3病院経営統合の本格論議始まる 峡南地域北部/山梨県

2012.08.21

 

 

(ウイークエンド・リポート)3病院経営統合の本格論議始まる 峡南地域北部/山梨県 
2012.02.11朝日新聞   


 峡南地域北部の医療連携をめざし、3病院の経営統合について本格的な論議が始まっている。 
市川三郷、富士川両町などによる任意の新病院設置協議会が昨年末に発足。 
今月から運営形態や医療体制の話し合いに入った。両町のどちらに主要拠点を置くかが焦点になる。 


 ●医師不足、乗り切れるか 

 都市部に比べ、医師不足が指摘される山梨県。 
なかでも峡南地域は深刻だ。 
2010年12月末時点で、人口10万人あたりの医師数は全国平均219人、県全体は209・7人。これに対し、南部を含む峡南地域全体で108・6人と半分ほどしかいない。 

 医師の不足は地域の救急医療体制や、市川三郷町立、社会保険鰍沢の両病院の経営に影を落とす。 

 峡南地域で08年に救急搬送された2013人のうち、地域内の医療機関で診察できたのは、7割の1379人。 
医師が足りず、搬送を断らざるをえないことが少なくないからだという。 

 今年度の3病院の常勤医は鰍沢9人、市川三郷町立8人、峡南3人。 
鰍沢は09年度から内科の常勤医がおらず、入院患者の受け入れを停止している。 

 このため病床利用率(10年)は市川三郷町立が55・0%、鰍沢にいたっては37・4%と大きく半分を割り込む。 
累積赤字(10年度決算)は市川三郷町立が約6億円、鰍沢は約25億1千万円にのぼる。 


 ●「拠点施設」綱引きも 

 県医務課は「急に医師を増員できない現状では、このままでは立ちゆかなくなってしまう恐れがある」と指摘する。 
経営統合は、少ない医師らを有効に配置し、救急医療の立て直しを図ろうというもの。 

 協議会の前身、検討委員会で昨年示されたシミュレーションのひとつでは、鰍沢か市川三郷町立のどちらかが、150床の「主たる機能」を担う。 
もう一方の病院は、30床の療養病床病院に転換するとしている。 

 新病院の機能分担はこれから決まるが、鰍沢は1999年、現在地に新築されたばかりで、災害拠点病院にもなっている。 
築30年以上経った市川三郷町立よりも、主要な拠点施設として有力視されている。 

 このため市川三郷町の住民のなかには、統合に慎重な意見がくすぶる。 
昨年10月には有志が町立病院の存続を求め、署名約3800人分を久保真一町長に出した 
。ある男性(70)は「今のような総合病院として残ってほしい」と話す。 

 シミュレーション自体は、あくまで計算上の極端な想定だ。 
しかし統合のメリットを生かすには、診療科の整理など機能の集約は避けられないとみられる。 


 ●新年度には基本構想 

 協議会は1月30日、富士川町役場で2回目の会合を開き、三つの専門部会を設けた。 
各部会での議論を経て、3月末をめどに、新病院の基本的な役割分担などを決める方針だ。 
残り2カ月を切り、この間は各部会を月2、3回のペースで開くという。 

 さらに4月からの新年度には基本構想をまとめ、新病院設置のための一部事務組合を立ち上げる。 
翌13年度にかけ、鰍沢病院の譲渡の手続きをして、14年4月、新体制での病院運営をめざす。 

 県医務課の山本盛次課長補佐は「各病院の特徴を生かした役割分担が必要になる。 
スケジュールはタイトだが、地元で議論を尽くしてほしい」。 
協議会会長の久保町長は「日程的にかなり苦しいが、努力目標として決めた。峡南北部の医療再生のため力を尽くしたい」と話している。 

 (岩城興) 


 ◆キーワード 

 <峡南地域北部の新病院設置協議会>  

市川三郷町立病院(100床)、 

富士川町にある社会保険鰍沢病院(158床)と 

峡南病院(40床)の経営統合を協議する。 

両町の町長、議会代表、3病院の院長ら委員24人で構成される。 
2010年9月に両町で検討委員会を設け、11年4月に「経営統合が望ましい」と意見集約。 
両町の決定を受け、昨年末に発足した。 

 鰍沢病院は現在、社保病院などを整理・売却する独立行政法人「年金・健康保険福祉施設整理機構(RFO)」が保有する 
。RFOは14年6月末までに、新しい独法「地域医療機能推進機構」に改組されることが決まっている。 


「県地域医療再生計画」は、「峡南」「富士・東部」の両医療圏と「県全域」の三つでまとめている。 
いずれも県は2013年度末にかけ、事業を進める。財源は国の「地域医療再生臨時特例交付金」で、峡南と富士・東部に25億円ずつ、県全域に32億円が割り当てられている。 

 県内の医療圏を中北(計画時の人口47万4千人)、峡東(14万1千人)、峡南(5万8千人)、富士・東部(19万人)と区分。 
なかでも峡南、富士・東部の両地域は、医師不足などによって医療体制が特に弱く、以前から格差の是正が必要だと指摘されてきた。 

 このため09年11月、課題の早期解決をめざして両地域の再生計画を立てた。 

 峡南では、 
医療従事者の確保(2億8千万円) 

▽医療機関連携の推進(20億5千万円) 

▽在宅医療のモデル地区化(1億7千万円)を掲げる。 
連携のなかで社会保険鰍沢、市川三郷町立両病院の経営を統合し、圏域北部の拠点病院とすることを構想。これを受け、地元では峡南病院も加えた枠組みで協議が動き出した。 

 富士・東部では、高度・専門的医療の提供(6億円) 
▽地域内での一般的な医療の確保(15億円)などに取り組む。 

 一方、県全域の計画は、昨年11月につくられた。高度・専門医療の提供(9億8600万円) 

▽周産期医療体制の充実(9500万円) 

▽救急医療体制の強化(17億4600万円) 

▽災害医療体制の充実(14億6300万円) 

▽医療連携体制の構築(1億9100万円) 

▽医師などの確保と育成(2億4100万円)の六つが柱だ。 

 高度・専門医療機関としての山梨大学医学部付属病院(中央市)と県立中央病院(甲府市)を核に、各地域との連携体制を構築。医師ら人材の確保・育成に努めるとしている。 

 地域医療再生計画は、国が緊急経済対策の一環として、総額3100億円の基金を設け、地域医療再生臨時特例交付金として全国に配分し、医療の再生を図るもの。 
交付金の対象となる医療圏は都道府県ごとに二つで、県は峡南と富士・東部を選んだ。 


 ■山梨大学付属病院の役割 

 ・放射線治療装置などを整備し、がん診療体制を強化 

 ・高度救急医療機能の向上 

 ・災害派遣医療チームの整備 

 ■県立中央病院の役割 

 ・通院加療がんセンターを整備し、がん診療体制を強化 

 ・ハイリスク出産受け入れ体制の強化 

 ・心疾患、脳血管疾患の診療体制の強化 

 ■人材確保・育成事業(全県で実施) 

 ・医学部生に対する奨学金の貸与 

 ・山梨大学医学部に寄付講座を設置 

 ・病院群による地域医療臨床研修支援 

 ・若手医師の海外研修を支援