兵庫県民間病院協会会報 『自然との共生、日本文化の発信』

2012.05.08

 

 

兵庫県民間病院協会会報 2011年2月号 

『自然との共生、日本文化の発信』 

平成7年、6千人が死亡した阪神淡路大震災を経験し、今年3月11日に東北地方を襲った大震災と津波は、2万人を超える死者、行方不明者を出し、原子力発電所事故も重なった。 

万全に思われた日本最長の高い防波堤も、津波により軽がると乗り越えられ、田畑や家屋敷、人や家畜が押し流された。 

人間の英知のはるかに及ばない自然の猛威、破壊力のすごさを見せ付けられた。 
タイの大洪水を始め、大雨による洪水被害も昨年は世界各地で発生した。 
昔から言われていた、自然と共生して生きることの大切さを改めて考えるよい機会になった。 

明治以前、江戸時代の人は、里山や農家の暮らしに見られるように上手に自然と共生し、循環型の社会を形成して生きてきた。 
明治以後、産業革命の影響を受け、特に近年は大量のエネルギーを消費する大量生産、大量消費の時代になってきた。 
地球の人口も過去半世紀で倍増し、70億を超えている。 
今世紀の終わりには100億の人口が予想されている。 
このままの状態が続けば、温暖化とともに、地球の自然は破壊され、大変な状態になるといわれている。 

100年、1,000年後、人類が幸せに長寿を過ごせるには、限りある地球資源を有効利用し、環境に配慮して、上手に生きるしか方法は無いと思われる。 

イギリスのブレア元首相は最近の回想録で日本には、特筆すべき文化があり、それを来日のたびに楽しんだと書いている。 

日本には古来よりの、神道、仏教などの立派な宗教や聖徳太子の17条憲法による和の精神があり、農業、世界に誇れる省エネ技術など優れた科学技術が多くある。 
また世界一の長寿社会を実現させた国民皆保険を持つ医療制度、介護保険制度、日本食文化など世界に輸出できるものが数多くある。 

TPPで日本中が大騒ぎになっているが、外国の制度を取り入れることよりも、打って出ることをもっと考えても良いのではないか。 
農業など、現にそういった企業が出てきているのは頼もしい。 

尼崎中央病院 理事長 吉田静雄 



兵庫県民間病院協会会報 2012年1月号 

『井(医)の中の蛙』 

昔から言い伝えられた言葉であるが、いまだに実感させられることが多い今日この頃である。 
年末に大阪私立病院協会の10人余りの方々とご一緒に、東南アジアを旅行する機会に恵まれた。 

ちょうどタイの北部が何十年来の大洪水に見舞われ、首都バンコック圏域までも洪水が押し寄せてきていると報道されていた。 
予定を変更し、ベトナム経由で、ラオス、カンボジア、ハノイに行くことになった。 

空から見ると広大な湖が、農地、平野、住宅などを呑みつくし一面巨大な湖のようになって見えた。 
洪水は報道されているタイのみならず周辺の国々でも起こっていたのである。 
ベトナム中部では100人以上が洪水で死んだとのことである。 

最初はそれほど期待をしていなかったのだが、実際その地方に旅行して、現地で人々の生活ぶりを見聞きしていると、どれほど貧しい生活を毎日送っているのかが実感させられる。 

子供が稼ぐ、観光客からの1ドル、2ドルの収入が一日の生活の足しになっていることがよく分かる。 
ホテルや劇場で、これらの国々のすばらしい伝統芸術を見せられると、そういった現実は忘れさせられる。 

世界無形文化遺産にも登録される予定のハノイの水上人形劇には目を見晴らされた。 
カンボジアのアンコールワット、アンコールトムは現場で見ると圧倒される。 
千数百年前に建造されたこれほどの石造建造物、彫刻のすばらしさは世界に類を見ないように感じられた。一回の訪問ではとても見切れない。 

これらの国々には学校にも行かず、文字の書けない貧しい人が何百万、何千万人いる現実がある。 
利用されない広大な土地、山野もある。日本がこれらの国々に果たすべき多くの役割がある。医療、福祉制度、事業などでも、国や個人が貢献できることが多いのではないかと思う。 
これからの若い人は、狭い日本に閉じこもらずにどしどし海外に出て活躍をしてほしいと思う。 
逆に海外の有能な人材を日本に来てもらうことを積極的に考えても良い。 
いくつかの日本の電機メーカーや自動車の広告、工場、支店がバスの沿道から見かけられた。 
昔、当尼崎中央病院が木造建築であった頃、安河内先生(元日赤看護婦長)が看護師の教育に当たってよく言われていた言葉を思い出す。 

“井(医)の中の蛙”になるなと。 
尼崎中央病院 吉田静雄 


http://www.chuoukai.or.jp/shippitsu/nihonijisinpou_2012.4.14.pdf