力などを身に付けた人材が多数輩出されています。日本の高校でもIB導入の動きは加速しており、今後5年間でIB認定校およびIBに準じた教育を行う高校が200校にまで拡大するといわれている点は注目されます」(長谷川氏) 

 世界120を超える国から選抜された高校生を受け入れているUWCは、全寮制の教育を通じて国際感覚豊かな人材を養成することを目的とする民間教育機関だ。もし授業料や寮費など全額を自己負担でとなれば、2年間で数百万円に及ぶ費用が必要となる。 

 そこで、UWCおよび同日本協会が授業料と寮費の全額、またはその一部を負担する奨学生制度が用意されている。2012年度奨学生の場合、カナダ、イタリア、オランダにあるUWCの奨学生には授業料と寮費の全額が、イギリス、アメリカ、香港、インドにあるUWCの奨学生には授業料と寮費の一部が免除される道が用意された。 

 前者の場合は約420万~600万円が奨学金相当額となる。個人負担は事務費分担金の約30万円のほかは、往復旅費、小遣い、休暇中の生活費、査証取得費用、雑費などを用意するだけでいいのである。奨学金はもちろん給付型であり、返還不要だ。 

 とはいえ、UWCの選抜試験にはレベルの高い生徒が集まるので、奨学生の座を勝ち得るのは必ずしも簡単ではない。まず、応募するには、所属学校長の推薦が必要だ。12年度の募集では、全国から約90人の応募があり、1次試験となる英語・国語・数学の学科試験に合格したのは約30人。そこから、1日本語による面接、2英語による面接、3日本語によるグループ・ディスカッションなどが課される2次試験により、約10人に絞り込まれた。 


チャレンジしがいのある最高で約600万円の給付奨学金 

 ところで、UWCへ進学するとなると、日本の高校は「1年次修了」で終わってしまうことになる。また、卒業時期や大学の入学時期が半年から1年遅れとなる。せっかく名門高校に進学したのが無駄になるのではないかと考える向きもあるだろう。 

 麻布高からUWCの英アトランティック・カレッジへ進んだ大坂俊裕さんは「むしろ、日本の高校では3年生ともなると受験勉強に集中する形になることに、疑問を抱いていました。だから不安よりも、UWCのIBのほうが魅力的に見えたのです。また、おぼろげながら、海外の大学に進むことになるのだろうなとの考えもあり、卒業の時期が日本の同級生とずれることに不安はありませんでした」と語る。 

 大坂さんはUWC卒業後、アメリカのウェズリアン大学に進み建築を学んだ。じつはこのときもフリーマン財団奨学金によって、学費の心配はなかったという。奨学金の手助けを受けることにより、高校から大学まで、思い通りの道を歩むことができたわけだ。 



名門私立大学 

 なにかと好敵手として語られることの多い慶應義塾大学と早稲田大学。私立大の中では人気も二分する存在だが、国公立大に比べ高めの学費は、受験生やその親たちの悩みどころでもある。 

 ところが、私立大の中でも群を抜いて奨学金が充実しているのも両校の特色。これを利用すれば、学費の心配が一気に解消する場合もあるだろう。 

 奨学金をめぐる両校の事情は、とても似通ったところが多い。それは名門であることの証しともいえるものだ。 


給付型奨学金を得られるチャンスもトップクラス 

 まず第一に、学内奨学金が充実していること。とくに、慶應義塾の場合は三田会、早稲田の場合は校友会といった卒業生組織からの支援による奨学金制度が数多く用意されているのである。しかも、すべて返還不要の給付型だ。 

 かつて給付型の学内奨学金といえば、「首席クラスの“超”成績優秀者でなければもらえない」とのイメージがあったかもしれない。だが、今は違う。 

 たとえば早稲田の場合、2010年度の全ての学内給付奨学金の採用者は、なんと7239人にも上る。 

 慶應義塾でも卒業生支援等による奨学金は年々増えており、学内奨学金だけでも約30種を数える。たとえば卒業生などを中心に会員数約4万4400人に上る慶應義塾維持会では、07年度に奨学金を創設し、これまでに353人を採用。文系学部が年額50万円、医学・理工系学部が年額80万円を支給されている。 

 慶應義塾基金室課長の木村明子氏は「維持会奨学金には卒業生から後輩の学生へと支援の輪がつながっていく重みがあります」と語る。 

 早慶両校の奨学金をめぐる第二の特徴は、民間財団などから奨学金を得られる機会が多いこと。つまり指定校とされることが多いのだ。採用条件となるハードルは高くても、かなり高額な奨学金を得られるケースも少なくない。 

 そして第三の特徴は、地方学生をいかに取り込むかが、両校の喫緊の課題となっている点である。両校とも東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県という1都3県出身者の割合が一段と増え、本来の特徴である多様性が失われかねない状況にあるというのだ。 

 地方受験生の地元志向、国公立大志向がその背景にあるが、言うまでもなく、家庭収入の悪化がその傾向をより強めている。そこで両校とも、1都3県以外の受験生や学生を対象とした奨学金を年々充実させてきている。とくに注目したいのが、入試前に申し込んで奨学金の内定を得る、予約型奨学金制度創設の動きである。内定者は、お金の心配をすることなく入試に臨めることが、大きな励みとなるはずだ。 

 早稲田の「めざせ!都の西北奨学金」の場合、給付金は年額40万円。これにより、国公立大との学費の差はグンと縮まる。そして採用候補者数はなんと約500人。 

 早稲田大学学生部奨学課長の鈴木勉氏によれば「新設して4年経ちましたが、採用者は毎年増えています。これまでは、評定平均値と家計収入の条件を満たしていれば、ほぼ全員に内定が出ています」とのことだ。 

 一方の慶應義塾は、採用予定者数こそ早稲田より少ないものの、給付年額は60万円(医学部90万円、薬学部薬学科80万円)と上回る。また、地域ブロック別採用をしているところに特徴がある。 

 これについて慶應義塾大学学生部福利厚生支援グループ課長の小塚喜之氏は、「これまで合格・入学実績の少ない地域でも、ちゃんと枠があることを示す意図があります」と説明する。 

 給付型奨学金は貸与型と違い、卒業後の返済の心配から解放されるため、健全な学生生活を送るうえでメリットが大きい。アルバイトに追われる生活を避けることもできる。私学の雄「早慶」に入学することで得られる恩恵は、こんなところにもあるのだ。 



フルブライター 

 今年5月、日米フルブライト交流プログラムの60周年を記念して開催されたシンポジウムにおいて、基調講演の檀上に立ったのは、ノーベル化学賞受賞者の根岸英一博士だった。根岸さんはフルブライト留学生としてペンシルベニア大学で有機合成化学の博士号を取得した経緯がある。 


フルブライターになれば受け入れる大学側の見る目が変わる 

 ほかにも、フルブライト留学生の活躍はじつに華々しい。ピューリッツァー賞受賞者や、大臣、大使、国会議員、学長・教授、芸術家などそうそうたる顔ぶれが並ぶ。学者や研究者だけではなく、ビジネス界でも多くがリーダーとして活躍している。 

 フルブライト奨学金を得られるとフルブライターと呼ばれ、それだけでも栄誉なことだが、さらにビッグチャンスが広がる可能性が高いのだ。 

 そのサポート内容は超ど級。全額支給が基本であり、往復渡航費(現物支給)、生活費(留学先により金額が異なる)、授業料(大学院留学プログラムのみ)および家賃、着後雑費、別送荷物、同伴家族に対する補助手当てなどが奨学金に含まれる。ただし、例外はあるものの、こうしたサポートを受けられるのは、長くても1年まで。奨学生となれるのは、大学院生や研究者、学者、企業で働く人などだ。 

 日米教育委員会フルブライト交流プログラム・マネージャーの岩田瑞穂氏は「戦後間もない創設当初からしばらくは、学位を目指すものではなく、1年間アメリカを見てくることに主眼が置かれていました。今も学位取得は必要条件ではありませんが、修士や博士を目指す人が多いのも事実。1年目のきっかけづくりとしての役割を果たしているわけです」と現状を説明する。 

 事務局長のデビッド・H・サターホワイト氏は「フルブライト奨学金を得られることが決まると、アメリカの大学院に合格するための評価が格段に上がり、一目置かれます」と語る。 

 また同氏によれば、博士課程の場合、1年目に本人が努力すれば、2年目以降は最後まで、学校側が学費をすべてカバーしてくれることが多いという。つまり、フルブライト奨学金を受けられる期間はわずか1年でも、それこそが、夢を実現するための大きな入り口になるというわけだ。 

 一方、MBAなど修士レベルはそうはいかない。サターホワイト氏は「学校が修士課程の院生に奨学金を出すことはとてもまれです。その時期に借金をしても、学位を得た後に昇進したり起業することで高い収入を得られるのだから、それで返せばよいという発想です。企業派遣でない場合、何らかの資金計画が必要となります」という。 

 毎年約50人のフルブライターが日本からアメリカへ渡っているが、フルブライト奨学金受給が大きく羽ばたくきっかけとなっているのも事実で、超エリートだけが選ばれるわけではない。「夢を実現するために何を勉強したいかを具体的に提案でき、将来性のある人」にこそチャンスがあるそうだ。 



日本学生支援機構の貸与人数・金額はうなぎ上り 


 旧・日本育英会の奨学金事業などを引き継ぎ、2004年に設立されたのが日本学生支援機構だ。その奨学金は、返還義務のある貸与型である点、大学生に最も多く利用されている点が最大の特徴である。また「第一種」と「第二種」に分かれており、財源が異なる。 

 第一種は無利子での政府貸付金、すなわち税金などを財源としているため、奨学金にも利子はつかない。ただし、国家予算内で割り当てられる総額には、当然限りがある。このため「高校の成績が5段階評価で平均3.5以上」「申込の前年1年間の家計収入が955万円以下(4人世帯・私立大学の場合、金額は条件により異なり、あくまで目安)」などといった基準を満たす必要があるのだ。 

 第二種は、有利子資金を調達して財源としているため、奨学金にも利子がつく。最大3%と定められており、近年は1%前後の状況が続いている。また、資金は比較的調達しやすいため、総額も融通がきく。貸与基準は、たとえば「学修意欲があり学業を確実に修了できる見込みがあると認められること」「申込の前年1年間の家計収入が1207万円以下(目安)」などと、緩やかなものとなっている。 

 なお制度の仕組み上、第一種、第二種のいずれにおいても、返還金が大きな財源となっていることは、決して忘れてはならないだろう。 

 貸与金額は、第一種は大学か短大(専修・専門)か高専かなどによって分かれており、さらに国公立か私立か、自宅か自宅外かで細分化されている。たとえば、国公立大の自宅なら月額4万5000円、自宅外なら5万1000円、私立大の自宅なら5万4000円、自宅外なら6万4000円といった具合だ。第二種は、私立医・歯・薬・獣医学系などの例外を除けば、月額3万円、5万円、8万円、10万円、12万円から選択する形となっている。返済期間は貸与額などによって異なるものの、13~20年といったところだ。 

 貸与金額が多ければ、返済負担が重くのしかかるのは自明の理。貸与型奨学金を利用する際の難しさはここにある。 

 ちなみに2010年度の大学等の貸与月額別貸与者数の割合は、3万円が8.1%、5万円が39.2%、8万円が21.6%、10万円が20.3%、12万円が10.2%。平均貸与月額は約7万2700円だ。 

 もし月額8万円を4年借りると総額は384万円となり、これをたとえば年利3%で20年かけて返還する場合、返済月額は2万1531円となる。 

 一見、無理のない返済金額のようにも見えるが、20年という歳月は長く、精神的な負担は軽いものではないだろう。また、その途中では住宅ローンや自動車ローン、さらには自分の子供の教育費もかかるのだ。一方、貸与型奨学金のよさを指摘する向きもある。お金を借りて勉強をし、卒業して返還することで次代の学生の奨学金を提供することは、社会貢献そのものとの見方である。学生時代からそうした社会との関係性を意識することは、大人への第一歩として役立つというわけだ。