暴かれた地域医療の実像

2012.08.20

暴かれた地域医療の実像/伊藤恒敏氏 


伊藤恒敏氏は東北大学医学部教授で、銚子市が病院再開に向けて設置した「銚子市病院事業あり方検討委員会」や「銚子市立病院事業指定管理者選定委員会」で委員長を務められた方である。 
銚子市立病院のこれまでの経緯を「暴かれた地域医療の実像」という著書にまとめられている。 



伊藤氏が2011.10.1に青山の国際福祉大学で開催されたセミナーで、 
「暴かれた地域医療の実像―銚子市立病院『事件』は何を語るか」と題された講演を行った 
このときの映像がYouTubeで公開されている。 
長い講演およびその後の質疑応答を8つに分割してアップしてある。 



再生機構のブラック組織認定 


12月銚子市議会での赤字補填予算案の否決は、銚子市立病院再生機構へのブラック組織認定判決である。 

再生機構の経営の不透明さはこれまでも一貫して指摘され続けてきた。 
再生機構はグレーな組織と見なされながらも、これまではお手並み拝見という感じで様子を見られてきた。 

しかし再生機構はこれまでこうした不透明な経営という指問題に対し、何ら解決策を出すことはなかった。 
またその放漫経営についても解決策を出せずにきた。 
何か問題が起きても、野平市長がどうにかしてくれると考えてきたのではないだろうか。 
実際、今回も市議会での予算案否決にも関わらす野平市長の原案執行という議会無視の決定で救われた形である。 

9月の市議会での赤字補填案への反対議員はまだ6人に過ぎなった。 
しかし12月の市議会では反対議員が11人に昇り議案は否決された。 
この間に何らかの経営努力がみられたのなら、致しかたないと賛成する議員もいたと思う。 
しかし何ら努力も改善もみられない。 
今回の否決決定は、その経営手法や存在自体に対する疑問がどんどん膨らんできた結果である。 
つまり再生機構は市議会から、ついにブラック組織と認定されたのだ。 

これまでは多くの市議が野平市長の文言を多少疑いながらも、市立病院の再生のためとの名目で市長案に賛成してきたのだろう。 
しかしそうして信じてきた議員達の中からも、「やはりこの組織はおかしい」と気付く議員がだんだん増えてきたということなのだろう。 
今回反対票を投じた議員達も病院の廃止を望んでいるわけではないはずだ。 
むしろ病院の公明正大な発展を望んでの反対票だと思う。 
再生機構はこの結果を真摯に受け止めて、猛省を求めたい。 
12月の議会で反対票を投じた議員が、将来再び賛成に回ってもらうためには、大胆かつ本質的な組織改革が必須である 



「銚子市立病院の入院再開」 

平成23年3月29日 定例記者会見 
 銚子市HP最終更新日: 2011年08月04日 

(市立病院再生機構 白濱理事長) 
 銚子市立病院では、平成23年3月31日から入院を再開することになりました。 
再開する病床数は53床です。 
  
入院の再開にあたり、3月から4月にかけて新たに入職するスタッフは、常勤医師が5名、看護職が10名、医療技術者が4名、看護助手が6名です。 
  
3月31日に1名の患者さんの検査入院が予定されていますが、3月から4月にかけては、新しい医師および医療スタッフが多く入職するため、オリエンテーションを実施する予定です。 
そのため、4月当初の1週間は、一般の入院患者の受け入れはしないつもりです。病床を本稼動するのは、4月7日ぐらいを予定しています。 
  
市立病院の入院再開を望む声は多く聞いていますので、今後も旭中央病院と連携を図り、同病院から入院患者の紹介を受けるなど、さまざまな連携策を講じられるように努めていきたいと考えています。 

 また、現在、市立病院の当面稼動しない病床を利用して、東日本大震災の被災者の中で入院を必要とする方々の受け入れについて、可能かどうか検討を始めています。 
 医師および医療スタッフについては、私(白濱氏)が理事長を務めるIEMS-JAPAN(International Emergency Medicine and Health Support , Japan:NPO法人国際緊急医療・衛生支援機構)に所属する方々の協力を得て進めていくことになると考えています。 
 なお、入院を必要とする被災者を受け入れる場合には、現在の入院施設の整備を行う必要があります。 

 そのほか、平成23年度から休日当番医に参加する予定です。 
 救急については、まず第一段階として一次救急の受け入れ、その後、他の医療機関と連携を図りながら二次救急への対応を目指していきたいと考えています。 



銚子市立病院と日大練馬光が丘病院が示す「現実を直視しない経営」 


 医療ニーズが少ないのに自治体が自前の病院を持つ一方、医療ニーズが多いのに大学が病院経営から撤退──。地域医療のあり方を考えさせられる病院の危機が相次いで起きている。 

一つは、昨年5月に再開した銚子市立病院(千葉県銚子市)の危機。轟健院長が10月末に退任し、1年半で3人の院長が交代することになる。 
8月に副院長も辞めており、轟院長の退任で常勤医はこれまでの7人から5人に減り、病院運営は今まで以上に厳しくなる。 

同病院の前身である銚子市立総合病院は2008年、市の財政難などを理由に休止。 
医療法人財団「銚子市立病院再生機構」の公設民営によって、10年5月に診療を再開した。 

当初は、機構の理事長の笠井源吾氏(元済生会神栖済生会病院院長)が院長に就いたが、3カ月後の昨年9月に院長と理事長を退任。 

副理事長だった白浜龍興氏(元自衛隊中央病院院長)が機構の理事長に昇格、院長を兼務した。 

2カ月後の昨年11月に轟氏(元北茨城市立総合病院院長)が院長に就いたが、1年での退任となる。 

市病院再生室によると、「任期1年の契約を延長しないことにしたと機構から聞いている。 
後任の院長については聞いていない」と話す。 
市議などの間では、同機構の任命責任や説明責任、密室体質を問う声がある一方、轟氏が前職の北茨城市立総合病院院長職を1年半ほどで退任していることから、轟氏の移り気な姿勢を批判する声もある。 

銚子市立病院は年度当初、赤字を1億3200億円と見込んでいたが、入院患者の伸び悩みなどから3億5200万円に膨れ上がる見込み。 
市は赤字補正のため2億4200万円を一般会計から繰り出すことになった。 
今年3月に入院ベッド53床を開設し、12月から100床に増床する計画だったが、実現は難しい。 

銚子市の人口は約6万9000人で、人口減少率は千葉県内3位。近隣の旭市や茨城県神栖市などに雇用や商圏が移り、銚子市立総合病院が休止中に患者も総合病院国保旭中央病院などに移っている。 
人口や入院患者が減少し、財政が厳しい中で、果たして銚子市は自前の病院を持つ必要があるのだろうか。 

千葉県の医療機関関係者は「銚子市立病院は旭中央病院のサテライトになり、医師を派遣してもらえばいい」とアイデアを述べる。 

旭中央病院は銚子市の南に隣接する旭市内にあり、病床数989床、職員数約1900人の大病院。 
しかし、「実際は無理だろう」とあきらめ顔だ。「市長は選挙公約で病院再開を約束して当選した。 
ほかの自治体でも見られることだが、首長は自前の病院を持ちたがる。 
見えが邪魔をして、隣の市の病院の風下に立つことなどできないだろう」。 


もう一つの危機は、日本大学が7月に突然発表した、練馬光が丘病院(東京都練馬区)からの撤退。 
区内は病院不足なため、地域住民の不安と反発を招いた。 
同区は9月、自治医科大学の卒業生らで組織する公益社団法人「地域医療振興協会」を病院の後継法人として決定したが、動揺は収まらない。 

日大は撤退の理由として、同病院の累積赤字が90億円にのぼることを挙げる。 
しかし、事情通は「日大医学部附属病院は独立採算制ではなく、日大全体として毎年度会計処理されるため、累積赤字はほとんどない」と話す。 
しかも、病院の経営努力などにより、今年度は黒字化目前だった。 
それでも撤退する理由として、「日大でワンマン経営をしている田中英壽理事長が独断で決定した」。 
  
地域医療にかかわる医療関係者も「大学病院の主な目的は教育と研究。地域医療について考えていない大学病院は少なくない」と打ち明ける。 
くしくも、銚子市立総合病院休止のきっかけとなったのは、日大医学部の医師引き上げだった。 
銚子市立病院の危機も日大の練馬光が丘病院撤退も、いずれも地域の現実を直視しない経営姿勢が共通している。 

集中|MEDICAL CONFIDENTIAL病院経営者のための会員制医療情報誌|月刊『集中』(2011・11) 




カテゴリ野平市長と病院問題2011年09月29日 
光を目指して 

不可解な轟院長の“退任劇”、および「銚子市立病院再生機構」の東京事務所の存在理由について 


銚子市立病院の轟院長が10月末で退任するといいます。 
病院運営の指定管理者である「銚子市立病院再生機構」が9月9日に開いた理事会で轟院長の契約延長をしないことが決まり、銚子市に同機構から後日連絡が入ったというのです。 
轟院長は昨年の11月に院長に就任していますが、氏の院長就任以来、市立病院の外来患者数は急増しており、この8月には月間で4100人を上回りました。 
これは再開当初の昨年5月の月間196人と比較しても20倍を優に超えるものです。 
また、今年の4月には入院病床が53床で再開され、医療スタッフの充実もすすみ、再開当初の常勤医師1名、非常勤医師9名の10人体制から、今年の7月には常勤医師7名、非常勤医師20名の27人体制となり診療体制の拡充がはかられました。 
轟院長の就任後の市立病院の軌跡をひと言で表せば、短期間に地域を代表する中核病院へと成長したことであり、轟氏が院長としてこの間の病院の成長に貢献した功績は市民が等しく認めるところとなっています。 

ところが9月には入るや、指定管理者である「銚子市立病院再生機構」からは轟氏の契約を延長しないことが唐突に発表されました。 
これは本人の意に反して契約を不更新としたものであり、退任とはいうものの事実上の「解任」に他ならず、この間の氏の実績を考えれば摩訶不思議な人事というほかはありません。 
またこの際に、なぜ轟氏を退任させたかについての説明が銚子市側へはいっさいおこなわれておらず、後任の院長をはじめとした今後の対応についても何の説明もなかったといいます。 
この事態にはさすがに銚子市側も「重大な事態であり、今後の対応を注意深く見守りたい」とコメントせざるをえませんでした。 

さらに轟氏の退任が決まった途端に、野平市長が個人ブログで現職の院長である轟氏を批判するといった出来事もおこりました。 

これはダンマリを決め込む「銚子市立病院再生機構」の立場にたって今回の不可解な退任劇を援護射撃したものであり、本来であれば市長たるもの、市民が信頼する院長を「解任」したことにたいする説明責任を機構側に求めるべきであったのです。 

市民の側に立ちその代弁者となるべき現職の市長が、逆に機構側に立ってそのスポークスマンとしての役割を果たしたところに今回の退任劇の特長があります。 

これで病院再開後の1年半で早くも3人目の院長交代となり、現職市長がブログで現職の院長を批判したことも含め、銚子市立病院再生にとっては大きなマイナスの情報発信となってしまいました。 

また、8月には内科の常勤医である副院長が辞めています。 
これで外科の常勤医である轟院長の退任と合わせれば常勤医が7名から5名と減少することとなり、内科と外科という基幹科目の常勤医にいたってはゼロとなりかねません。 
また、院長の後任の目途や内科と外科の常勤医の確保の見通しも定かではなく、これでは病院再生にあたっての悲願である2次救急医療の実現も遠ざかるばかりです。 

市立病院再生機構の東京事務所の本当の存在理由とはなにか! 
さて、「銚子市立病院再生機構」には東京事務所がありますが、専門家筋からは「東京事務所の存在は市立病院が医師の確保について二つの人材派遣会社に委託しているようなもの。 
元請が東京事務所であり、下請けが医師・人材派遣会社である。これでは屋上屋のシステムとなり、二重の経費支出とならざるをえない。直接、人材派遣会社に委託したほうがはるかに経費節減となる」との指摘がされています。 

東京事務所の本当の存在理由は“野平ファミリー”である東京事務所の事務員3名に一人当たり50万円の給料を保証すること、並びに東京事務所に関わる同ファミリーの理事3名には一人当たり80万円の報酬を保証することにあるのではないでしょうか。 
また、副理事長にいたっては給料と報酬の二重取りをしていると聞きます。そして、いくら市立病院の経営赤字が膨らんでもこれらの方々の経営責任は問われず、理事報酬の減額はされず、身銭は一銭も切りません。 
このためにこそ東京事務所の存在は必須のものであり、欠かすことができないのではないでしょうか。 



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