小児科医不足 止まらない 医師会、負担軽減へ一歩=埼玉

2012.08.12

小児科医不足 止まらない 医師会、負担軽減へ一歩=埼玉 
2012.08.10読売新聞  


 県内の小児科医不足が深刻だ。子ども(15歳未満)10万人当たりの小児科医数は73人で、全国ワースト3番目。 
志木市立市民病院が小児科の入院受け入れを今月から休止するなど、厳しい状況が続く。背景を探った。(矢野由希子) 

 ■忙殺の日々 

 7月31日午後。高層住宅が林立する川口市栄町の31階建てマンション2階に、眼科や整形外科など、八つの診療所が入った医療モールがある。その一つが小児科「あかちゃんとこどものクリニック」だ。 

 診察終了の午後5時まで、発熱やせきといった風邪の症状で苦しむ乳幼児と母親が次々と訪れる。 
午前9時から診療する田中秀朋(しゅうほう)院長(46)は「忙しい日は、1日に100人以上診察する」と話す。 

 1994年から13年間、近くの総合病院で新生児と小児医療に携わってきた経験を生かし、2007年に開院した。 
急患も受け入れる総合病院は今以上の忙しさで、体調を崩し、退職を決めた。 

 県内の小児科医は10年現在、1467人。子ども10万人当たりの数でみると、東京都(143・5人)の半分だ。小児科を掲げる病院数は10年前に比べ、4分の1減った。 

 ■制度改正で拍車 

 小児科医不足は、臨床研修制度の改正が拍車をかけた。研修医が病院を自由に選べるため、都内の病院に人気が集中。 
診療科では「皮膚科や眼科が増えたが、小児科や外科、救急医療は敬遠されている」(県関係者)という。 

 このため、小児救急の現場では人手不足が慢性化した。病院勤務医の負担が増し、疲れ切った医師が病院をやめ、残された医師の負担が増える「負の循環から逃げられない」(金井忠男・県医師会会長)状況だ。 

 志木市立市民病院のほか、さいたま赤十字病院(さいたま市中央区)でも後任の小児科医が確保できず、9月以降の入院受け入れ中止が秒読み。 
より深刻なのは県北部で、熊谷、深谷、児玉地区では、より高度な医療を必要とする小児2次救急の輪番が組めない。 

 ■東京一極集中 

 医師の確保も東京一極集中が進み、その他の地域間の競争は激しくなる一方だ。 

 県医師会は今年度から、県外の大学病院や公立病院を回り、退職間近のベテラン医師を県内の病院に呼び込む取り組みを始めた。 
また、妊娠や出産などで退職した女性医師を調べ、短時間勤務など働き方の希望を聞き取り、県内の病院にあっせんしたりもする。 

 将来は、県や県医師会が医局の機能を担い、医師を計画的に配置したい考えだ。 

 さいたま新都心には、小児救急と総合周産期の拠点となる新病院の建設が予定されている。 
県病院局は「埼玉の小児医療のシンボルとなる病院ができれば、若手医師を呼び込める」と意気込むが、金井会長は「行政はハードだけでなく、医師の負担を減らし、地域で医療を守るソフトの充実も進めてほしい」と指摘する。