穂別診療所 時間外再開から2年・・コンビニ受診歯止め年間・・1000人超から400人台に

2012.04.14

 



穂別診療所 時間外再開から2年☆コンビニ受診歯止め☆年間1000人超から400人台に 
2012.04.12 北海道新聞 

 【むかわ】夜間や休日に緊急性が低い軽症で医療機関にかかる「コンビニ受診」を改めてほしい-。 
こんな思いから2008年から翌年にかけ、全医師3人が次々と辞職した町国保穂別診療所(一木崇宏所長)。その後、医師は3人態勢に戻り、10年4月から時間外診療を再開している。医師たちの行動で、その後の地域医療はどう変わったのか。(峯村秀樹) 

 「レントゲンを見る限り、特に問題ありません。 
苫小牧の病院にかかりたければ、紹介状を書きますよ」。 
医師の診断に、5歳の長男を連れてきた町内仁和の主婦(41)は安堵(あんど)した。 
「お医者さんの3人態勢は、やはり安心。あの時は不安で、最初から苫小牧まで行ってましたから」 

 「あの時」とは、一木所長を含む3医師が次々と辞職した08年12月から約4カ月間のこと。 
うち所長ら2人が医療法人財団夕張希望の杜(もり)(村上智彦理事長)に移り、平日の日中のみ同財団からの派遣という形となった。 

 「当時はコンビニ受診が慢性化していました。 
それを行政も医師側も改善できなかった反省はあります。 
辞職を、住民に地域医療のあり方を考えてもらうきっかけにしたかった」。一木所長はこう振り返る。 

 住民団体「診療所友の会」などの署名活動もあり、2人は09年5月までに復職。新たに医師1人も勤務することになり、同診療所は10年4月に時間外診療を再開させた。 

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 同診療所は05年、経営難の町立穂別病院が病床数を減らして開業。 
当初から小さな傷や軽度の風邪などの患者が、夜間や休日に受診するケースが目立ち、時間外の年間患者数は千人を上回っていたという。 

 これが時間外診療の再開後は400人台に減少。 
同診療所や友の会は時間外診療の再開を機に、受診前に電話で看護師に相談するよう求める冊子を住民に配布しており、一木所長は「相談が増えていることからも、住民意識の変化が見える」と話す。 

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 一方、診療時間内の外来患者数は、時間外診療を休止した09年度以降の3年間で1日平均80人台。 
時間外の患者数が大幅に減ったにもかかわらず、診療時間内に訪れる患者数は増えていない。 

 これについて、一木所長は「人口減や薬の長期処方増の要因が大きいが、離れた患者が完全に戻っていないことも影響しているだろう」と指摘する。 

 同診療所は時間外診療再開を機に、週末の非常勤医として札幌の医療法人などから約10人を交代で派遣してもらえるようになり、医師3人は原則週休2日が確保できるようになった。 
ただ、これは「週末にかかりつけの医師に診てもらえない」という住民の不満につながっているようだ。 

 6歳から16歳まで4人の子供を育てる町内豊田の主婦藤原真希さん(36)は「一木先生が担当しないなら、苫小牧まで行くという母親を数人知っている」と打ち明ける。 

 医師の辞職という“荒療治”により、「医師を疲弊させず地域医療を維持する」という一木所長の理想に向けて、前進はした。 
だが同時に、町民の信頼を完全に回復する難しさも突きつけた。 

 地域医療教育研究所(札幌)の前沢政次代表理事=北大名誉教授=は「医師の労働環境と経営の両立は地域医療の共通の課題。定期的に常勤医が住民と懇談したり、週末の出張医をある程度固定したりすることで、住民が相談しやすくする環境を整えることが大切では」と提言している。