「医療ツーリズム」先進国目指せ  外国人OK病院認証へ

2012.05.18



「医療ツーリズム」先進国目指せ  外国人OK病院認証へ(2012年5月17日 読売新聞) 

  
政府は今年夏、外国人の受け入れに適した病院を認証する仕組みを導入する。 
海外で観光を兼ねて健診や最先端治療を受ける「医療ツーリズム」の分野で、日本は他のアジア諸国などに比べて立ち遅れが目立っており、制度の活用を通じて日本の高い医療水準をアピールし、観光収入などの増大も狙っている。 

政府が今夏 専用窓口、食事など審査 

 先端医療で知られる千葉県鴨川市の亀田総合病院には、年間約1000人の外国人が訪れる。 

昨年3月には成長著しい中国をターゲツトに、中国人医師を責任者に据え、専門の事業統括室も新設した。 

外国人の診療は大部分が自由診療で、利益は大きい。 
亀田隆明理事長は、「高いお金と時間をかけてでも受けたい医療が、ここにあるということ。 
高い医療の質を保つことは、地域のためにもなる。病院経営を考えても、受け入れ態勢の充実は必要だ」と話す。 


 厚生労働省が今夏からスタートさせる「外国人患者受け入れに資する医療機関の認証制度」は、こうした病院を全国で増やし、外国人が安心して受診できる環境作りを進めることが目的。 

手術同意書などの外国語文書の整備や、外国人専用の相談窓□の設置、通訳の手配、菜食主義者向けの食事の準備―などを基準に、専門家で構成する第三者委員会の審査で認証する。 

 政府が力を入れる背景には、先端医療の受診や医療費の節約を目的とする海外渡航者が世界的に増え、魅力ある市場を形成していることがある。 

観光庁によると、年間受け入れ患者数はタイで120万人、シンガポール62万人など。 
集計方法が違い、単純比較はできないものの、推計で7万人前後の日本とは比べものにならない規模だ。 

 日本政策投資銀行は、2020年時点で日本への医療ツーリズム客は43万人の潜在需要があり、市場規模は5500億円と試算。 

高度の医療水準がありながら、他国に比べて立ち遅れている現状を受け、政府は、新成長戦略で外国人患者の受け入れ推進を決定。 
「20年までに高度医療、健診でアジア最高の地位を獲得する」とした。 

 昨年1月には、医療目的で入国する外国人を対象にした「医療滞在ビザ」を新設。医療ビザの利用は、10日現在で122件にとどまる。 
東日本大震災の影響もあり医療ツーリズムの広がりは依然、限定的だ。 

 認証制度の設計に携わった真野俊樹・多摩大学医療リスクマネジメントセンター教授は「外国人に魅力的な医療機関が増えれば、日本の医療の向上にもつながる。日本は海外に比べて体制整備が遅れており、認証制度はその第一歩になると思う」と話している。 

●医療ツーリズム 医療サービスを受けることを目的とした長期滞在型海外旅行。アジアの富裕層に高水準の医療と観光をセットで売り込む手法が注目され、徳島県や栃木県など全国各地の病院で受け入れが始まっている。 




国内への影響懸念する声も 

 医療ツーリズムの拡大を巡っては国内の医療への影響を懸念する声もあり、旗振り役の国の中でさえ、温度差があるのが現状だ。 

 日本医師会は、医療機関や地域間の格差拡大を理由に、国の拡大方針に反対する。 
「海外の富裕層の患者を優先したら、国内医療にしわ寄せがいく」という訴えだ。新制度を発足させる厚労省でさえ、医療の産業化には慎重姿勢を取る。 

 一方、経産省は力が入る。高度医療施設をウェブなどで海外に紹介したり、日本式医療の海外展開を支援したりする「メディカル エクセレンス ジャパン」を設立。厚労省とは際だった違いを見せる。 

 格差拡大への懸念は理解できる。国内医療が後回しにされないよう、受け入れを一定数にとどめるなどの対応も必要になるだろう。 

(小泉朋子)