青森去る若手医師 都市部志向、確保に苦戦 弘大卒業生の6割

2012.05.19



青森去る若手医師 都市部志向、確保に苦戦 弘大卒業生の6割  (12.05.16 朝日新聞 ) 
  

青森県内病院が若手医師の確保に苦戦している。 
医学部卒業後、研修先を自由に選べる新たな臨床研修医制度が2004年度にスタートしたが、医学生の都市部志向は強く、弘前大学医学部でも卒業後の県外流出が続く。県や県内病院は引き留めに躍起だ。 


 「うちの病院は住環境がすばらしい。電気、ガス、水道いくら使っても、月2万円!」 

 4月末、弘前市の市総合学習センター。 
県内の中核13病院や岩手、秋田両県の9病院が参加した合同説明会では、各病院が来春卒業予定の弘大医学部6年生ら70人を熱心にブースに呼び込み、「ぜひうちに」とPRしていた。 

 五所川原市の西北中央病院は、高杉滝夫院長ら医師10人と職員5人が歓迎モード全開。 
病院をPRするのぼり旗をたてたり、ティッシュやアメを配ったりし、ブースに座った医学生には数人がかりで「地域の診療所と連携し、たくさんの症例が経験できる」「外科と内科の垣根が低いから、みんなでやっていく雰囲気がある」と訴えた。 

 高杉院長は「若い医師がいると病院が明るくなる。指導役の医師への刺激にもなるし、人手としてもほしい」と打ち明ける。熱心な勧誘活動が実り、今春は募集した4人を確保できたという。 

 ただ、県内で臨床研修医を受け入れている13病院全体で見ると、苦戦が続く。 
全国状況を集計している医師臨床研修マッチング協議会によると、13病院で計128人を募集し、県内外からマッチングに応じた医学生は69人だった。マッチング率は54%(全国平均75%)。東京91%、神奈川87%と都市部志向だ。 

 特に苦戦しているのが、弘大付属病院だ。 
43人の募集枠にマッチングは11人だけ。佐藤敬学長は4月の会見で「地域医療の人材を確保するには大学への集約が必要だが、残念ながら十分機能していない」と悔しさをにじませた。 

 弘大によると、今春の医学部卒業生97人のうち、県内13病院で研修するのは36人で、61人が県外に出た。 
「県外出身者の学生が出身県に戻るのは仕方がない面もある」(県医療薬務課)というが、こうした状況もあり、人口10万人あたりの医師数は182・4人(10年度、厚生労働省調査)で、全国42位と低迷する。 

 一方の学生は何を考えているのか。 

 弘大医学部6年の女子医学生(24)は県内での勤務を希望するが、「県内の病院に行けば、周りは弘大の医師ばかり。 
他大学の考え方を学び、刺激を受けたいと県外に出る学生はいる」と学生の思いを代弁する。 

 弘大医学部6年の當麻絢子さん(23)は、「待遇よりも経験が積める病院、指導体制の充実度が重要」。 
将来、当直時の急患をしっかり診られるよう、救急車の台数が多い県内の病院に勤務したいという。 

 県や13病院でつくる「県医師臨床研修対策協議会」では、医学生向けの合同説明会を東京や大阪でも開いており、県は「しっかりPRして医師を確保したい」としている。(別宮潤一)