地域医療充実へ体制再構築 2012.07.27 建設通信新聞 

2012.07.30

地域医療充実へ体制再構築 2012.07.27 建設通信新聞  


 千葉・茨城両県内では、地域医療の充実に向け、施設の整備や医療体制の拡充などさまざまな取り組みが進んでいる。 

この間、公的医療機関の体力が低下しており、官民問わず医師・看護師不足が問題となる中、医療体制の再構築が急務となっている。 
大量の病床配分や病院の全面移転計画など、両県内で進む地域医療の状況や今後の見通しなどをまとめた。 

【インタビュー・東日本税理士法人代表社員 長 隆氏/公立病院経営改革、第三者委員長で再検討を/早期完成へ設計施工一括提案競技】 

 全国各地の公立病院は、経営悪化に伴う地方自治体の赤字補てんや医師・看護師不足など課題が山積している。 

千葉、茨城両県内でも、千葉県松戸市が計画している市立病院の建て替えが前市長のプランを翻して再検討を進めているものの具体化できていないほか、茨城県筑西市と桜川市が計画している300床の新中核病院は候補地などをめぐって計画が頓挫している。 

多くの公立病院で経営改革のための委員長を務めてきた長隆東日本税理士法人代表社員に、両病院の今後のあるべき進め方を中心に聞いた。 

*   * 

◆もう一度、委員会を 

 千葉県内では、松戸市の市立病院建替計画検討委員会が2010年度末に市立病院の現地建て替えは困難とする答申をまとめた。 
現地建て替えを訴え当選した市長の考えと相反する答申だったが、市は現在、千駄堀地区への移転が可能か模索している。 

 これら経緯について長氏は、「(同委員会の)委員長をリーダーシップのある第三者にしなかったのが失敗」とし、「もう一度委員会をやり直すべき。 
豊川市民病院(愛知県豊川市)などを見習って早くやるべきで、やる気があれば委員会は1カ月でできる」との考えを示す。 

 その豊川市民病院は、前市長が現地建て替え、新市長が郊外へ移転建て替えと逆の方針で「10年ももめていた。 
老朽化がひどく、ベッド利用率も100%を超えるなどいろいろな問題もあった」という。(改革プラン策定会議の)議長を依頼された時も、「確執を乗り越え、決めたことに文句を言わないのなら早くやると言ったところ、院長や幹部の了解を取り付け、半年で決めた」と振り返る。 

◆150床でも十分 

 茨城県内では、筑西・桜川地区新中核病院準備委員会が11年7月から同年9月にかけて建設候補地や既存の筑西市民病院と県西総合病院(桜川市)の2公立病院のあり方について検討し、報告書をまとめた。 
委員は、委員長の日本医師会長(当時)を始め、真壁医師会長、筑西、桜川の両市副市長、両市議会議長、筑西市民病院長、県西総合病院長、茨城県保健福祉部次長の9人で構成した。 

 これについて長氏は、「医師会長の立場であることは良いが、地元で病院を経営している利害関係ある人が委員長をやることは根本的に誤っている。 
内容が良くても信用されない」と問題を指摘する。 

 そもそも「地域の人たちは具合が悪ければ筑波大(附属病院)に行っている。 
筑西と桜川の医療は厳しいというが、つくば医療圏への流入と筑西・下妻医療圏からの流出によって需要と供給は現状、バランスが保たれている」と分析する。 

 「本当に300床が必要なのか」とさらなる疑問も呈し、「せいぜい私がかかわっていた常陸大宮済生会病院(常陸大宮市)クラスと同じ150床で十分だ」と提案する。 
理由として「今は病床規模ではない。例えば平均在院日数が20日なら10日にして患者の回転率を2倍にすれば、150床でも実質300床で運営できる」ことを挙げる。 

 建てることには反対ではないが「筑波大(附属病院)が了解するような役割分担の明確化をはっきりさせてからスタートするべき」とし、「県外の大学の理事長を1人入れるなど利害関係がない人で構成する、誰が見ても公正な委員会をつくり、場所の選定も含め1カ月で答申をまとめるべきだ」との考えを示す。 

医師の確実な派遣を受けるために「最終的には、独立行政法人か何かを立ち上げて筑波大から理事長を出してもらわないと」とも。 

 その後は他病院でも導入させてきたように「早く安く良い病院をつくるため、速やかに設計・施工一括のプロポーザルで進めるべきだ」と締めくくる。 

 全国の公立病院の再建で数々の実績を上げてきた長氏のこれら私見を踏まえ、松戸、筑西、桜川の各市の今後の動向に注目したい。 

 (おさ・たかし)1964年3月早大卒後、67年3月税理士試験合格。71年10月監査法人太田哲三事務所入所、75年1月公認会計士第三次試験合格、76年7月同事務所退所、同月公認会計士長隆事務所開業。02年4月同事務所税理士業務部門を東日本税理士法人として法人化し、現在まで代表社員。07年度に総務省公立病院改革懇談会座長などを務める。静岡県下田市出身、71歳。 

【千葉県内/建て替え、新病院建設相次ぐ】 

 千葉県内は、官民ともに医療施設整備の計画が目白押しだ。大きな動きとしては、3月に千葉県が県保健医療計画に基づき一般病床・療養病床3122床、ICU(集中治療室)など病床57床、精神病床84床の計3263床を配分したことが挙げられる。 

 中でも新設計画は、巨樹の会松戸リハビリテーション病院(松戸市)、鼎会三和病院(同)、巨樹の会千葉みなとリハビリテーション病院(千葉市中央区)、栄慈会昌和会病院(同)、淳英会おゆみの中央病院(千葉市緑区)、白金会リハビリセンター五井東(市原市)、筒井雅人互幸会白井病院(白井市)、生和会千葉ニュータウンリハビリテーション病院(印西市)、心和会成田リハビリテーション病院(成田市)、鎮誠会季美の森リハビリテーションセンター(大網白里町)の10病院(いずれも仮称)もある。 

 病床配分を受けた既存病院の中には建て替えなどを伴うものもある。順天堂大医学部附属浦安病院(浦安市)は新館の建設を計画しているほか、東京勤労者医療会東葛病院(流山市)は、つくばエクスプレス・流山セントラルパーク駅前に移転するため設計中。葵会千葉・柏たなか病院(柏市)や浄光会千葉みなと病院(千葉市美浜区)は現地建て替えの着工を控えている。 

 病床配分を伴わない民間病院では、誠馨会千葉メディカルセンター(千葉市中央区)が13年3月、隣接地への全面建て替えに着工する予定だ。隣接地には千葉中央看護専門学校も移転建て替えさせる。 

 土地取得の動きも出ている。緑栄会三愛記念病院(千葉市中央区)は移転に向け土地・建物を取得した本千葉ビルの解体を12年内に完了させる予定。鳳林会四街道さくら病院(四街道市)も隣接する旧四街道教職員住宅の土地・建物を千葉県から3月に取得した。 

 公立病院では、市立病院の建て替えで方針が二転三転している松戸市が、同市千駄堀の候補地に600床の急性期病院を建設できるか調査中だ。船橋市も、病院ではないが12年度に(仮称)保健福祉センターの設計を完了させる。君津中央病院企業団(木更津市)は、同病院附属看護学校の12年度末工事発注に向け改築設計を進めている。 

 千葉県は、県がんセンター(千葉市中央区)で新棟建設に向け12年度に基本計画を策定する。県救急医療センター(千葉市美浜区)と精神科医療センター(同区)の一体建て替え計画もあり、12年度は東京湾に面する候補地に建設した場合でも災害に対応できるか調査する。県千葉リハビリテーションセンター(千葉市緑区)でも、整備手法などを検討した上で13年度に今後の施設整備計画を策定する。 

 国関連では、千葉大が附属病院(千葉市中央区)で新外来診療棟の施工者を選定中。同棟新築や既存外来診療棟改修が完了した後の15年度には新中央診療棟の着工も控える。国立国際医療研究センター国府台病院(市川市)も外来管理治療棟の工事を12年度内に発注する予定だ。国立病院機構下総精神医療センター(千葉市緑区)は、病棟などの建て替えを計画している。 

【茨城県内/県内最大の土浦協同病院移転】 

 茨城県内では、茨城県厚生農業協同組合連合会(JA茨城県厚生連)による施設整備が活発だ。水戸協同病院(水戸市)では2011年5月に新東棟を完成させ、JAとりで総合医療センター(旧・総合病院取手協同病院、取手市)でも13年11月末までの完了に向け耐震補強・増築・改修工事を進めている。 

 続いて県内最大の病床を擁する土浦協同病院(土浦市)も同市内への全面移転に向け現在、実施設計を進めている。規模は延べ約8万1000m2で免震構造を採用する。13年春に着工し、15年夏の開院を目指す。隣接地には同病院附属看護専門学校(石岡市)の移転建て替え、職員宿舎や保育所の新築も計画するなど、莫大(ばくだい)な事業費を投入することになる。 

 さらに水戸協同病院では、東日本大震災で既存病棟が損傷したことから、新東棟を除いて建て替える検討を進めている。土浦協同病院が完成した後、着工する予定だ。 

 民間病院はこのほか、日立製作所が日立総合病院(日立市)で県北地域初となる救命救急センターを10月の運用開始に向け建設を進めており、さらに延べ約5500m2の診療棟を7月末、延べ約2万7000m2(免震構造)の本館棟を13年度内に着工する予定だ。 

 震災の影響は、北茨城市が計画している市立総合病院の移転建て替えにも影響した。市内にあるほかの病院が被災し、再開のめどが立たないことから計画より病床数を増やす方針に変更したほか、機能面も充実させる。現在、本体工事の発注に向け準備を着々と進めている。 

 同じ公立病院の計画でも暗礁に乗り上げている計画もある。筑西市と桜川市が計画している新中核病院の建設事業だ。桜川市議会が11年度からことし6月まで4度にわたり事業費の予算案を否決したことで桜川市が事業を断念する事態となった。これを受け筑西市、筑西市議会はともに、市単独でも建設事業を進めたいとの考えを表明している。 

 茨城県は、事態の打開に向け橋本昌知事が近く桜川市議会と意見交換する予定だ。13年度末までに着工することが条件となっている国の地域医療再生臨時特例交付金を計画どおり活用したいのであれば、残された時間は限られている。 

 このほか、病院を含めた複合的な開発の計画もある。水戸市中心部にある京成百貨店の北側の泉町1丁目北地区では、準備組合が組合施行による市街地再開発事業を計画している。地区内に病院があることから、商業・業務だけでなく、病院なども含めた再開発施設とする方向で調整中だ。