金沢医科大学長・勝田省吾氏 医師国家試験で躍進 本当の評価はこれから 教育改革が奏功、現場で人格育てる

2012.04.11

 

日曜インタビュー 金沢医科大学長・勝田省吾氏 医師国家試験で躍進 本当の評価はこれから 教育改革が奏功、現場で人格育てる 
2012.04.08 北国新聞 

 今春の医師国家試験で、既卒者も含め全国トップとなる127人の合格者を出し、合格率は90・1%と開学以来最高となった。 

 「最下位グループの常連」と言われた、かつての汚名を返上する躍進ぶりに、卒業生や保護者から激励、祝福のメールが相次いだ。中でも印象的だったのは「在学生も卒業生も誇りを持って医学の道を進んでいくことができます」との言葉だという。 

 「国試の結果は、良くも悪くも大学の評価に直結する。それがこの一文に凝縮されている気がします」 

 数字の重みをあらためて感じるのは、2年前の学長就任時から国試の成績アップを最重要課題に位置付け、取り組みを進めてきたからだ。 

 まずは国試担当の副学長を任命し、国試対策委員会を7年ぶりに復活した。教務部を新設し、医学部教育の見直しを進めた。6年生と教員、研修医の接点を増やす「スチューデント・ドクター医局」を設置し、濃密なコミュニケーションを通して知識を深める環境を整備した。 

 「歯車がかみ合ってきたなと感じたのは、学生が自主的に勉強会を開いているのを知ったとき。教え合うことで学年全体が自然とレベルアップし、みんなで合格しようといういい雰囲気が生まれた」 

 普段は穏やかな口調も、このときばかりはぐっと熱を帯びる。改革が早くも実を結んだ喜びはひとしおのようだ。 

●良医になる通過点 

 一方、私立医大の徹底的な国試対策を冷めた目でみる向きもある。受験者を絞って合格率を上げたり、国試突破に特化した「予備校化」を懸念する声もよく耳にする。このあたりはどうなのか。 

 受験者の選別については「うちはそういうことはしないようにと言っている。学生のやる気をそぐようなことはしたくない」ときっぱり。予備校化の懸念には「その指摘はごもっとも。国試の合格は医師の必須条件ですが、患者に評価される良医になるための通過点でしかない」と率直に受け止める。 

 医師は知識だけでは通用せず、一朝一夕には育たない。難しいことながら、医師の人格を育てるのが大学の最も重要な役割だと心得ている。 

 重視するのは、地域医療の現場を体験する実習である。指定管理者として運営する氷見市民病院や、公立穴水総合病院に開設した能登北部地域医療研究所に学生を派遣し、コミュニケーション能力や人間性を養う機会を積極的に設けている。とりわけ過疎地での実習は、地域にとって医療が欠かせぬ生活基盤であることを学ぶ格好の場である。 

●教育は母校に負けず 

 今回の国試は金大医学部の合格率を初めて上回ったことでも関心を集めた。金大は自身の母校であり、意識しないといえばウソになろう。 

 「いえいえ。対抗意識とかはないし、注目してもらえるのも金大の存在があってこそ。『教育の金沢医科大学』を標榜しているので、なんとか教育面では負けないようにという思いはありますが…」 

 国試の躍進ばかりではない。今春は医学部一般入試の志願者数が過去最多の2427人に上り、附属の金沢医科大病院に赴任した研修医は前年の倍の36人となった。これらの数字からも改革は軌道に乗ったようにみえる。 

 「開学以来の積み重ねをどう花開かせ、維持していくか。卒業生が本当の『良医』として活躍できるか。本当の評価はこれから。喜ぶのはもう終わりです」 

 折しも今年は大学創立40年の節目。この勢いを持続するために、次の布石を練っているふうである。(藤本典子) 


 かつだ・しょうご 白山市出身。1976(昭和51)年金大大学院医学研究科修了。金大医学部病理学第一講座助教授、金沢医科大病理学第二講座主任教授、副学長、学長補佐などを経て2010年から学長。66歳。