特定非営利活動法人 日本医療流通改善研究会が、全社連;社会保険病院を中核として、公立病院、医療法人と医療機器、材料の共同仕入れを2012年4月から本格的に開始しています。

2012.05.15

特定非営利活動法人 日本医療流通改善研究会が、全社連 社会保険病院を中核として、公立病院、医療法人と医療機器、材料の共同仕入れを2012年4月から本格的に開始しています。 

研究会の顧問であり、医療経済研究機構の専務理事である 
岡部陽二氏の論考は貴重であり、研究会の教科書とさせていただいております。 




岡部陽二のホームページ個別記事 米国病院の医療機器共同購買の動向



4、Group Purchasing Organization (GPO)

(1)GPOの概要

 GPOは病院、ナーシング・ホームなどのヘルスケア事業者が、医薬品、医療器具、事務用品などを購入するにあたって、メーカー・卸売業者との価格交渉を有利に進めるために設立される共同購買組織である。個々の病院などが会員(メンバー)として参加し、GPOが構成メンバーを代表してメーカーなどと価格その他の条件を交渉し、購買契約を締結する。GPOが売買の当事者となって値幅をとったり、在庫を抱えたりすることは一切ない。あくまで、会員である病院に代わって、ベンダーと交渉をする機能を果たす組織である。

 GP0の収入源は、メンバーからの加入手数料に加え、メーカーなどのベンダー(売手)からも“Contract Administration Fee”(CAF)と称する手数料を徴収する。ベンダーが支払う手数料は、GPOの購入額に応じて通常1.5%~3.0%となっている。

 GPOの起源は1910年に設立された“the Hospital Bureau of New York”に遡ることができる。しかしながら、GPOの設立が急速に増加したのは、1983年にMedicareがDRG/PPSによる医療費の包括払い方式を採用し、その後民間医療保険もマネジドケアによる医療費抑制に乗り出したため、病院側としてもこれに対応すべく支払経費の削減に真剣に取り組まざるを得なくなってからである。

 GPOは全米に約600あると推定されているが、そのうち一定以上のメンバー規模を持ち、大手メーカーなどと実質的に価格交渉を行っているのは30程度とみられている。残りのGPOは、大手GP0の契約ヘアクセスする中間的なものか、または、地域の特定メーカーとの交渉を請負うものである。

 業界団体のHealth Industry Group Association(HIGPA)によれば、全米の病院のうち大半(96-98%程度)はGPOを利用しており、病院全体の医薬品、医療器具などの購入のうち約72%はGP0を通じて行われている。共同購買により、病院等が単独で購入する場合に比べ、平均して約10-15%程度のコスト削減ができ、GPOによる年問のコスト削減額は約337億ドルと推定されている(出所:HIGPA 資料)。

 GPOは供給側メーカーとの価格交渉力を強化する目的で組成され、個々の病院の資源である購買力を統合した「プーリング・アライアンス」である。共同購買を行うことにより、規模の利益を追求し、コストの軽減を図るものである。もっとも、GPOは購買価格の交渉を行うだけではなく、購買側病院のために契約内容のチェック、製品情報や価格変更情報の迅速な提供などを行っている。

 GPOは最近20年間に急速に成長した薬剤と医療機器の流通にのみ特化した独特の存在であり、メーカーにも購買側の病院にも大きな影響力を持つインターミディアリーとなってきた。

(2)GPOの規模・市場シェア

 GPOの数は全米で約600社と推定されているが、その中で病院やIHNと契約しているのは200社ないし400社程度である。市場シェアはGPOの合併により集中化が進み、病院だけに限ると上位7社で約85%を占めている。二大GPOの会員数は合計で3,994病院となり、全米の総病院数約6,000の2/3を抑えている。これに営利GPOの傘下病院400を加えると、全病院の72%となる。

 GPOはすべて非上場であるため、財務内容の詳細は分からないが、主要な業者は表5表6のとおりとなっている。

 

 上記大手二社のうち、Novationはメーカー1,600社、病院2,100病院と890,000点、年間購買額144億ドルの医療機材等についての通常3~5年間の共同購入契約を締結している。一方、Premierは1,829病院と契約、年間購買額130億ドル(いずれも2000年)となっている。

 一般病院の98%は平均して2~3社のGPOと契約を締結している。うち1社は全国規模の大手であり、他は地域の中小GPOである。

 GPOの所有形態には営利と非営利がある。営利の大手2社は営利病院チエーン2社の子会社である。非営利の大手3社は病院の共同所有形態である。政府が設立したGPOもいくつかあり、最大のものは退役軍人病院設立のVAである。

 営利組織や政府保有のGPOは傘下の病院にそのGPOを利用することを強制している。一方、非営利GPOは縛りが緩いが、その中でもPremierは会員病院への影響力強化に注力しているのに対し、元来Volunntary志向のNovationは会員病院の選択を尊重するといった違いが見られる。

 GPOの成長には制約要因もある。その一つは、多くのGPOは地域の最大級の病院かIHNの獲得を狙うため、同一地域の多くの病院を獲得するのは困難であること、もう一つは同一地域での共同購入のシェアが35%を超えてはならないという連保政府の独占禁止の指導に従わなければならない点である。大手の二社はそれぞれ全米6000病院中、その1/3に当たる約2000病院と契約しているので、製品によっては限界に近づいている。

(3)GPOの合併・提携の動き

 1995年にはPremier Health AllianceとSun Health、American Health Care Systemの合併によりPremierが誕生、1996年にはVHC(Voluntary Hospitals of America)とUHC(University HealthSystem Consortium,大学病院の共同購買組織)の合併によりNovationが誕生した。

 このようなGPOのM&Aによる大規模化は会員数の増大により、メーカーとの価格交渉力強化に役立っている。しかしながら、メーカー側、とりわけ大メーカーはGPOの大型化を大きな脅威とは受け取っていない。その理由は、①GPOが独禁法による規模拡大の限度に近づいていること、②メーカーもM&Aにより強大化していること、③IHNの増大によって、GPO依存から脱する病院が増え、メーカーとの直接取引が増加していることにある。

 ただし、合併によるGPO大型化の問題点の一つは、ユニークな製品を持っている中小メーカーが市場から放逐される事態である。GPOが合併すれば、銘柄の一本化が進められ、中小メーカーは外されるだけでなく、GPOは長期契約を志向するので、中小メーカーにとっては新規参入がますます困難になる。中小メーカーとGPOとの紛争は議会の反トラスト委員会にまで持ち込まれたが、病院の利益増大を楯にGPO側も反論し、決着を見ていない。

(4)GPOのビジネス・モデルと収入源

 GPOの主な収益源は、売手から受け取る1.5%~3%の“Contract Administration Fee”(CAF)である。3%が法定の上限とされ、これを超える料率はメディケアでも認められないことから定着した。GPOはCAF以外の収益源として、①会員からの年会費、②売手からのリベートなどを得ている。

 かつては、GPOは会員病院に対し購買数量にかかわらず同一の価格を適用していたが、大量に購入する大口の会員から、小口の会員への補助であるとのクレームが出されたため、現在は購買数量によって価格差が設定されている。

 GPOの総取扱高は1999年の実績で456~477億ドル、収入は約14億ドル,2003年の推定で総取扱高700億ドル、収入20億ドル(HIGPA資料)と発表されている。これは各社の発表した数字を積み上げたものであり、実数はこれを下回っているものと思われる。

 病院の医療機器購入額は490~520億ドル(全体の76.4%,1998年)で、この内の2/3がGPOまたはIDNによる購入、GPOの取扱比率は50~60%と推定される(HIGPAはGPOの浸透率を72~80%と公表しているが、これは過大といわれている)。

 一般病院は平均して2.6社のGPOと契約している(数年前の2.8社から若干減少)。これは、病院が1~2社のGPOとの契約に絞り込む動きによるものとみてよい。その要因の一つは、一つのGPOが取扱う品種が増加したこと、もう一つは全国規模のNational GPOと地域をカバーするRegional GPOの機能分化が進んだことである。

 GPOの中には、特定のメーカーとの強い繋がりによる低価格提示を武器として複数のNational GPOへの加入を勧めるGPOもある。また、病院側も複数のGPOと契約して、製品別に「よいとこ取り」をしようとするケースもある。「よいとこ取り」を防ぐ手段としては、GPOが契約時に病院の総購入量の一定比率、たとえば80%以上をそのGPO経由とするといった条件を付けるしかない。ただし、GPOの提示価格をベンチマークに利用して、メーカーとの直接交渉を行なうことも可能であり、必ずしも複数のGPOと契約する必要性はない。一方、メーカーとの直接交渉を重視するIHNは比較的気軽に契約先のGPOを乗り換えている。

(5)医療機器メーカーにとってのGPOの存在

 購入数量(Volume)と浸透度(Compliance)がメーカーにとって重要であり、特定の製品に絞って大量に購入される場合には、単価の引下げに応じざるを得ない。浸透度とは、特定の製品がその製品分野において購入されるシェアである。GPOやIHNはこの浸透度を高め、購入数量の増加に繋ぐべく、医療機器の標準化に努力を傾注している。病院にとってはコストの低減が至上命令であるからである。長期契約による大量集中発注により、生産予測が容易となり、メーカー側のコストもリスク負担も軽減されるからである(マーケティングのためのコストは約23%を占める)。

 このため、メーカーにとっては、GPOの規模が重要となる。最低200病院程度を傘下に抱えていないGPOはメーカーから相手にされない。一方、市場シェアの拡大に繋がるのであれば、メーカーはIHNに対してGPOに対するよりも低価格を提示する。

 GPOが介在してメーカーと病院との製品改善のための協力態勢を確立することにより、治療方法の標準化を進め、コストの引下げや使用量の削減などを実現し、その成果をもとに新たな会員を獲得することが可能となる。ことに、心臓外科手術に使われる30億ドルにも上る機器については、医師が治療法の標準化を推進することにより、GPOを通した共同購入に弾みがつくケースが多い。メーカーが三社(Medtronic、Guidant、St.Jude)しか存在しない心臓ペースメーカーのように、医師が受けた研修によって、その医師の好みの銘柄が決まっている場合においても、GPOが介入して使用機種を1~2銘柄に絞ることに成功すれば、かなりのコスト・ダウンが実現する可能性もある。

 病院側にとっても、使用機種管理によるコスト・ダウンの中で、製品の標準化がもっとも有効であるとの調査結果も出ている。

 マネジドケアがこの治療方法の標準化を側面支援した効果には大きなものがあった。医師はマネジドケア主導の標準化に抵抗してきたが、これに逆らうのは困難になってきている。ただし、この標準化はGPOよりもIHNと直接折衝する方が強力に進め易く、病院側もメーカーとの直接交渉によるコスト削減に成功している。