新中核病院「断念」 桜川市議会、計画の予算削除 市長「最後の提案、無念」/茨城県

2012.06.18

 

新中核病院「断念」 桜川市議会、計画の予算削除 市長「最後の提案、無念」/茨城県 
2012.06.15朝日新聞 
  
桜川市議会は14日、中田裕市長が提出した補正予算案から、筑西市民病院http://www.chikusei-cityhp.jp/hp_syoukai/shisetsu.htmlと県西総合病院(桜川市)http://www.kensei-hospital.or.jp/d_greeting/index.htmlを再編して建設する新中核病院に関係する費用を削除した。 

中田市長は「原点に返って、県西総合病院をどうすべきか筑西市とも相談して再構築していきたい」と話し、新中核病院計画を事実上断念した。 

一方、筑西市は「地域医療再生計画の枠組みの中で新中核病院整備を進めたい」として、今後、県とも協議のうえ打開策を探る考えだ。 


 新中核病院の基本構想策定費など1195万円を盛り込んで提出された一般会計補正予算案には、病院関係費を削除する修正動議が出された。 

修正案に賛成する議員には「市長は計画の詳しい内容を話してくれない」など市長への不信感を表明する意見も。 

一方、反対する意見は「県西総合病院に医師を派遣している大学病院は『現状ではこの先、若い医師を派遣できない』と言っている。地域医療の崩壊を危惧する」などだった。 

 議会閉会後、中田市長は「最後の上程(提案)との思いだったが、流れを変えられず無念。 

新たな考えを再構築し、筑西市、県とも協議して市民の安心安全を担保していきたい」。 
筑西市の吉沢範夫市長は「新中核病院への思いは変わらない。県をはじめ、これまで尽力していただいた方々、同じ思いの方々と地域一丸となって取り組んでいきたい」とコメントした。 


 ●「筑西主体で」 準備委・原中氏 

 日本医師会の前会長で新中核病院準備委員会委員長を務めた原中勝征氏は14日、「筑西市主体でつくり、桜川市民にも利用してもらうという選択肢はある。計画の実現に向け、今後も市や県に働きかけていきたい」と述べた。 

 両市は筑西・下妻保健医療圏に属する。県医療対策課によると、医療法に基づく県保健医療計画では、この保健医療圏の病床数の上限は1959床。ただ、実際は2008年時点で2119床と上限を超えている。 

 筑西市民病院(173床)と県西総合病院(299床)http://www.kensei-hospital.or.jp/intro_hos/index.htmlを統合して300床の新中核病院をつくるなら上限は超えずに済むが、桜川市側は計画にかかわることが難しくなった。 

 近藤慶一課長は「緊急医療体制が危機的な状態のままにしておくことはできない。両市や地域の医療関係者と意見交換し、対応策を考えていく」と話した。(松井望美) 


 ◆打開に衆知集めて 

 《解説》新中核病院の建設計画は、「地域医療再生の最後の機会」とも言われてきた。 
しかし、桜川市議会の抵抗に遭い、このままでは病院の規模や運営形態といった基本事項を論議するテーブルにつくことさえも許されないまま終わりそうだ。 

 桜川市議たちは総じて、建設候補地として筑西市竹島地区が適当とされたことに反発。 
なかでも計画に反対する市議は、建設費や建設後の運営費の負担に桜川市が耐えられるかについて強い懸念を抱き、「財政的に不可能」と主張。 
反市長勢力を中心とする計画反対派の結束は最後まで揺るがなかった。 

 県西総合病院と筑西市民病院はいま、深刻な医師不足に直面している。いずれもかつては30人を超える常勤医を抱えていたが、研修医制度の改革の影響などで現在はともに十数人。病床数や診療科も減る一方だ。 

 そこで県は2009年、両病院を統合し、病床数200程度の新中核病院を約45億円(うち10億円は国の地域医療再生基金)で建設する計画を打ち出した。 
11年には新たに地域医療再生臨時特例交付金15億円を加え、事業費は75億円程度、病床数も300程度に計画は拡大。 
県西総合病院も120床程度の病院として存続させることになった。 

 新中核病院計画が白紙に戻るとなると影響は大きい。 
築40年以上で老朽化した県西総合病院は、東日本大震災で建て替えか大規模補修を迫られているが、市単独で財政的な手当てができるかどうか。 
299床のうち入院患者を受け入れているのは167床と経営は厳しい。桜川市は新中核病院の計画が頓挫すると、医師の確保は一層難しくなるとみる。 

 一方、筑西市は大震災で市民病院の病棟が使えなくなり、50床の病棟を昨年新築したばかり。 
だが、この規模では医師確保はもとより経営的にもじり貧となるのは避けられず、新中核病院をそう簡単にはあきらめられない事情がある。 

 地元の住民にとって、新中核病院の断念は、脳卒中や急性心筋梗塞(こうそく)に対応できる急性期医療の拠点の消滅を意味する。このままでは、県外や他の医療圏への依存がますます進むに違いない。 
事態の打開に向けて関係者の衆知を集めることが求められる。 

 (金森定博)