現状打開・・ 決め手なく・・ 西北五病院再編

2012.01.06

 



現状打開 決め手なく/西北五病院再編/常勤医確保めど立たず/置き去りか心配する住民
2012.01.01東奥日報社 
  


 以前から全国各地で問題となっている医師不足が本県では、他の都道府県に比べてより厳しい現実として県民に立ちはだかっている。 
本紙は医師数と人口、病床数から県内の医療の実像を調査。 
さらに、香川県とほぼ同じという広大な面積にもかかわらず、医師数が極端に少ない西北五地方の現状を通じて、本県のあるべき医療を考えた。 

(本紙取材班) 

 「(新病院は)診察室が増え、救急車も入りやすく、救急の病棟も設置する。ただ、医者がいなくなってしまえばただの箱」 

 2011年11月26日、五所川原市で開かれた救急医療フォーラムにパネリストとして参加した西北中央病院の内科医・工藤健は、西北五医療圏の病院機能再編成計画で、医師確保にめどが立っていないことへの危機感を口にした。 

 これに対し計画を進めるつがる西北五広域連合の担当者は、フォーラムの計画概要説明で医師確保策に一切触れず。 

 フォーラム終了後、出席した西北五地域医療研究会の意見交換で同会メンバーの角田周は「あれ(工藤医師の発言)は何だべ。ショックだった」と漏らし「地域に医師が根付くためのウエルカムをしなければ」と力を込めた。 

だが「医師確保のために自分たちができることって何なの」と言うメンバーの1人・境谷葉子からの問い掛けに、他のメンバーから明快な解決策は出なかった。会長の対馬逸子は「大学もないし、医師にとっては魅力のない地域なのか」と、残念そうに語る。 

 西北五医療圏域の医師数は全国的にも下位に低迷する上、圏域内の自治体立5病院の不良債務額は10年度決算で25億円を超える。 

再編計画の狙いを同連合事務局次長の寺田建夫は「何もせずに今のままなら5病院は経営破綻し存続できない」と述べ、計画が赤字体質の病院経営を改善し、結果的に地域医療を救済する切り札になるとの見方を示す。 

 寺田は「医師確保を最優先課題に据えて動いている」とも話す。12年度からは同連合が5病院の経営を統括。 
各病院への医師配置も同連合が担うことになるが、目標通りの医師確保は容易でない。 
具体策を寺田に問うと「1年後、2年後にドクターの配置がこうなりますという確定的なものは一切ない」と歯切れが悪い。 

 計画を進める同連合から医師確保の情報発信が乏しいために、連合内の他市町からは先行きを懸念する声が上がっている。 

 鯵ケ沢町立中央病院では現在、歯科を除く常勤医が内科と外科合わせて3人だけ。 
非常勤医を入れても常勤換算で7・3にしかならない。再編計画で定める常勤医数は10・6。計画を満たすには常勤医をあと4人確保しなければならない。事務長の佐藤薫は「プランをつくった05年度ごろにはその通りの数の医師がいたのだが…。うちらも連合に聞きたいぐらいだ」と弱気だが「プランは生きている。 
この通りになると考えている。 
患者にもそう説明するしかない」と強調した。 

 病院を利用する町民は「再編後も医師をきちんと確保して、救急対応は今まで通り続けてもらえるのか」(乳井久弥・76歳)、「(中核病院の医師が足りず)サテライトの医師が吸い上げられるという不安はあるが、医者自体少なく、われわれ一人一人の力ではどうにもできない」(中村満隆・73歳)と行く末を案じる。 

 公立、民間の診療所合わせて三つしかなく、入院設備のある医療機関はゼロという深浦町では同病院への依存度が高く心配は尽きない。 
町立関診療所の次長・小山司は「現在でも鯵ケ沢に紹介した患者の受け入れがスムーズにいかない時もある。 
鯵ケ沢が駄目なら(車で1時間半、2時間はかかる)五所川原、弘前に行かざるを得ないが、患者や家族を考えると近場に紹介したい」。 

 一方、つがる市木造の成人病センターを利用する患者はセンターの診療所化に不満を漏らす。 
同市車力町の佐々木松五郎(78)は、高血圧のため市の患者送迎バスで月1回、センターに通う。脳卒中の後遺症で左半身が不自由な妻と一緒だ。 

 合併して市になったのに、診療所に格下げされることが割り切れないという佐々木とその家族。 
「(常勤医が)1人ではまいね。間に合わない」と不満げだ。佐々木は「車力から五所川原に行くのは遠くてただでない。免許もないし…」と、高齢者の多い地域の医療が置き去りにされてしまうとの危惧を抱く。 

 地域医療の問題に取り組む県保険医協会の会長・大竹進は「西北五は医者の足りない青森県の将来を先取りしている地区。 
これをやれば解決するという策はない。現状に関する情報を出した上で医療関係者も行政も住民も一緒に力を合わせて医療を立て直していくしかない」と言い切る。(敬称略) 

●西北五自治体病院機能再編成計画 

 西北五圏域の2市4町で構成するつがる西北五広域連合が、 
現在ある5病院を 

五所川原市の中核病院(つがる総合病院)と 
後方支援のサテライト2病院(五所川原市金木、鯵ケ沢)、 
無床のサテライト2診療所(つがる、鶴田)に再編。 

各病院に分散している医師を効率よく配置し、中核病院は高度な医療サービス提供施設として整備。 
さらに5医療機関の一体的な運営で黒字経営を目指す。 
県は同計画を持続可能な医療提供体制と位置付けている。 
全国のモデル事例にしようと、国の地域医療再生計画に申請、採択された。