新中核病院の行方

2012.03.05

週刊茨城ニュース:新中核病院の行方 /茨城 
2012.03.03   


 ◇筑西・桜川市、信頼築き早期解決を 

 今週は、桜川市議会が「新中核病院」の事業着手に必要な補正予算案の上程を認めず、審議なしに閉会するという異例の事態を引き起こしたことを報じました。 
深刻な医師不足の中で、心筋梗塞(こうそく)や脳卒中に対処できる、正に中核となる病院です。 
それがなぜ求められているのか。前に進まないのは、どこに問題があるのでしょうか。 

 県は地域医療を進めるため県内を九つの医療圏に分けています。 

中でも筑西・下妻保健医療圏(筑西、桜川、結城、下妻市と八千代町)では、心筋梗塞などの心疾患と脳血管疾患の死亡率が県内最悪です。 

同医療圏では今、この「急性期医療」を圏内だけで担える態勢になっていません。 

 このため県が主導し、二つの公立病院を集約して「管制塔」的な機能を持つ新中核病院を含む地域医療再生計画を立てました。 

新中核病院は筑西市と隣の桜川市とが共同で建てる300床規模で構想され、建設費は概算75億円。国の地域医療再生臨時交付金の補助を見込んでいます。 

 両市は東日本大震災前から協議していましたが、建設地を巡って折り合いが付かず、棚上げになったところに震災に見舞われました。 
両市の公立病院とも被災、特に筑西市民病院は柱が損傷し、現在は新入院病棟(50床)でしのいでいます。 

 両市長は昨年4月に会談し、両市境界から5キロ以内などの条件で建てる方針を基本合意。 

県が主導し地元の真壁医師会などを交えた準備委員会の協議が始まりました。 

委員長は地元事情に精通する日本医師会の原中勝征会長です。 
昨年9月に準備委が検討結果を発表。 
建設地は筑西市竹島地区が最適とする一方で、筑西市民病院を病床なしの診療所に格下げし、桜川市にある県西総合病院は現行の299床から120床程度に縮小する案を両市長に示しました。 

 国の交付金は13年度着工が前提条件。 
着工までに、(1)基本構想と基本計画策定(2)基本・実施設計(3)工事入札と契約を行う必要があります。(1)は最短9カ月(2)は1年程度かかります。事業主体は、両市が負担金を出す「県西総合病院組合」。両市議会による予算議決が前提となります。 

 (1)は専門会社に委託発注するため、11~12年度で予算2500万円を見込み、両市が折半。 

筑西市議会は今年度分をすんなり議決した一方、桜川市議会は2回にわたり否決。 
「両市合わせて人口15万で、経営は赤字になりかねない。県が担うべきだ」「民営化の選択肢はないのか」など経営の根本に関わる議論が噴出。 
2月29日の臨時会は議長が審議入りの必要がないと判断しました。 

 こうして暗礁に乗り上げた新中核病院ですが、地域住民の声は切実です。 
真壁医師会が1月桜川で開いたシンポジウムでは、両市から約230人が参加。 
「何とかして作って命を守ってほしい」「医師が存分に腕を振るえる病院がないと医師は集まらない」「どっちに作るか作らないかで政争の具になっている」など、厳しい意見が続出しました。 
落合聖二会長は「地域医療をきちんとやらないと、医療難民になる可能性がある。お互いに信頼関係を築かなければならない」と話しています。市や議会関係者はこうした声に真摯(しんし)に耳を傾け、一刻も早い解決の道を求めるべきでしょう。【安味伸一】