福岡県/プラスアングル=開院から23年 福岡市民病院 独法化で初の黒字に スタッフ増員 コスト削減

2012.08.07

福岡県/プラスアングル=開院から23年 福岡市民病院 独法化で初の黒字に スタッフ増員 コスト削減 「高度専門医療」特化が奏功/福岡都市圏 
2012.08.05西日本新聞   


 福岡市民病院(福岡市博多区吉塚本町、200床)の2011年度決算で、医療での収入と支出の差を表す「医業収支」が開院から23年で初めて黒字になった。全国の自治体病院が経営難に苦しむ中、なぜ黒字化できたのか。背景を探った。 


 病棟5階の片隅に「SCU」の看板がかかる。10年春に新設した脳卒中集中治療室だ。 
脳梗塞など重症患者のみを受け入れ、6病床を看護師2人が常時付き添ってケアする。7月に入院した矢野義実さん(56)は「一つ一つの対応が丁寧で安心感がある」と話す。 

 患者3人に対して看護師1人を配置したことで、脳梗塞1症例当たりの入院費用は、09年度の約54万円から11年度は約105万円にほぼ倍増。 

患者負担は増した形だが、その分、医師の増員などスタッフが充実。脳卒中の救急搬送者は09年度の707人から、11年度は925人に増えた。竹中賢治院長は「高度専門医療機関としての性格を強めたことが収支改善につながった」と説明する。 

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 高度専門化できた背景には経営主体の変更がある。 

 病院は1989年に市の直営で開院。大規模病院が集積する都心部に位置し、経営面では苦戦を強いられてきた。雇用や給与の改定には市議会の議決などが必要で、竹中院長は「直営時代は職員1人採用するのに2年近くかかった。足かせが多く、病院の特色を出しづらかった」と振り返る。 

 10年4月に経営主体を市から地方独立行政法人に移行。医療スタッフの増員や組織改編が容易にできるようになった。 

 独法化後の2年で医師6人や看護師55人など計81人のスタッフを増員し、10年度にSCU、11年度にはCCU(冠動脈疾患集中治療室)を新設。 
24時間、脳外科や神経内科の医師が常駐し、他の診療科と協力して診断・治療する体制を整えた。 

 これに伴い、受け入れる患者を救急搬送とかかりつけ医が紹介した重症患者に特化。 
初診患者に占める割合は09年度の63%から11年度には80%に増えた。 
病院全体の入院患者数は09年度の3945人から11年度は4386人まで増加した。 

 重症患者の増加で、1人当たりの入院診療単価は09年度の日額約4万6千円から約1万1千円増え、11年度の入院収益は、09年度に比べ年間約8億円もアップした。 

 スタッフ増強に伴い、人件費は09年度より約4億円増えたが、独法化で資材購入時に業者と自由に価格交渉できるようになり、薬や注射器などの「材料費」の削減に成功。 
09年度に約4億4千万円の赤字だった医業収支を、1億円近い黒字に転化できたという。 

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 「福岡市民病院は、都心部にあることで専門特化をスムーズに行えた面がある」。 
地域医療に詳しい城西大(埼玉)の伊関友伸教授は分析する。 

 長崎県佐世保市の西端に位置する北松中央病院は、05年に国内で初めて独法化したが、医師の確保に苦しみ、04年に3人いた常勤外科医がゼロに。入院患者は7年間で約2万人減り、医業収支も年間約1億7千万円の赤字という。 

 福岡市民病院も本業で黒字化したとはいえ、建設費などの“借金”があり、市から年8億円超の運営費負担金を受けている。伊関教授は「収益の改善に加えて、公的な病院として民間病院との違いや特色をどこまで出せるかが課題だ」と指摘する