公立病院の半数 労基法違反 医師の時間外労働 手当不払い

2012.05.14



公立病院の半数 労基法違反 医師の時間外労働 手当不払い 
2012.05.12 読売新聞  


 ◆広島国際大教授調査 

 全国の200床以上ある公立病院の半数以上が、労使協定なしの時間外労働や超過勤務手当の不払いなどで労働基準監督署から是正勧告を受けていたことが、江原朗(あきら)・広島国際大教授(医療政策)の調査でわかった。多くが医師の労務管理にかかわる違反とみられる。 
江原教授は「医師の健康管理のためにも、医療事故の誘発を防ぐためにも、長時間労働は抑えなければならない。 
労働法規を守る医療提供体制にするべきだ」としている。 

 ◆監督署から是正勧告 

 江原教授は、都道府県・市町村・一部事務組合立の400病院を対象に、2002年3月~昨年3月の9年間に受けた是正勧告書を情報公開請求した。 

回答のあった369病院のうち、労働基準法違反などで勧告を受けていたのは208病院(56%)に上った。 

 内容は、法定労働時間違反(労使協定によらない1日8時間、週40時間を超す労働)が177病院(48%)、時間外・休日・深夜の割増賃金の不払いが98病院(27%)、就業規則の作成・届け出義務違反が54病院(15%)など。 

 勤務医のほとんどは労基法上の管理監督者にあたらず、時間外労働に応じた割増賃金が必要。しかし、医師を時間外労働の労使協定の対象にしていないケースや、部長などの役職を理由に超過勤務手当を払わなかったケース(名ばかり管理職)が多かった。 

 また、救急対応を伴う当直には厚生労働省が02年3月、時間外労働にあたるとする通達を出しているが、低額の宿日直手当で済ませていた違反が目立った。 

 江原教授は「自治体は労基法を守る意識が薄い。 
医師の当直に超勤手当を払うと1回10万円ほどかかるが、近隣の病院と協力して診療体制の集約化を図り、当直回数を減らすなどの工夫をすべきだ」と話す。

 今回は調査していないが、独立法人化で労基法の対象になった国立病院機構や国立大学の病院にも、多数の是正勧告が出ている。 

 ◆過重労働改善を(解説) 

 公立病院の医師不足の大きな要因は、金銭的な待遇よりも労働条件のきつさにある。 
当直や呼び出しが多く、疲れ果てた医師がやめる、残った医師の負担が増える--という悪循環が繰り返されてきた。過労になれば医療安全にも影響する。 

 労働時間に応じた賃金を出さないと、長時間労働に歯止めがかからない。 
赤字の公立病院が多い中で、労基法を順守して超勤手当を出すと出費が増える。だからこそ、過重な労働を減らす方向で解決策を考えるべきだ。それが、女性を含めて勤務医を確保するためのポイントでもある。(編集委員 原昌平)