外資単独資本の医療機関、上海で全国初の開業

2012.07.28

 

外資単独資本の医療機関、上海で全国初の開業 
2012.07.18 中国 上海発 jetro通商 


 台湾の聯新国際医療集団の単独出資による「上海禾新医院」が6月26日、上海市で開業した。 

同集団は中国各地で医療機関の開設を検討しているが、公的医療保険の適用が難しいケースが多く、医師不足という難問にも直面している。 

医療市場では大学の付属病院である公立病院の独占状態が続いており、民営病院が対等に競争できる環境はまだ整っていないといえる。 

<美容整形にも力点、料金は割高> 
 上海禾新医院は、外国人が多い上海市の虹橋・古北地区に隣接する漕河ジン開発区に設立された。 

4階建てで建築面積は1万5,000平方メートル。約20の診療科目があり、コンビニやヘルスクラブなども併設している。従来の公立病院のような狭苦しさがなく、ゆったりとした雰囲気だ。 
  

利用者は将来的には外国人や中国の富裕層にまで広げてゆく予定だが、当面は台湾や香港を中心とする華人・華僑の利用を想定している。病院のパンフレットは、中国本土で使われる簡体字ではなく、台湾や香港で使用される繁体字で書かれている。 

また、健康管理や病気の予防、美容整形などにも力を入れ、利用価格は公立病院より数割高い。 



聯新国際医療集団は台湾で病院と診療所を10数ヵ所運営しており、上海でも合弁形式の病院を2002年に設立している。 

11年1月から台湾の医療機関が単独資本の医療機関を設立することが認められたため、単独出資の上海禾新病院の設立を申請し、11年7月に許可を得た(注)。 

中国で外資単独出資による医療機関の設立が許可されたのは今回が初めて。 
  
同集団は北京市や湖北省武漢市、陝西省西安市、湖南省長沙市などにも事務所を構え、提携関係がある現地病院の経営に関与しながら、今後の展開を検討しているという。中国に進出した台湾系300余りの医療機関の中で、単独資本の医療機関設立の動きはほかにない。 


<医師の確保が最大の課題> 
 衛生部の発表によると、2011年末現在、外資を含む民営病院数は医療機関の4割近くを占めているが、医師数や年間の診療人数は、いずれも全体の約1割にとどまっている。 

規模が小さく、赤字経営が続く民営病院も多い。 

公立病院に比べて、政府補助金の受給額、医師数、医療保険の適用数などはいずれも劣っている。 
  

中でも医師不足は経営上最大の課題だ。外資系の病院では短期勤務の外国人や留学生が医師として勤務しているが、今後は中国人医師の採用を増やし医師不足を解消することが不可欠だ。 

他方、公立病院のほとんどは公立大学の付属病院なので、医師は大学教員の肩書きも持つ。 
特に重点大学の教授は、病院や学界などでの地位が高く、患者からの信頼も厚いので、企業が設立した民営病院に勤務するメリットは小さい。また、講演や他病院での診察による副収入などもかなりある。 
  

中国では医師数や病床数、設備などに基づいて病院を1級から3級のランク(3級が最高)を付けている。 

医療保険が適用されるのは2級と3級の病院のみで、ほとんどの民営病院は医師の確保が困難なため1級の水準にさえ達していないという。 
  

中国の医療市場は国民所得水準の上昇とともに急速に拡大しているが、民営病院が公立病院と対等に競争できる環境はまだ整っていないといえる。 


(注)外資単独資本による医療機関の設立は「外商産業投資指導目録(2011年改訂)」で制限類から許可類となったが、改訂前には合弁または合作が条件となっていた。 
ただし、台湾の医療機関については海峡両岸経済協力枠組み協定により規制が緩和され、単独資本の医療機関を設立することが2011年1月から認められた。 
なお、香港とマカオの医療機関も同様に、単独資本の医療機関を設立することが11年1月から認められた(2012年6月18日記事参照)。 
(劉元森) 
(中国)